Facebookは、独占的なプラットフォームの代名詞といえる存在だ。だが、パブリッシャーのなかには、Facebook以外のプラットフォームに移行し始めている。CNNはニュース重視でApple News、ハフポストはインスタグラムでのオリジナルコンテンツの制作など、各社の戦略にあわせたプラットフォーム換えが進む。
Facebookは、独占的なプラットフォームの代名詞といえる存在だ。だが、パブリッシャーのなかには、Facebook以外のプラットフォームに軸足を移しはじめている企業もある。我々が取材した複数のパブリッシャーが、Facebookに取り組む時間を減らしたり、ほかのプラットフォームに取り組む時間を増やしたりしている。
パブリッシャー全体でみれば、Facebookはいまでも、参照トラフィックの最大の流入元だ。だが、Googleと比べると、参照元としての存在感は低下している。また、動画のような重要なコンテンツでマネタイズの機会をなかなか増やせないことが、パブリッシャーを苛立たせている。
その間に、GoogleやApple Newsなどのプラットフォームは、パブリッシャーの注目を惹きつける努力をしてきた。ほかにも、Snapchatは報酬を増やしたり、インスタグラムはオーディエンスを増やしたり、ユーザー体験を向上させる取り組みをしている。
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NBCはリファラー重視
NBCニュースのデジタル部門シニア・バイスプレジデントを務めるニック・アシャイム氏によれば、同社ではおよそ15名のスタッフが、NBC News、MSNBC、Todayのソーシャルチームに在籍。ほかに、30名のスタッフが、Snapchatのニュース番組「ステイ・チューンド(Stay Tuned)」を専門に担当する。同チームは、規模こそ変わっていないものの、会社の方針に合わせて、重点的に取り組むプラットフォームの優先順位を入れ替えた。「すべてのプラットフォームで、同様にすべての記事を投稿しているわけではない。かなりの取捨選択を行っている」とアシャイム氏は語る。
もっとも大きな転換は、Facebookで公開する記事や動画を減らし、投稿した記事には、オーディエンスをサイトに呼び戻すためのリンクを載せるようにしたことだ。同社はいま、参照とシェアの指標をこれまでにないほど重視している。なぜなら、参照トラフィックはマネタイズに直接結びつくものであり、シェアはユーザーのエンゲージメントをより明確に示すものだからだ。
CNNはニュースに最適化
同じように、CNNのプラットフォーム配信チームもFacebookに割く時間を減らし、Apple Newsのアプリ(Appleのモバイルデバイスに統合されている)とSnapchatに力を注いでいると、CNNでデジタル編集部門のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるアンドリュー・モース氏は述べる。
モース氏は、「我々は、Snapchatの『ディスカバー(Discover)』から(Snapchatの)ニュース番組にリソースを移行した。Apple Newsは以前から我々にとって重要な存在だ。一方、Facebookについては、このプラットフォーム専用のオリジナルコンテンツの制作に費やす時間を全体的に減らした。Facebookは、ニュース番組には関心がないようだからだ」と述べた(Facebookは、メディア企業に対し、新たに導入した「Watch(ウォッチ)」タブ向けのテレビ番組の制作を依頼している。このタブで最初に配信された番組では、ニュースではなくライフスタイル関連のコンテンツが多かった)。
ハフポストはオーディエンス
調査会社のニュースウィップ(NewsWhip)によると、ハフポスト(HuffPost)は、2016年にFacebookで獲得した いいね!、コメント、シェアの総数がもっとも多いパブリッシャーだった。だが、同社のグローバルソーシャルメディアエディターのイーサン・クラッパー氏によれば、2017年には、Facebookだけでなく、大きな成長の余地があるとみられるTwitterやインスタグラムでの取り組みを拡大している。注力するプラットフォームの変更に伴い、ソーシャルチームの配置転換も実施。プラットフォームではなく、取り上げるテーマやオーディエンスを重視するチーム編成にした。
クラッパー氏は、「この転換は、オーディエンスの利用習慣の変化に対応するためであると同時に、我々の成長機会となる新しいオーディエンスにリーチするためだ」と述べる。「プラットフォーム中心の戦略では、古い考え方に固執したままで、オーディンエンスが本当に望んでいるものを届けることはできない」。
コンデナストはビジネスモデル優先
パブリッシャーのあいだで見られるもうひとつの大きな変化は、Snapchatやインスタグラムといったプラットフォーム向けに、オリジナルコンテンツを作る動きが拡大していることだ。スタッフの配置にも、その動向を見ることができる。たとえば、コンデナスト(Condé Nast)は現在、Snapchatの「ディスカバー」で4つのチャンネルを担当するスタッフを15名置いている。
デジタル担当ゼネラルマネージャーのマット・スターカー氏は、「2年前は、コンテンツを選んで複数のプラットフォームに配信するだけだった」と述べる。「(だがいまは)これらのプラットフォーム向けにオリジナルのコンテンツを制作している。この手のプラットフォームの多くが、規模を拡大し、しっかりしたビジネスモデルを構築できるようになったことで、優先度が高まっている」。
Voxは新規拡大を狙う
Vox Mediaも、Facebook傘下のインスタグラムへの取り組みを拡大している。インスタグラム専任のソーシャルエンゲージメントチームに5名のスタッフを配置。Facebook担当スタッフは1名のままで、投稿数や編集記事を増やしているが、よりビジュアルやモバイル向けの編集記事を専門に手がけるスタッフを2名配置し、もっぱらインスタグラムとApple Newsを担当させている。
Vox Mediaでエンゲージメント担当エディターを務めるブレア・ヒックマン氏によれば、インスタグラムでは、パブリッシャーがコンテンツの表示方法を非常に柔軟に設定できる。また、Apple Newsでは、新しいオーディエンスにリーチするチャンスが得られるという。これに対しFacebookでは、「お金を払わない限り、同じオーディエンスにしかリーチできないだろう」とヒックマン氏は述べている。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)