FacebookとYouTubeはこの1年ほど、ブランドセーフティの問題や指標に関する否定的な報道に悩まされてきた。グループ・エム(GroupM)は、そんな2大巨頭に不満を持ち、行動を求めている。そんななか同社では、6秒広告について第3の選択肢を作ろうという取り組みが進行しているという。
世界最大の広告バイヤーであるグループ・エム(GroupM)が、Facebookに不満を持ち、行動を求めている。
グループ・エムでデジタルトレーディングのマネージングディレクターを務めるロビン・オニール氏は、「我々が行っている投資を正当化できるように、Facebookには説明の責任をいっそう求めている」と語った。「我々が個別に指標を検証して、現実世界で仕事をできるように、ずっと迫っている。Facebookは現実世界の指標を使っていない。Facebookに説明責任を求め、出してくるデータをきちんと調べることをすべてのエージェンシーにお願いしたい」という。
FacebookとYouTubeはこの1年ほど、ブランドセーフティの問題や指標に透明性が欠けていることに関する否定的な報道に悩まされている。両社ともに改善策の提供は試みてきた。Facebookはつい先日、新たにブランドセーフティの測定を導入した(広告主にはそこまで評判がよくなかった)。Googleは7月に「Google Measurement Partners(メジャーメント・パートナーズ)」を立ち上げた。これは、コムスコア(comScore)、ダブルベリファイ(DoubleVerify)、インテグラル・アド・サイエンス(IAS)、モート(Moat)、ニールセン(Nielsen)、カンター(Kantar)といったサードパーティを通じて広告主が広告の配信を検証できるようにするものだ。
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Facebookは今回の記事についてコメントをしたがらなかった。広報担当者は、Facebookがキャンペーンの検証のためにサードパーティの測定企業40社と協力していることと、動画広告を購入したい広告主には3秒のほかに10秒のオプションを提供していることを強調した。
2大巨頭以外の選択肢
もっとも、このように厳しい発言はしているものの、グループ・エムはクライアントの代わりに、Facebookに資金を注ぎ込み続けている。「囲い込み」やデータの欠如を騒ぐマーケターやエージェンシーは多いが、少なくともFacebookとGoogleの財務状況が急上昇していることから判断すると、こうした問題の影響から支出を控えているところはほとんどないのだ。
ただ、グループ・エムでは、6秒広告についてFacebookやYouTubeではない選択肢を作ろうという取り組みが進行している。グループ・エムのプログラマティック部門であるザクシス(Xaxis)が、スナップ(Snap)、Spotify(スポティファイ)、Twitter、およびラジオ放送のグローバル(Global)に共通して使えるショートフォーム動画広告フォーマットを開発したのだ。グループ・エムによると、パートナーは増える見込みで、スカイ(Sky)が参加する可能性があるという。
テレビの広告主向けに、とりわけモバイルにショートフォームの選択肢をもっと増やす必要があるというのが戦略的な動機のひとつ。しかし、グループ・エムにはもうひとつ大きな動機がある。FacebookとYouTubeに代わる、ブランドセーフティが確保され、指標の透明性も十分だと保証できるような選択肢をクライアントに提供するというものだ。
視聴完了は10倍の成果
スナップ、Twitter、Spotify、グローバルはいずれも、この6秒動画広告フォーマットが自社のプラットフォームで使えることと、統一の購入によってどのプラットフォームでもキャンペーンを実施できることを保証している。ザクシスとグループ・エムのクライアントがこのクロスプラットフォームのサービスを使いたい場合、料金はインプレッション単価(CPM)ではなく完全視聴完了あたりのコスト(CPCV)に基づくものになる。クライアントに現在売り込まれているリーチは、あわせて2700万人。パートナーを拡大し、この数字をさらに増やすことを目指している。
「ブランドはユーザー生成コンテンツ(UGC)の環境に、いまとは別の選択肢を欲しがっており、ブランドセーフティや質の高いインベントリー(在庫)を求めている」と語ったのは、Spotifyで欧州向け広告販売担当VPを務めるマルコ・ベルトッツィ氏。「ショートフォーム動画は全体のキャンペーン戦略とあわせて活用するべきもので、ブラントの認知、想起、リーチといったファネルの最上部のコンバージョンを推進するのにとても適している」。
ザクシスはこの数カ月、4つすべてのプラットフォームについて、通信大手ファーウェイ(Huawei)などの優良クライアントとのテストを続けている。その初期の結果からは、平均すると動画広告の70%が最後まで視聴されていることがわかっており、ザクシスによると、この数字はFacebookが提供している対応する数字の10倍だという。ザクシスはまた、グループ・エムのデータと分析ツール[m]PLATFORMを使って、クッキーではなくコードIDによる匿名ベースのユーザー認識にも取り組んでいる。
グループ・エムの思惑
グループ・エムにとって重要なのは、FacebookとYouTubeに取って代わる、透明性とブランドセーフティが十分な、測定可能なショートフォーム動画広告を作ってクライアントに提供することだった。
「FacebookもYouTubeも、クライアントの広告配信をいまだに我々が検証できない」と、オニール氏。「消費データの我々への受け渡しは向こうがコントロールしている。また、広告が届いている環境の質についても、特にFacebookについては大きな問題を抱えている。Facebookは視聴完了の割合も恐ろしく低い」。
成功の判断に使う指標を、Facebookのようなプラットフォームに押しつけられるのではなく、自社で管理できるようにすること、そして、キャンペーン結果の可視性を高めることを、グループ・エムは構想している。
このパートナーシップは現在、英国限定だが、全世界に展開することが計画されている。
ザクシス英国でプロダクトとテクノロジーのディレクターを務めるエド・ファニング氏は、「モバイル動画が拡大しており、エンターテインメントブランドとの連携を広告主は求めている」と語った。「機会と透明性とブランドセーフティを促進できる(2大巨頭ではない)第3の選択肢を我々は作りたかった」という。
今後の展望と課題
ショートフォーム動画広告は、ゆっくりとだが需要が高まっている。AIを駆使するガムガム(GumGum)の最近の研究では、2年後にはマーケターの77%が6秒広告フォーマットを使っていると予測されている。FacebookとYouTubeはこの数年、6秒動画広告を提供。スナップも米国ではすでにこの形式をテストしている(英国では今回がはじめてだとスナップの英国の広報担当者が認めた)。ほかに、FOX、AMC、NBCユニバーサル(NBCUniversal)といったメディアや、ノルウェーの出版大手のシブステッド(Schibsted)もこのフォーマットをテストしている。
とはいえ、6秒動画広告がメインストリートになるにはまだやるべきことがある。テレビの動画広告からそのまま切り出すわけにはいかず、新しい語り、構造、制作が必要だ。
グループ・エムもそうした課題はわかっている。「何がもっとも重要指標なのか啓発する仕事が必要になるだろうし、規格化も試みることになるだろう」と、オニール氏。「何をもって成功とするのかを練り直すことが大きな課題になるだろう」。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)