パブリッシングプラットフォームのサブスタック(Substack)が先頃、デイン・ラスボーン氏とクライド・ラスボーン氏が共同創業したパブリックコレスポンデンス(公開書簡)のスタートアップであるレター(Letter)を獲得したとの情報を米DIGIDAYは掴んだ。
パブリッシングプラットフォームのサブスタック(Substack)が先頃、デイン・ラスボーン氏とクライド・ラスボーン氏が共同創業したパブリックコレスポンデンス(公開書簡)のスタートアップであるレター(Letter)を獲得したとの情報を米DIGIDAYは掴んだ。サブスタックとレターはいずれも、買収額を明らかにしていない。レターはエンジェル投資の対象になっておらず、ベンチャーキャピタルからの資金調達はしていない。
この買収の背景には、サブスタックの最大かつ最新の競合他社らがニュースレターをクリエイターとオーディエンスを繋ぐ重要なハブとして重視しはじめた、という状況がある。
サブスタックはこれに対抗するべく、先頃もベンチャーキャピタルから資金を調達し、ライターを支援するさまざまな機能/サービスを充実させている。同社は自営業者だけでなく、思想家や著者も積極的に支援しており、そうしたライター同士を繋ぎ、ライター勢と彼らの読者によるコミュニティのさらなる発展の促進を目指している。
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レターはいわば公開書簡の交換場であり、そのやり取りをオーディエンスは覗き見できる。レターは大ヒットにこそ至らなかったものの――もっとも人気の高いやり取りでも、閲覧数は数万程度――ノーム・チョムスキー氏やユヴァル・ノア・ハラリ氏、アヤーン・ヒルシ・アリ氏といった高名な知識人らが同サービスを試している。
レターを買収した最大の理由
サブスタックのライター勢が繋がりを拡充し、共同作業になおいっそう勤しめるようにするためのテクノロジーの確保――それがレター買収の最大の理由だと、共同創業者ハミッシュ・マッケンジー氏は語る。
「多くのライター同士が協力し合い、ネットワークを構築する未来の力を我々は堅く信じている」と、マッケンジー氏は言う。
もっとも、サブスタックのライターが互いに、あるいは読者と、もしくはその両方と協力し合うために、レターを利用するか否かについては、現時点では定かでない。レターのサブスタックプラットフォームへの具体的な統合方法には、マッケンジー氏は触れなかった。ただ、氏によれば、サブスタックの人気ライターの一部はすでに読者との対話に自身のニュースレターを利用しているという。たとえばそのひとり、ゼイネップ・トゥフェクシー氏は自身への反対意見を募り、なかでも特に説得力のあるものを、ニュースレター「ザ・カウンター(The Counter:『反論』の意)」のなかで毎回紹介している。紹介した人々に、氏は謝礼も支払っている。
いずれにせよ、レターがサブスタックのライター勢に対し、手軽に、かつ正々堂々と討論できる場を提供することになるのは、間違いない。「[オンライン上には]現在、長い会話が圧倒的に不足しており、そこを突けるというのが[レター]最大の売り文句だ」と、レターの共同創業者クライド・ラスボーン氏は語る。「いま現在、真の対話はないに等しい」。
ライター勢をサポートするために
今回のレター獲得は、サブスタックがライター勢をサポートするべく、このところ積極的に続けている動き/投資のひとつでもある。法的保護基金のサブスタック・ディフェンダー(Substack Defender)や、オンライン受講コースのサブスタック・グロウ(Substack Grow)、社内で立ち上げたSlackチャンネルに加えて、同社は5月にもオーディエンス/コミュニティマネジメントコンサルティング企業のピープル&カンパニー(People & Company)も買収しており、その目的もはやり、ライター勢がオーディエンスとコミュニティを作るための支援にある。
「ライターが何もかも自分ひとりで解決しなくても済むようにする、それが基本的概念だ」とマッケンジー氏。「目的も使い勝手もばらばらなツールをいくつか提供するだけでは足りない、というのが我々の姿勢であり、これは以前から一貫している。ライターたちを総合的にサポートするためにインフラストラクチャーの構築に励んでいる」。
その過程は、マッケンジー氏いわく、まだ初期段階だという。「すべてはまだ始まったばかりだ」。
「ライター獲得の最良手段は紹介」
また、こうした投資はサブスタックが才能あるライターを惹き付けるための良い宣伝材料にもなっている。同社は先頃、自社プラットフォームで執筆を始めるライター(さらに、最近ではポッドキャスター)に6桁の前払い金を支払い、賛否両論、大きな話題を集めた。
同社が投資を続けるサービスと機能は確かに、一流の才能をある程度保持する役には立つだろう。ただ、さらなる発展には、より多くの既存ライター勢に友人を招待してもらうことが不可欠であり、同社はそこに期待している。「我々の場合、ライター獲得の最良の手段は紹介だ」とマッケンジー氏は語る。
[原文:Exclusive: Substack continues its acquisition streak with public correspondence startup Letter]
MAX WILLENS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU