Googleはいま、必死にロビー活動を行っている。プラットフォーム上でホストするYouTubeや、Googleニュースのようなリンクを貼っているコンテンツに対して、パブリッシャーやほかの権利保有者がGoogleに支払いを迫る可能性のある著作権法改正を欧州連合(EU)が行わないようにするためだ。
プラットフォーム上でホストするYouTubeや、Googleニュースのようなリンクを貼っているコンテンツに対して、パブリッシャーやほかの権利保有者がGoogleに支払いを迫る可能性のある著作権法改正を欧州連合(EU)が行わないようにするためだ。著作権法改正がインターネットを中心にした情報の自由な移動を妨げる可能性があり、そしてGoogleのビジネスモデルを妨害するという理由で、Googleは繰り返し、それに反対している。
いまやGoogleは、GoogleニュースをEUから撤退させることも辞さないとまで、脅しをかけはじめた。もしそうなった場合、消費者と小規模パブリッシャーの両者にとって、最悪のシナリオとなるだろう。そこまでして、EUに譲歩を迫ろうとする、このテック大手企業がとるスタンスが、デュオポリーを統制しようと躍起になっているEU規制当局たちにとって、大きな試練となっている。
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「Googleとパブリッシャーたちにとって多くの課題が残されていることは確かだ」と、オズボーン・クラーク国際法律事務所のパートナー、ロバート・ガスリー氏はいう。「最終的な指令が権利所有者に有利となる場合、Googleからより高いライセンス料を得るための交渉材料をより大きなパブリッシャーたちに与えることになる。小さなパブリッシャーたちは、Googleが単純に彼らのコンテンツへのリンクを取りやめることを心配している」。
困難を極める交渉
改正が収益にどのように影響するかについて、Googleが見通している可能性は低い。先月、同社はこの改正が可決された場合、大した人気のないGoogleニュースがどうなるかというテストを実施したが、対立するロビイストたちからはそんなものはハッタリだと指摘されている。同社は、これらのテストの結果、ニュースパブリッシャーに対するトラフィックが45%減少すると述べている。欧州からGoogleニュースを撤退させるというGoogleの示唆を、一部のアナリストたちは無意味な脅しと見ている。GoogleはGoogleニュースから収益を上げていないが、このサービスにより人々がGoogleの検索エンジンに戻ってくるようになり、クエリに対して収入を得ることができるのだ。
「理論的には、法律にいかなる改正があっても、ライセンス契約の交渉はGoogleとパブリッシャーの両者の利益のためであるべきであり、サービスを停止すべきではない」と、ガスリー氏はつけ加えた。問題は、実際面で、こうした交渉は困難であり、Googleは短期的にコンテンツを取り下げることを強いられる可能性がある。
「中小のパブリッシャーにとって、その結末は切迫したものとなり、彼らの存在が脅かされる可能性がある」と、アグリゲーターでありパブリッシャーでもあるニュースナウ(NewsNow)のCOO、グレッグ・ウィタム氏は述べている。小さなパブリッシャーは、トラフィックと収益を検索エンジンとアグリゲーターにかなり依存していることから、ニュースナウはこの改正に反対するロビー活動を行っている。
他の見解を紹介しよう。
「袋小路にはまる」
「非常に大きなパブリッシャーたちが行った見積もりによると、Googleニュース撤退により、非オーガニックリーチの15%から45%が危機に晒されるとみている。一般的には、ニュースメディアが苦しみ、特定の分野に対象を絞ったメディアが勝つだろう」と、パブリッシャー向けデジタル戦略コンサルタントのフォン・ヴェルシュ・パートナーズ(Von Wersch Partners)のCEO兼創設者、オリバー・フォン・ヴェルシュ氏はいう。また、フォン・ヴェルシュ氏はより高速にモバイルページをローディングできるプロダクト、Google AMPがライセンス問題を回避するために閉じられるだろうと示唆している。
エンダーズ・アナリシス(Enders Analysis)の欧州メディアアナリスト、フランソワ・ゴダール氏は、ビジネスモデルが多様化しないという現象が、メディアが被る災難となるだろう、と指摘している。
「Googleとデジタル広告に頼ると、袋小路にはまる。これで気がつくはずだ。デジタル広告モデルではジャーナリズムは資金調達できない。これは、根底にある既存のトレンドを加速させているにすぎない」と、彼はいう。
大手媒体社らは賛同
健全なダイレクトトラフィックを持ち、Googleというアメリカのテック大手企業に対して不快感を少なからず持っている大手パブリッシャーたちは、この改正を強く支持している。
「情報をコントロールし、続いて利益を享受するという栄光の日々に立ち返ることができると考える大手パブリッシャーたちは、盲目的にそれを支持している」と、匿名を条件にあるパブリッシャーは語った。消費者がコンテンツを消費するために、代わりの、そしてより優れた方法を見つけるにつれて、実際には逆の効果が生じ、失速が進む可能性がある。GoogleニュースやApple Newsをブロックすることで、報道記事やパブリッシャーのアプリにある元の情報源にユーザーが群がるようになるとは思えない」。
むしろ、これは規制を通じてGoogleなどのプラットフォームの支配力を失墜させるという、ヨーロッパの過激な願望を示すものだと、このパブリッシャーは述べた。
「規制が行き過ぎると、市場の成長が阻害される可能性があることの一例になることを心配する」と、このパブリッシャーはつけ加えた。
行き過ぎた特権
ゆっくりと動く官僚主義が急速に革新する技術をいかに害するかについての不安はいくらか揺らいでいる。改正の現在のバージョンは、オープンウェブのテクニカルルーティンに関する部分が稚拙で説明がない一方で、コンテンツマッチング技術のような必要なインフラストラクチャへの将来的な投資を考慮していないことから、パブリッシャーやロビイストから非難を浴びている。
最終的に、規制への道のりにおいて、大手パブリッシャーたちはアメリカのテックプラットフォームほどの力を発揮することがない。そしてGoogleは、何千人ものエンジニアと十分な資本で、規制をクリアできるサービスを見つけることに成功するだろう。
「アメリカのテックプラットフォームは、19世紀以来、著作権の中心にある原則を否定する、行き過ぎた特権を持っている」と、ゴダール氏語る。「Googleはこれからうまく適応していくだろう」。