インスタント記事から手を引いたESPN。そのため、同社のFacebookページでは現在、静的リンクしか投稿されていない。ところが、同社の投稿では最近、再生ボタンが表示されているものが見受けられる。これをクリックすると動画再生されるのではなく、通常リンクと同様にESPNのサイトへ遷移するのだ。
パブリッシャーは、Facebookを介した収益化について、さまざまな試みを行っている。
アメリカのスポーツ専門チャンネルESPNは、自社サイトにおけるマネタイズを最大化するために、Facebookのインスタント記事から手を引いた。そのため、同社のFacebookページでは現在、静的リンクしか投稿されていない。
ところが、静的リンクであるにも関わらず、同社の投稿では最近、再生ボタンが表示されているものが見受けられる。このリンクをクリックすると、Facebook上で動画再生されるのではなく、通常リンクと同様にESPNのサイトへ遷移するのだ。こうした疑似再生ボタンが配された投稿は、11月6日から8日までに、21ほど見受けられる。
Advertisement
問題の投稿は、以下のようなものだが、すべて統一されているのは、見出しの文頭が「WATCH(見て)」となっている点。そのような21本の投稿なかで16本(76%)に、そのサムネイルに再生ボタンがを表示されている。それをクリックしてもFacebook上で動画は再生されず、より簡単にマネタイズできる自社ウェブサイトに遷移されるのだ。
「ユーザーへの欺き行為」という意見
「サムネイル画像に再生ボタンを表示することを控えるようにと私は助言したい」と、バイラルコンテンツサイト、リトルシングス(LittleThings)の編集主任、マイア・マッカーン氏は語る。「Facebookのベストプラクティスに反していることは明らかだ。何らかの罰則を受ける危険を冒しており、間違いなくユーザーに対する欺き行為である」。
過去数年のあいだ、バイラルコンテンツの制作に専念していたパブリッシャーのなかには、サムネイルに機能しない再生ボタンを利用するものもいた。しかし、Facebookが誤解を招くようなコンテンツを厳しく取り締まるため、そのアルゴリズムを変更したあと、ほとんどのパブリッシャーは静的リンク上で再生ボタンの表示を止めたと、マッカーン氏は語る。ESPNとFacebookは、コメントを拒否した。
「パブリッシャーは、オーディエンスを騙してクリックさせることを試みるのではなく、Facebookのルールに従うことが得策だ。それは良いユーザーエクスペリエンスをもたらさない。誰かが話しはじめるのを期待していたのに、まったく予期していなかったあらゆる種類のコンテンツが詰め込まれた、別のページにリダイレクトされるのには、イライラさせられる」と彼女はいう。
「ユーザー体験を損なう」という見方も
BuzzFeedのソーシャルメディア担当ディレクター、メイシー・ソーントン氏は、「人が何かをクリックするとき、彼らは期待通りのことを得たいと思っている」と語る。BuzzFeedがFacebookの静的リンク上に再生ボタンを置いたことは、これまで一度もないと彼女はいう。「ユーザーには、可能な限り最高の体験を提供したいと考えている。だから我々は、ネイティブ動画のアップロードだけに重点を置いている」。
ESPNのやり方が混乱を招くのは、疑似再生ボタンを配した投稿と合わせて、以下のような実際の動画もいくつか投稿しているところにある。ただし、このようなネイティブ動画は、疑似再生ボタンを配した投稿に比べて目にする機会は少ない。ESPNは11月2日以来、Facebookには6本しか、直接動画を投稿していないようだ。
「コンテンツがFacebookに存在するのか、それともFacebookの外部にあるのかについては、常に疑問が残る」とデジタルコンテンツネクスト(Digital Content Next)のCEO、ジェーソン・キント氏は語る。キント氏は、Facebookでかなり広範囲に及んでいる偽記事という、さらに大きな問題について言及し、次のようにつけ加えた。「同プラットフォームで、何が得られるのかについては、かなりのレベルで不信感と認識の欠如が残されている」。