オンラインかオフラインかを問わず、動画コンテンツは無数に存在する。しかし、その流通・配信方法はまだ発展途上だ。特にプロ動画コンテンツにおいては、動画配信プラットフォームとして最大のYouTubeといえど、玉石混交の状態で、良質な「動画が埋もれてしまっている」のが現状だ。
YouTubeのプロダクトマーケティングマネージャー、の中村全信氏は、先日開催されたBackStage(バックステージ)に登壇した際、YouTube内でいかに動画を検索してもらうかが今後のチャレンジだと話した。とはいえ、「視聴してもらえる場所」に動画を提供したいコンテンツプロバイダーのニーズは高まり続けている。一方で、効率的に動画コンテンツの流通・配信ネットワークを確保するには、複数のベンダーをあいだに挟まなければならないなど、プロ動画の配信には超えるべき壁がいくつか存在していた。
そこで、AOL、Amazon、AbemaTV、Adobeなど、大手メディア企業は、一気通貫型の動画配信事業を手掛けるサービスを次々に開始している。
オンラインかオフラインかを問わず、動画コンテンツは無数に存在する。しかし、その流通・配信方法はまだ発展途上だ。特にプロ動画コンテンツにおいては、動画配信プラットフォームとして最大のYouTubeといえど、玉石混交の状態で、良質な「動画が埋もれてしまっている」のが現状といえる。
YouTubeのプロダクトマーケティングマネージャーの中村全信氏は、先日開催されたBackStage(バックステージ)に登壇した際、YouTube内でいかに動画を検索してもらうかが今後のチャレンジだと話した(関連記事)。とはいえ、「視聴してもらえる場所」に動画を提供したいコンテンツプロバイダーのニーズは高まり続けている。一方で、効率的に動画コンテンツの流通・配信ネットワークを確保するには、複数のベンダーをあいだに挟まなければならないなど、プロ動画の配信には超えるべき壁がいくつか存在していた。
そこで、大手メディア企業は、一気通貫型の動画配信事業を手掛けるサービスを次々に開始。動画事業を展開するVidible(ビディブル)は、2015年にAOLの傘下となり、現在はAOL PlatformsでOne by AOLとして、パブリッシャーにフォーカスした動画配信プラットフォームを提供している。
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同社のプロダクトマーケティング部パブリッシャーマーケティンググループ、グループマネジャーの益田敦司氏は、「Vidibleの役割は、動画コンテンツの流通を促進して、まずはマーケット自体を拡大させること。そして、そこに広告ビジネスを成り立たせることだ」だと話す。

動画取り引きネットワークは発展段階
Vidibleは全世界で長期的な動画市場の開拓を目指している。パブリッシャーとコンテンツプロバイダーとのあいだで行われる動画の取り引きから管理、配信機能、マルチデバイス対応、レポーティング、広告施策と、すべてのプロセスを含んだパッケージを提供している数少ないサービスを行っており、日本での提供を準備中だ。動画の取り引きプロセスをワンパッケージで提供する同サービスの強みは、すべてのプロセスをダッシュボードでカスタマイズできる点だ。
加えて、子細なレポートを通して、パブリッシャーは動画のバイイングの検討ができ、コンテンツプロバイダーは、コンテンツの内容改善に活用できる。コンテンツの提供者にとっては、AOL自身がもつパブリッシャーのラインナップも信頼できる要素のひとつだ。数あるVidibleの米国クライアントの一部として、「Buzzfeed」や「EW Scripps(EWスクリプス)」がパブリッシャー側とコンテンツプロバイダー側の両方のクライアントであり、「newsy(ニュージー)」はコンテンツプロバイダー側のクライアントである。
また、マシーンラーニングにも力を入れているVidibleは、動画のなにが視聴者の興味をもっとも惹き寄せたのかを分析したり、動画のサムネイル選択に顔認識の技術を活用し、クリエイティブのABテストも実施している。
AOLのシニア・バイス・プレジデント、マイケル・ハイマン氏は、「日本はとても期待できる市場だ。技術的なインフラは整っているし、あらゆる部分でほかの市場と比べて進んでいるからだ。だが、ビデオテクノロジーに関してはまだそうとはいえない。今後、テレビ業界とエージェンシーは、もっとデジタル業界に歩み寄っていくはずだ」と語る。
TV業界にもたらされる恩恵
動画配信プラットフォームにとって、テレビ事業者はコンテンツ提供者として今後多いに期待できるパートナーとなる。ミレニアル世代のテレビ離れが加速するいま、テレビで番組を放送しても視聴率が期待できない。ならば、テレビ以外の視聴環境を提供できれば、視聴されるチャンスは広がる。また、加入登録料のコスト競争でNetflix(ネットフリックス)やHulu(フールー)に負けているケーブルテレビも、コンテンツをオンライン配信できれば視聴者獲得の道が拓けるだろう。
Vidibleも多数の優良コンテンツを一箇所に集約し、提供する場所を作り出す機会を狙っている。それに先んじて、近い事業者としてすでにサービス化しているのが、今年のはじめにローンチしたAbemaTVとAdobeのPrimetime(プライムタイム)、そしてAmazonのDirect Video(ダイレクトビデオ)だ。
サイバーエージェントとTV朝日が協業しているAbemaTVは、完全編成型のオンラインテレビサービスで2016年の4月にローンチした。TV朝日のコンテンツ製作のノウハウが注ぎ込まれたオリジナルコンテンツのほかに、ライセンスを取得して海外コンテンツやケーブルTVのコンテンツをすべて無料で配信している。同じく2016年4月、Adobeはテレビ事業社を対象とした動画配信サービス、プライムタイムをローンチ。Youtubeやクラウドの動画配信サービスBrightCove(ブライトコーブ)とは異なる「ハイエンド」感で差別化している。
プロ動画の配信先は今後もっと広がる
2016年5月にはAmazonがパブリッシャー向けに、コンテンツを配信して収益化するためのサービス、ダイレクトビデオ(Direct Video)を開始。数千万人とされているプライムビデオ会員が大きな強みで、ニッチメディアが積極的に活用しているという。目標はもっともコンテンツの質を担保できる、テレビコンテンツを配信することだ。大手パブリッシャー(コンテンツプロバイダー)のコンテンツをダイレクトビデオで配信するために、そのようなパブリッシャーに対しては好条件の売上配分を提示しているという。
パブリッシャーは自社サイトに訪れるオーディエンスを増やしたいと思っている。また、コンテンツプロバイダーは自らのコンテンツがより多く視聴される環境を求めている。各動画配信プラットフォームは、こうした取り組みを通して、動画市場でほとんどのシェアを占めるYouTubeとの差別化を図り、パブリッシャーにとってもより良い配信環境を安定的に提供できるようになるかは、今後数年のうちに分かることだろう。
Photo from ThinkStock/ Getty Images
Written by 中島未知代