インスタグラムやTikTokのようなアプリが事実上のショッピングアプリへとその役割を変えたことで、D2Cブランドからのインフルエンサーマーケティングへの注目はこれまで以上に高まっている。ただし、従来のようにメジャーなインフルエンサーに任せるのではなく、マイクロインフルエンサーとの関係強化がトレンドだ。
インフルエンサーは、多くの人から意見を求められるトレンドの仕掛け人へと変わり、新しいスキンケアや飲み物のブランドが本当にお金を使う価値のあるものなのかを教える存在になった。さらに、インスタグラムやTikTokのようなアプリは事実上のショッピングアプリへとその役割を変えている。各ブランドがインフルエンサーとより緊密な取り組みをおこなえるように、さらなるツールを展開しているのも、今やこうしたアプリだ。
たとえばインスタグラムは6月第2週、新たなアフィリエイトツールの試験実施中であることを発表した。このツールを利用すると、インフルエンサーは自分が勧める製品のうち、インスタグラムのチェックアウトサービスを利用しているものから、手数料を稼げるようになる。なお、手数料はブランド側が設定する。
この動きは、インスタグラムのショッピングでインフルエンサーがより大きな役割を果たせるように考えられた。TikTokをはじめとするほかのアプリも、クリエイターと取り組むブランドが増えるように後押ししている。すでにマーケットプレイスをローンチし、有料広告のキャンペーンでコラボできるクリエイターが見つかりやすくなっている。
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D2Cブランド戦略の定番に
今回のインスタグラムの新機能は、D2Cスタートアップ各社がインフルエンサーを活用したキャンペーンを強化しつつあるなかで発表された。実際この数年、D2Cブランドのマーケティング責任者は口々に、マイクロインフルエンサー(フォロワー数は5桁程度だ)との取り組みを加速させてきたと話している。
つまり、D2Cブランドは、膨大なフォロワー数を誇るインフルエンサーひとりに数千ドルを投資してひとつのブランドのローンチを宣伝するよりも、フォロワーの数が少ないインフルエンサーと頻繁に取り組むアプローチを強化している。インスタグラムが6月第2週に発表したような新しいツールが導入されるようになれば、インフルエンサーマーケティングが今後のD2Cブランド戦略の定番になる可能性はさらに高まる。
D2Cブランドの投資家であり戦略家でもあるニク・シャルマ氏は、「むしろ、(こうしたツールがあれば)一般人でも、ブランドのパートナーになりたいとか、自分のアカウントを利用してブランドを宣伝したいとか、気楽に言えるようになる」と話す。
インフルエンサーマーケティングはここ数年、すでにD2Cブランドのあいだで人気が高まり始めている。これは単純に、パートナーとなるべきインフルエンサーが増えているからだ。アイウェアブランドのワービー・パーカー(Warby Parker)は2010年に創業したが、当時はまだインスタグラムがサービスを始めてから1年も経過しておらず、一般人が大勢のフォロワーを集められるほどプラットフォームの数は多くなかった。TikTokをはじめとする新しいアプリが急増したことで、チャーリー・ダミリオやアディソン・レイのような(ここ2〜3年以内に登場した)新参者でも、1年で何百万人ものフォロワーを獲得することができる。
注目すべきはマイクロインフルエンサー
しかし、多くのD2Cブランドはインスタグラムの大物よりも、マイクロインフルエンサーと組むことを選択している。スイムウェアブランドのアンディ(Andie)でインフルエンサーとアフィリエイトのマーケティングを担当するマネージャー、ケルシー・パッチ氏によると、同ブランドではフォロワー数が1万人から5万人のインフルエンサーを「マイクロインフルエンサー」と呼ぶ。アンディが仕事をするのはほとんどがインスタグラムのインフルエンサーだが、最近はTikTokでも広告を試しており、インスタグラムで人気の高いインフルエンサーを使った広告を流している。
米DIGIDAYが以前レポートしたように、バイト(Bite)やジェネクサ(Genexa)のようなD2Cスタートアップでも、プロジェクトの相手にマイクロインフルエンサーを選ぶ傾向が見られる。その理由は主に、フォロワーを何十万人も持つインフルエンサーよりも報酬のレートが低いことにある。
その結果、D2Cブランドのインフルエンサーマーケティングに対する考え方には変化が生じている。パッチ氏によると、彼女が1年半前アンディで働き始めたころは、「従来のインフルエンサーマーケティングをしっかり踏襲していた」ため、キャンペーンの実行可能性を考慮して、パートナーとなるインフルエンサーにはメジャーな人物を何人か探していたという。
現在アンディは、当時よりもフォロワー数の少ないインフルエンサーと手を組んでいるが(パッチ氏いわく、月に100人のインフルエンサーと仕事をすることもある)、彼らとは「昼も夜も」仕事をしている。というのも、インフルエンサーのストーリーや動画をアンディが自社のSNSアカウントにたえず再投稿して、有料広告として活用するからだ。
「アンディにはほとんどいつでも、投稿してくれるマイクロインフルエンサーがそのくらいはいる」とパッチ氏は話す。
ブランドを潜在顧客に知ってもらう
インスタグラムの新しいアフィリエイトツールのようなサービスが軌道に乗れば、今後はこうしたアプローチがもっと一般的になるだろう。Facebookのある広報担当者は、同社の計画では最終的に、Facebookを利用する誰もが一定のガイドラインを満たしさえすれば、アフィリエイトツールを使えるようになると話している。
「現在の状況を見ると、インフルエンサーはブランドのローンチ戦略における『Day1』を担っていると言えるのではないか」と前述のシャルマ氏と話す。「重要なのは、売上拡大というよりも、直ちにブランド認知度を構築できるかどうかであり、(自社ブランドについて)潜在顧客に知ってもらうことだ」。
[原文:DTC Briefing: Instagram is trying to make influencer marketing more prominent]
Anna Hensel(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)