DSPのザ・トレード・デスク(The Trade Desk)は11月15日、認可されていないベンダーによるインプレッション販売をブロックするのにads.txtを使いはじめた。ads.txtによるインベントリーのフィルタリングを実施する大手DSPがまたひとつ加わることで、追随するベンダーは増えると予想される。
ads.txtの採用を迫られているのはパブリッシャーだけではない。
デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)のザ・トレード・デスク(The Trade Desk)は11月15日、認可されていないベンダーがインプレッションを販売することをブロックするのにads.txtを使いはじめた。これはGoogleのDSPも最近採用した機能だ。ads.txtによるインベントリー(在庫)のフィルタリングを実施する大手DSPがまたひとつ加わることで、追随するベンダーは増えるだろうと、メディアバイイング大手のグループ・エム(GroupM)でデジタル広告業務のマネージングパートナーを務めるジョー・バローネ氏は予想する。
ブランドが過激なコンテンツに並んで表示されることに一層神経質になってきたため、ads.txtをいち早く採用するベンダーが最大の恩恵を受けることになる。さらに、トレードデスクの発表は競合DSPへの圧力になる、と広告エージェンシーのクレーマー=クラッセルト(Cramer-Krasselt)でプログラマティックメディアディレクターを務めるマイケル・サンティー氏は指摘する。
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「ads.txtを採用するDSPは、そうでないプラットフォームからシェアを奪うチャンスだ」と、サンティー氏は語る。
この動きによる影響
インタラクティブ広告協議会のテックラボ(IAB Tech Lab)が5月ローンチしたads.txtは、インベントリーの販売が認可された企業をリストアップしたテキストファイルであり、パブリッシャーはこれを各自のWebサーバーにホストする。バイヤーは、ads.txtを使って購入するセラーの正当性をチェックできるので、ドメインのスプーフィングやインベントリーのアービトラージを回避しやすくなるはずだ。
ザ・トレード・デスクのads.txt採用によって、パブリッシャーはads.txtファイルの基本的な不備を修正し、ミススペルをなくす必要に一層迫られると、広告エージェンシーのリチャーズ・グループ(The Richards Group)でプログラマティックリードを務めるデビッド・リー氏は語る。DSPは販売を認可されている企業をチェックする際にミススペルを考慮しないだろうから、サプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)でスペルをおろそかにしているパブリッシャーは、インベントリーの需要を逸する可能性が高くなった。
ほんの2カ月前には、採用しているサイトの数が少なすぎて、ads.txtで検証されたインベントリーだけではキャンペーンを満たせないという理由から、DSPはads.txtによるフィルタリングを躊躇していた。しかし、Googleが実装をパブリッシャーに後押しすると、ads.txtの採用は急増。いまやads.txtで検証されたインベントリーが市場に増え、さらに極めて人気の高い2つのDSPがフィルタリングに対応したことで、DSPのads.txtツール実装のロードマップが追加に値するベンダーかどうか判断する際の検討事項になっていると、マーケティングコンサルティング会社のデュモン・プロジェクト(DuMont Project)でプログラマティック広告業務のディレクターを務めるジョン・ロックマー氏は語る。
「重要な分岐点を迎えた」
大手DSPの大半がads.txtをサポートしているが、ads.txtフィルタ採用のタイムフレームはさまざまだと、Googleのプログラマティックグローバル戦略の責任者、プージャ・カプール氏は語る。メディアマス(Mediamath)は、これから数カ月をかけて全プログラマティック製品にads.txtフィルタを順次採用する。アドビ・アドバタイジング・クラウド(Adobe Advertising Cloud、元TubeMogul)とデータシュー(DataXu)も、ダッシュボードへのads.txtフィルタの組み込みに取り組んでいる。
広告を買う側としては、多くのDSPがads.txtを採用してドメインスプーフィング(なりすまし)の被害を低減できるようになることを望んでいるが、DSP側がads.txtを中心にしたフィルタを構築する際には、ads.txtの限界を考慮する必要があると、フリーランスのアドテクコンサルタント、ポール・カビンズ氏は語る。ads.txtの限界には、アプリ内インベントリーに対応していないこと、認可されたセラーが実施できるインベントリーの種類が記入されないこと、不正インプレッションを捕まえるものではないことなどがある。こうした限界があるため、DSPはads.txtによるフィルタリングをすべてのクライアントに命じるべきではなく、適用の選択肢を提供するようにしなければならないと、カビンズ氏は語る。
限界はあるものの、ads.txtが業界で勢いを増していることを広告バイヤーたちは喜んでいる。
「大手DSPによる最後通牒によって、ads.txtは重要な分岐点を迎えている」と、プログラマティックエージェンシーのインフェクシャス・メディア(Infectious Media)でCTOを務めるダン・デ・ジーベル氏は語る。「今度はSSP側がまとまることが必要になる」。
Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)