新しい市場の現実に苦しむ、デジタルエージェンシー:「この10年のデジタルサービスは実質終わった」

かつて、もたつく大手からビジネスを奪い急速に成り上がったデジタルエージェンシーだが、市場が急速に変化するなか、時代に取り残される危険が高まっている。現在、成長を維持するため、戦略、コンサルティング、メディアなど、違うサービスを大慌てで追加している。

デジタルエージェンシーのビジネスをひときわ侵食する力がふたつある。ひとつは、デジタルエージェンシーの収益源を構成する多くの機能を内製化していくマーケターたち。そして、もしかするとそれより心配なのは、エージェンシーが提供しているものはほぼすべて、個々のデジタルサービスに任せている経営コンサルティング会社の忍び寄る驚異だ。

「元来が戦術的」

デジタルエージェンシーのある元従業員によると、デジタルショップは初期の段階では、企業内の「デジタルトランスフォーメーション」なるものを促進できると大きく売り込んでいたが、もっぱらその一部であるウェブサイトやバナー広告といった戦術ソリューションでブランドを構築し、お金を稼ぐことがあまりに多かった。

多くのエージェンシーはマージンの縮小が進んでいる。もっとも、デジタルの仕事のマージンは、たとえばテレビのクリエイティブよりも常に小さい。そこに、デジタル広告の成熟が価格に負の効果をもたらしているのだ。ある幹部によると、一説には、ゼロ年代の初期から中期には世界のあらゆる企業が「デジタルサービス」を必要としていて、もしかすると5~6年前まではそうだったかもしれない。しかし、そうした会社も、ブランドの再生や刷新にはいまもエージェンシーを使う一方で、エージェンシーの機能の多くを内製化している。「要するに、高い料金を請求できる業界の数が減少しているというのが現状だ」と、この幹部は語った。

「デジタルエージェンシーは元来が戦術的だとずっと感じてきた」と、現在いくつかのデジタルエージェンシーと仕事をしている検索コンサルタントは語った。「フルサービスの見直しのなかで競争する力がないことが多く、たいていビジネスダイナミクスやプロダクト作りの理解が欠けていた」という。

求められるのは「戦略」

フェアー(Faire)のCEOで以前はヒュージ(Huge)の米国プレジデントだったケイト・ワッツ氏は、いま起きていることはデザインとユーザーエクスペリエンスのコモディティ化であり、戦略はそうではないと考えていると語った。だから、初期に本格的な戦略やプランニング力を導入しなかったエージェンシーには、状況はつらく見える。たとえばR/GAの場合、グローバル最高戦略責任者のバリー・ワックスマン氏によると、本格的に変わる必要があったため、数年前にコンサルティング機能を追加し、また、収益をあげる別の方法として、ベンチャー部門を通じてスタートアップに大きく投資をしたという。

「戦術的な繰り返しの仕事ほど、マーケターは内製化ができる」と、調査会社ピボータル(Pivotal)のアナリスト、ブライアン・ウィーザー氏は語った。

そこで、デジタルエージェンシーたちは急いで機能を追加している。ヒュージは「コンサルティングとビジネストランスフォーメーションの専門知識に再投資している」と、IPGのCEOのマイケル・ロス氏は語る。IPGの4月の収支報告では、新しい東京オフィスが最近、資生堂からコンサルティングの大きな仕事を獲得したR/GAへの言及もあった。ワックスマン氏によると、R/GAのビジネスでは現在、コンサルティングがもっとも急速に成長しており、利益もいちばん大きい(なおR/GAは5月第1週から、自社のビジネストランスフォーメーション機能を宣伝する新しい広告キャンペーンを実施している)。

「統合」という考え方

「我々は機能の追加という考え方はしていない。統合しているというほうが近い」と語ったのは、ヒュージのグローバルCEOのマイケル・コジオル氏だ。「戦略の追加はうまく避けられている。我々は既存のものに新しいものを統合することにしている」と同氏は語った。

ヒュージは最近、経営が変わった。長い間CEOを務めたアロン・シャピロ氏に代わり、コジオル氏がCEOに就任した。元従業員や現在の従業員によると、デジタルエージェンシーの型を破り、かつて当然のように集められていた予算を獲得できるように、ヒュージは「統合した」ものを取り入れるように努めている。競争はコンサルティング企業やマーケターのチームからだけではない。ドローガ5(Droga5)や72アンドサニー(72andSunny)のような、同じく明確にデジタルをビジネスの中核に据えているいわゆるフルサービスショップとの競争もある。「実存的不安」のようなものがあると、ヒュージのある元従業員は語った。ある会社と雇用契約をしたたくさんの人たちが、突然、大変革に出くわしているのだ。ヒュージはいまよくないわけではない。内部関係者たちによると、今年は12%成長で、業界全体よりもいい。しかし、景気後退以降では一番の不振だ。このところオフィスをいくつか閉じ、レイオフを2回行っている。

コジオル氏によると、ヒュージは現在、プロダクトデザインのほかに物理的なデザインを増やそうと取り組んでいる。メディア購入については、同氏は「場合によっては」と言葉を濁した。

「戦術や実行が伝統であるところは苦しくなるだろう」とコジオル氏。ヒュージがいちばん大事にしているのは「POV」(価値実装)であり、大事なのは顧客体験であり、エンドユーザーが必要としているものだという観点だと主張した。「たしかにある時点では、ウェブサイトの設計や構築をしていた」とコジオル氏。しかし、その先に行ってもPOVの遺産はヒュージを形づくるのだという考え方なのだ。

エージェンシー全体は業績不振が続いており、持株会社は軒並み業績が伸び悩んでいる。アドエイジ(AdAge)によると、米国のエージェンシーの2017年の収益成長は1.8%で、これは景気後退から抜けた2010年以降で一番悪い。そしてアドエイジの最新のエージェンシーレポートによると、デジタルの仕事は成長しており、たっぷりとある。2017年は、「デジタル」がはじめて、米国のエージェンシー収益総額の半分を超えた。

新しい発明にチャンス

もうひとつの大きな懸念はコンサルティング企業だ。アドエイジのリストのなかで最大の「デジタルネットワーク」であるアクセンチュア・インタラクティブは、エージェンシー企業全体でも6位に入っていた。ウィーザー氏によると、コンサルティング企業は、すでにエージェンシー内なのか親会社内なのかはあるが、既存クライアントからより多くのデジタル予算を吸い上げられる「ピュアプレイのデジタル活動」に触れることが大幅に増えている傾向がある。

先日、ガートナーが公開したデジタルエージェンシーに関する年に1度の「マジック・クアドラント」で、アクセンチュア・インタラクティブはこの分野のリーダーだった。ガートナーによると、アクセンチュア・インタラクティブは中核のコンサルティングの強みを「デジタルトランスフォーメーション」の取り組みに持ち込むという点で、多くの他社よりも向いているのだという。

アクセンチュア・インタラクティブの過去1年間の成長を見ておこう。2017年、同社はインダストリアルデザイン機能を追加し、シンガポールに「デジタルハブ」を開設した。また、ジナーシュラーダー(SinnerSchrader)、モンキーズ(The Monkeys)、ワイア・ストーン(Wire Ston)といったエージェンシーを獲得した。アクセンチュア・インタラクティブのエネルギーがどこに向かっているのかは明確だ。同社のマーケティングとコミュニケーションの最高責任者は声明で、「デジタル世界のためのゼロから作られた」エージェンシーをクライアントは求めており、アクセンチュアはこの分野に秀でていると語っている。「デジタルエージェンシーは経営コンサルティング会社との激しい競争に直面している」とワッツ氏。いま大事なのは、戦略のサービスのような、プレミアム価格に値するようなサービスを提供することだと同氏は語った。

「要するに、いま起きているのは、この10年間のデジタルサービスが実質的に終わったということだ」と、デジタルエージェンシーの元従業員は語った。「いまは、企業のこれからのニーズを満たす新しいサービスの発明に課題とチャンスがある」。

Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)