サラ・ペレツ氏は約1年前、Snapchatでインフルエンサーとしてのキャリアをスタートさせた。いまでは閲覧数が5桁になることも少なくない、そのペレツ氏が、Snapchatを離れようとしている。Snapchatは一緒にやっていくのが大変で、軽んじられたような思いにさせられるのだという。
サラ・ペレツ氏は約1年前、Snapchatでインフルエンサーとしてのキャリアをスタートさせた。食べ物や美容をテーマにした、繊細でユーモアのある投稿をしており、閲覧数が5桁になることも少なくない。そのペレツ氏が、Snapchatを離れようとしている。
その決断の引き金はこうだ。Snapchatのプロダクトマネジメント幹部にSnapchatをやめようかと考えているといったところ、「Snapchatは、友人たちのためのアプリであって、クリエイター向けではないから」と、離れることを率直に求められたのだ。
ペレツ氏のように、Snapchatへの不満を公にあらわにするソーシャルスターは何人かいる。Snapchatは一緒にやっていくのが大変で、軽んじられたような思いにさせられるのだという。
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認めてほしいという願い
ジェイソン・ウォン氏もそのひとりだ。デジタルエージェンシーのウォンハウスメディア(Wonghaus Media)のCEOで、17歳の時にTumblrでインフルエンサーになった同氏は、2016年にSnapchatを使いはじめた。同氏によると、インフルエンサーを顧みないSnapchatに対しては、2017年に開催されたコンテンツクリエイターのカンファレンス「ビドコン(VidCon)」でも、たびたび不満の声が上がっていたという。
「YouTubeの場合、インフルエンサーがプラットフォームを利用するのに積極的に協力している。(Snapchatの親会社である)スナップ(Snap)は、YouTubeと比べるとまだ赤ちゃんのような会社だが、それはコンテンツクリエイターに協力しない弁解にはならないだろう」と、ウォン氏は語る。「Snapchatのインフルエンサーたちは、オーディエンス獲得に懸命に取り組んでいるのに、スナップから認められることがない」。
Snapchatのインフルエンサーを自認するマイケル・プラトコ氏は、BuzzFeedのインタビュー記事で、これをさらに率直に表現した。Snapchatは「まったく何も与えてくれない存在としてのポジションを本当に固めた」と、同氏は述べたのだ。
YouTubeとインスタグラムは、ソーシャルスターたちを育ててきた。しかしSnapchatは、インフルエンサーはブランドの商品を宣伝することが多い人たちであり、インフルエンサーを満足させすぎると、コアユーザーにとってのSnapchatの魅力が損なわれる恐れがあるという見方をしているようだ。
スナップはソーシャルスターに関して、普通のユーザーたちのようにプラットフォームを使ってほしいと考えている。メディアエージェンシーのアテンション(Attention)のプレジデント、トム・ブオンテンポ氏は、スナップは、ユーザー、大手パブリッシャー、そして社内のストーリーチームによるコンテンツ配信に力を入れており、そのため、インフルエンサーの処遇を優先しなくなったのではないかと考えている。さらに言えば、ブランドによるSnapchatの利用も、広告製品を除けばスナップは賛成ではないのだという。
インフルエンサーエージェンシーのコレクティブ・バイアス(Collective Bias)が6月、約600人のソーシャルスターに調査を行ったところ、Snapchatは、手を出してはいるが活動はしていないというインフルエンサーの回答がもっとも多いソーシャルネットワークだった。また、今後関係を切る第1候補はスナップであると46%が示し、YouTubeとTwitterがこれに続いた。また、今後5年間でSnapchatがもっとも重要なソーシャルチャネルになると回答したのはわずか1%だった(インスタグラムは42%、Facebookは16%)。
スナップの広報担当者は、同社はSnapchatユーザーの一人ひとりを大事にしており、たくさんのインフルエンサーと良好な関係にあると語っている。
すべてのインフルエンサーが不満というわけではない
ソーシャルスターの全員が、Snapchatを批判しているわけではない。スナップ1件で平均100万回の閲覧があるロス・スミス氏は、自分の場合Snapchatは、オーディエンスの規模でいえば、いまだに2番目に大きなソーシャルネットワークだと語った。「Snapchatが本当に好きだ。自分自身でいられるし、コンテンツをひとつ30秒で作れる」とスミス氏は語る。「問題があると、Snapchatと直接電話をする。Snapchatのチームは、新機能やプラットフォーム(を最大限に活用する方法)について話をしてくれる」。
スミス氏はその一方で、アナリティクスがないSnapchatはブランドと組んだ活動が難しいことを認めた。また、Twitterやインスタグラムのようなパワーユーザー認証をSnapchatが提供してくれればいいのに、とも語った。
Snapchatに専念しているインフルエンサーであるサイリーン・キアムコ(CyreneQ)氏は、Snapchatはソーシャルスターとの協力関係において自由放任的アプローチを採っているが、このことが自分が使い続けるのを妨げることはないと語った。自分も含めて多くのコンテンツクリエイターが、Snapchatの手助けなしで登場したのだからというのが、サイリーン氏の考え方だ。同氏はまた、Snapchatは自らを「カメラの会社」だと位置付けており、Snapchatの計画にインフルエンサーは入っていないと考えている。
「当面、Snapchatを続けるが、それは自分のオーディエンスがここにいるからだ」と、サイリーン氏は語る。「Snapchatが消えてしまったら、そのとき私のオーディエンスは、私と一緒に移動するだろうし、新しいプラットフォームを再び足場にできるかもしれない」。
エージェンシーの見方
エージェンシーの幹部たちは、Snapchatがインフルエンサーの優先度を下げている状態にはリスクがあると見ている。低コストでSnapchatのオーディエンスに訴求するのにインフルエンサーを使っているクライアントは多いし、インフルエンサーマーケティングがなければ、一部のブランドはSnapchatを放棄するだけだろうというのが、アテンションのブオンテンポ氏の見方だ。同氏はまた、インフルエンサーはパワーユーザーであり、彼らはエンゲージメントを刺激してSnapchatユーザーを増やすのに役立ちうると語った。
「危険な状態だ。インフルエンサーがコンテンツのフックであり、頻度やプラットフォームのユーザー基盤との関わりを高めているのは明白なのだから」と、ブオンテンポ氏は述べる。
デジタルエージェンシーのジャニュアリー・デジタル(January Digital)の創業者、ビク・ドラビッキー氏は、この意見に同調したうえで、スナップはまだ、ソーシャルネットワークになりたいのか、テクノロジー企業になりたいのかを探っているところなのだろうと語った。前者になりたいのであれば、スナップはユーザーとコンテンツの確保が必要であり、インフルエンサーは、ユーザーを新たに獲得する素晴らしい方法だ。「どちらの道にするか答えが出しだい、スナップはそちらを中心に、広告製品を構築するだろう」。
インフルエンサーであるウォン氏は、インフルエンサーに対するSnapchatの姿勢は、Vineの最期を思い出させるものであり、だからインフルエンサーにもっと積極的に対処することが正しいのだと指摘する。「クリエイターは全員がVineを復活させようとしたが、Vineからのサポートはまったくなかった」。
冒頭に登場した、Snapchatを離れつつあるインフルエンサーのペレツ氏は現在、インスタグラムに温かく迎えられている。インスタグラムは同氏からインスタグラムに対するフィードバックを求めるための話し合いも設定したとのことだ。「スナップが私を追い出そうとしているなかで、(インスタグラムの)私への関心がこれほどあることに驚いている」とペレツ氏は語る。「インスタグラムとの先日の接触は、とても歓迎された感じがした」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)