言うまでもなく、マーケティング領域においてジェネレーティブAIの導入、活用は進んでいる。誰もがAIを売りにしているタイミングであり、自分達がテクノロジーに精通しているかのように振る舞うために利用している企業も多いという指 […]
言うまでもなく、マーケティング領域においてジェネレーティブAIの導入、活用は進んでいる。誰もがAIを売りにしているタイミングであり、自分達がテクノロジーに精通しているかのように振る舞うために利用している企業も多いという指摘もあるが、ジェネレーティブAIの無限にも思えるポテンシャルを使いこなすことができれば、企業規模やリソースに関係なく、可能性の幅は大きく広がるだろ。
しかし、課題も山積している。そのひとつが「責任あるAIとの向き合い方」とはいかにあるべきか、という点だ。現時点でジェネレーティブAIは法的にグレーで宙ぶらりんの状態にある。米国ではメディア業界団体がAIによるコンテンツ利用への法規制を要求する動きや、大統領令でAIの開発と活用の指針を示すなど、規制に向けた動きは確実に進んでいる。
著作権やデータプライバシー関連の問題も含め、AIに対してどのように向き合えば責任ある態度となるのだろうか。
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著作権無法地帯は誰も望まない
AI生成コンテンツに対する法監視の目は厳しさを増している。米国では8月に著作権局が官報に長文の勧告を掲載し、知的財産に対するAIの影響への対応を望むすべての人のために民間意見調査期間を設ける旨を発表した。9月にはオープンAIとマイクロソフトがプライバシー保護法を侵害したとしてクラスアクション訴訟を起こされている。
AIが孕む著作権問題に関して、許諾済みコンテンツのみを使用することで法的リスクを回避し、「責任ある姿勢」を示すとしているのが、イスラエルを拠点とするAIイメージジェネレーター企業、ブリアAI(Bria AI)だ。同社はストックイメージ大手などのコンテンツマーケットプレイスの使用許諾済コンテンツでトレーニングさせた、新たな基盤AIモデルを構築。収益はブリアAIと各データ所有者、コンテンツ生成者、クリエーターとの間で均等に分配される。
ブリアAIのCEOであるヤー・アダト氏は、ストリーミングした音楽作品に対してアーティストに極小の補償を与えるSpotifyのようなモデルを目指しているとしており、これで著作権問題も、説明可能性問題も解決される。AIと人間、それぞれが生成したイメージが背中合わせで表示されるからだ。プライバシー問題も解決される(中略)。それについては、我々は根本から解決した」とコメントしている。
こうしたブリアAIの取り組み自体は素晴らしいものだが、実はこれによってさらにマクロレベルの解決すべき問題も浮き上がってくる。
誰がAIを使い、AIは誰の何を使っているのか
著作権の倫理的側面から考えるなら、「盗用(とあえて表現するが)」の問題には業界は目を瞑ってきた。PR業務でジェネレーティブAIを積極的に活用しているZ世代のマヤ・ビンガマン氏は「他人が私の仕事を取り上げ、自分の名前を載せて自分の仕事だと主張することには慣れている」と語った。「それがゲームのルールであり(中略)おかしいことでもないと言える」からだという。
ただし、AIやChatGPT、プロンプトエンジニアにクレジットを与えるべきという主張には賛成できないとしている。「『広報担当者が解説や記事、ブログを書いたときにそのクレジットを与えるべきだ』と考える人はいなかった(中略)。ChatGPTやそれに準ずるものが存在する何十年も前から、このようなことを行なってきた人々について、私たちはしっかり考えたことがなかったのに」。
オムニコム傘下のコミュニケーションエージェンシーDDBでAI事業を率いるジョージ・ストラクホフ氏は、「問題はAIモデル云々ではない」と指摘する。
「たとえば、あなたがりんごを栽培していたり、あるいは音楽を演奏していたりするなら、私はリンゴや音源を購入でき、リンゴや音源はあなたの手を離れる。取引は明快だ。しかし、君あたなが何か素晴らしいものを有しており、人間またはAIがそれをいわば手に入れ自由に利用することができ、さらにあなた自身もそれを失わずに済むとなると、どうなるのか」。
主な数字
20%:Indeedが5500万件超の求人票に記載されたスキルを分析したところ、約20%が潜在的にAIに代行される高いリスクにさらされていることが分かった。リモートで遂行できる仕事ほど、リスクも高くなるという。
100時間:マーケティングエージェンシーのRed Doorが新入社員のオンボーディングと人事労務業務に活用するAIチャットボットを導入した結果、節約された従業員の作業時間。1人1時間で100人分の合計。
71%:5月のDIGIDAYリサーチにおいて、業務でジェネレーティブAIを導入していると回答したエージェンシーの割合。