電通・博報堂、 SXSW で「エージェンシーの未来」を示す:オープンイノベーションで挑む 未踏領域

SXSW 2018(サウスバイサウスウエスト)が3月9日、米テキサス州オースティンで開幕した。この音楽・映画、エンターテイメント、テックの祭典は、18日まで開催される。10日(米時間)には、イーロン・マスクがサプライズ登壇し、朝からチケット争奪戦に長蛇の列ができるなど、連日大盛り上がりだ。

今年のSXSWで目立つのが、日本人と日本企業からの出展の多さだろう。最新テクノロジーにフォーカスしたインタラクティブ部門の目玉のひとつで、大企業やスタートアップが最新のアイデアや製品プロトタイプを展示するトレードショーでは、特に日本のブースが賑わいを見せている。

そんななかでも、もっとも大きな出展スペースを構えていたのが電通と博報堂だ。彼らの展示内容を見ると、どうやら代理店としての機能を超え、自らイノベーションを起こそうとする機運が高まっている様子が感じられた。そこから透けて見えてきたのは、エージェンシーの危機感とオープンイノベーションの加速だ。

イノベーションの表舞台へ

日本からの出展のなかでも、ひときわ目を引いたのが、食情報をデータ化し、食感や味、栄養素までをプリンタ出力して再現するという「スシテレポーテーション(SUSHI TELEPORTATION)」だ。メディアにも多く取り上げられ、ブースには毎日人だかりが絶えなかった。仕掛けたのは電通。同社は、ほかにも跳躍力を拡張するパワードスーツ「ルナビティ(Lunavity)」など、4つのプロトタイプを出展した。

 

話題を呼んだ「スシテレポーテーション」

話題を呼んだ「スシテレポーテーション」

 

この規模で、電通がSXSWに出展するのははじめて。「『電通=広告会社』ではなく、テクノロジーとアイデアを掛け算してイノベーションを起こす組織だとアピールしたい」と、今回の出展を統括した同社の責任者は語る。「XD –MULTIPLY YOU-」をコンセプトに、電通と他社のテクノロジーや研究開発と掛け合わせて、多領域におけるイノベーションの創出を目指すという。

 

三方面からオープンに見える電通の展示

三方面からオープンに見える電通のブース

 

一方の博報堂は今年で4度目の出展だ。「カレス・ユア・ブレイン(CARESS YOUR BRAIN.:脳をかわいがる。)」をテーマに、「人」を起点とした生活者発想でのプロダクト開発を進める。「広告の形が急速に変化するいま、さまざまなコミュニケーションのあり方を問いたい」と、同社担当者は語る。

 

3DCG女子高生「Saya Visual Human」

3DCG女子高生「サヤ」

 

そのとおり、同社のブースには、深層学習で人の感情を読み取りリアクションする3DCG(3次元コンピューターグラフィック)の女子高生「サヤ(Saya)」や、しっぽのついたクッション型セラピーロボット「クーボ(Qoobo)」など体感型の展示が多く、言葉ではない接触を通した顧客とのコミュニケーションに主軸が置かれている。

 

クッション型セラピーロボット「クーボ」

クッション型セラピーロボット「クーボ」

エージェンシーからの脱皮

電通・博報堂からともに感じられたのは、自社からイノベーションを生み出さなければならないという危機感だ。

「これまでは広告代理店として、クライアントの発注業務が多かったが、今後さほど成長は見込めない。これからは、広告代理店が自ら新領域を開拓していかないといけない」。

と電通担当者が述べれば、博報堂も口を揃える。

「広告やコミュニケーションのあり方が変化しており、広告代理店としてその先端を行かなければならない。展示を見て、これは広告なのかという疑問を抱かれるかもしれないが、未来の広告の形だと思っている」。

マス広告から体験型のコンテンツと顧客が広告に求めるニーズが変化しているのはもとより、テクノロジーの進化など、いま未来の広告の形を想像し、試さなければ時代の流れに広告が置いていかれるという危機感がにじみ出る。

「博報堂にとって、SXSWはコミュニケーションのテストの場だ」。

危機迫る、オープンイノベーション

さらに、電博の出展の特徴が、外部とのコラボレーション・プロジェクトが多いことだ。電通の「スシテレポーテーション」は山形大学、デンソーウェーブ、東北新社と協力、「ルナビティ」は東京大学学生チームとの連携となっている。博報堂も出展プロジェクトの半数以上が、外部企業との協業だ。

 

電通と東大チームの連携、「Lunavity」

電通と東大チームの連携「ルナビティ」

 

「自社だけではできない。大学やクライアントのR&D部門にある最新のテクノロジーと電通のアイデアやクリエイティブ力を掛け合わせることで、イノベーションを起こしていきたい、そして新しいビジネスを生み出したい」。

 

博報堂の協業プロジェクト「SHAKE SYNC」、「pacoo」

博報堂の協業プロジェクト「SHAKE SYNC」、「pacoo」

 

「技術を開発しても、どうすれば顧客に受け入れられるのかわからないクライアントに対して、生活者発想を強みとする博報堂だからこそ、顧客視点でさまざまなアイデアを提供できる。新たな協業先を見つけるのもSXSW出展の目的のひとつ」。

オープンイノベーションの鍵は、外部組織との連携だ。エージェンシーはもともと仲介的な立場を担うため、電通や博報堂にとっては得意領域といえる。さらに、広告代理店が持つクリエイティブ能力やユーザーコミュニケーションを把握し尽くした強みを相乗させれば、オープンイノベーションはますます加速しそうだ。

「SXSWでいいアイデアや提案をたくさんもらえた。帰国して、次に繋げる」。両社ともに、イノベーションに熱い思いをかける。

Written and Photo by 亀山愛