レストランからのデリバリーを行うサービス、ドアダッシュ(DoorDash)。この消費者の自宅までの配達という、いわゆる「ラストマイル・デリバリー」の事業者は、対象をリテール店舗相手にも拡大しようとしている。 創業6年目と […]
レストランからのデリバリーを行うサービス、ドアダッシュ(DoorDash)。この消費者の自宅までの配達という、いわゆる「ラストマイル・デリバリー」の事業者は、対象をリテール店舗相手にも拡大しようとしている。
創業6年目となるドアダッシュの企業価値は60億ドル(約6630億円)。そして先週、5億ドル(約550億円)の資金調達を行ったと報道された。彼らのサービスは北米において30万のレストランのオンライン注文の宅配を行うというものだ。その一方でリテーラーたちもデリバリーをより素早く行おうと取り組んでおり、実店舗と連携してのオンライン注文の配送を効率化しようとしている。そこにドアダッシュはチャンスを見出した。彼らが最初にリテール宅配に取り組んだパートナーはウォルマート(Walmart)だ。これは昨年4月にローンチされ、宅配の時間指定は30分単位となっている。これに顧客データ分析を組み合わせて、ほかのリテーラーたちにも同様のサービスを売り込んでいる。
「我々が消費する商品はあらゆる物が2時間以内に宅配されるようにいずれなるだろう。その最初の実現段階が食料だ」と、ドアダッシュのビジネス開発部門責任者であるトビー・エスピノーサ氏は言う。「我々が有するドライブ(Drive)プラットフォームのおかげで、パートナーたちに代わってデリバリーを行うことができる。パートナーは食料品販売やレストランに限らない。日常雑貨やリテールといった新しい分野へと参入する余地をそこから見出している」。
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ドアダッシュの事業
ドアダッシュのビジネスにはふたつの側面がある。ひとつは消費者に対するマーケットプレイスだ。ここでは消費者と参加ブランドをアプリ経由で結びつける。もうひとつが前述のドライブだ。2016年にローンチされたこのプラットフォームを通じてリテーラーとパートナー関係を作っている。日常的な商品以上の幅広い商品を消費者に届けるポストメイツ(Postmates)同様、ドアダッシュもウォルマートとのパートナー関係で消費者リテールへと参入したわけだ。そして酒類の宅配といった新しい分野への拡大も野心的に計画している。リテーラーたちは、彼ら自身のデジタル注文プラットフォームにドアダッシュのテクノロジーを埋め込むことで、直接ドアダッシュの宅配チームに接続することができる。これはポストメイツも提供しているサービスだ。
1日の時間帯に応じてどのようなプロダクトが注文される傾向があるか、それぞれの地域ではどのようなプロダクトが注文される傾向があるか、といった顧客行動に関する分析データもドアダッシュはリテーラーに提供している。これらのデータは消費者向けのプラットフォームとドライブから集められたものだ。また宅配時間はどれくらいが最適か、といったオペレーション上のデータも提供する。ドライブから得た情報をもとに、ブランドたちはどこに新しい店舗をローンチするか、宅配手数料を時間帯に合わせて上げるべきか、時間限定のディスカウントで注文を促すべきか、といった判断を下すことができる。
リテーラーたちがラストマイル・デリバリーをどのように施行するか取り組んでいるなか、ドアダッシュが直面する競争は激しい。最近上場したポストメイツ、ウーバーイーツ(Uber Eats)、デリブ(Deliv)、インスタカート(Instacart)、デリバー(Deliverr)といったほかのサービスはどこも市場シェアを伸ばそうと奮闘している。フードデリバリー業界でのリーダーはグラブハブ(GrubHub)だ。競争は激しいものの、ドアダッシュがリテーラーに売り込んでいるサービスは幅広い。50州すべてとカナダのいくつかの都市で展開されている「ダッシャー(Dasher)」と呼ばれる宅配チーム、宅配プロセスをブランドの必要事項に応じてカスタマイズできるカスタマー体験、そしてダイレクトなPOS(販売時点)統合だ。
高度なデータが特徴
ガートナー(Gartner)のアナリストであるエヴァン・マック氏は次のように語る。「ドアダッシュは特に、パートナー関係を持つレストランに提供するデータをさらに高度にする取り組みを行っているようだ。メキシカン・グリルのチェーン店であるチポトレ(Chipotle)のサイトは、ドアダッシュ技術を組み込むことで、注文の更新をリアルタイムで行い、顧客からのフィードバックやローカライズされた宅配情報へのアクセスもキープしながら、ドアダッシュ宅配注文を行えるようになっている」。
ウェンディーズ(Wendy’s)もまた、最近の収支報告において、ドアダッシュ技術を導入したことで顧客行動をより良く理解できるようになったと述べている。
昨年8月の収支報告においてウェンディーズのCEOトッド・ペネガー氏は「情報をシェアし、顧客データにアクセスするためにドアダッシュとパートナー関係を結んでいる。ドアダッシュ技術を我が社のアプリに導入するべく、取り組んでいる。我々が常に話しているのは、注文をしてから自宅に届けられるまで、理想的な時間は30分以下、ということだ」と言った。
見どころは顧客体験
宅配分野における競争がさらに激しくなるにつれて、企業たちは差別化をすると同時にどのようなビジネス分野においても同じ質のサービスを提供するプレッシャーにさらされるだろう。それがレストランであれ、消費者向け日常プロダクトであれ、生鮮食品であれ、だ。リテーラーたちは複数のプラットフォームを実験的に使うことでリスクを減らそうとするかもしれない。これはウォルマートがそうであった。彼らはポイント・ピックアップ(Point Pickup)、スキップカート(Skipcart)、アクセルハイヤー(AxleHire)、ローディー(Roadie)、そしてデリバー(Deliverr)を試している。これに加えてウーバーとリフト(Lyft)も活用していた。データ分析企業ヤグアラ(Yaguara)のCEOであるジョナサン・スマーリー氏は、サービス体験を均質に保つことが課題となるだろう、と語る。
「レストラン業界からほかのリテール業界へと拡大するなかで、彼らが同じ顧客体験をキープできるかどうか、見どころとなるだろう。デリバリー体験は非常にコントロールが難しい。特に多数の宅配便業者が複数のプラットフォームで機能していることを考えると、デリバリー体験を管理するのはなおさら難しい」と、彼は語った。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:塚本 紺)