「いまはしかるべき学習曲線」: Facebook のテレビ市場参入、成功には「思考転換」が必要

テレビネットワークと広告主が、1年契約の取引を交渉するイベント「アップフロント(Upfront)」。Facebookは2019年、このテレビ広告購入サイクルに入り込みたいと考えている。ただ、広告バイヤーたちによると、ソーシャルネットワークであるFacebookが交渉のテーブルに着くには、テレビのような振る舞いとトークが必要になるという。

Facebook予算の出処

米DIGIDAYがインタビューした広告エージェンシー幹部6人によると、テレビ業界のアップフロント市場への参入に舵を切るなら、Facebookは、テレビ業界で従来行われている動画広告の売り込み方に適応することを迫られるという。1人目のエージェンシー幹部によると、現在、クライアントからFacebookへの動画広告支出は、ニュースフィードに表示されるスタンドアロンの動画広告のものが「大部分」だ。

そこでFacebookは、インストリーム動画広告のインベントリー(在庫)を買ってくれる広告主の獲得に取り組んできた。これは、パブリッシャーや個人クリエイターによる動画や、Facebook Watch(ウォッチ)のオリジナル番組やラインセンス番組に、プレロール広告やミッドロール広告を付加するというもの。しかし、インストリーム動画広告が入っていようと、Facebookの動画インベントリーに対する広告費がクライアントのソーシャル予算から出ていることに変わりはないと、2人目のエージェンシー幹部は語る。

「Facebookはもっと古くからあるテレビや動画の購入チームと直接やり取りをしたいのだろうが、完全に切り替わったという話は知らない」と、この幹部は話す。

テレビとプレミアムデジタル動画が専門で、Facebookとアップフロントの話し合いを続けている3番目のエージェンシー幹部は、Facebookはこの移行を達成しようと取り組んでいるが、「いまはしかるべき学習曲線を描いているところ」だと語った。

実質的な広告料金表

広告バイヤー側はFacebookによるアップフロントの売り込みには関心があり、Facebookが個別のスポンサーシップを売り込んでいる番組に好意的だが、第4のエージェンシー幹部は、Facebookと進んでアップフロント取引の契約をするかは「価格次第ということになるだろう」と語った。

実質的にアップフロント取引の値札表示価格となる広告料金表を、Facebookはまだバイヤーに提供していない。

こうした交渉がはじまるまでということで広告バイヤーが期待を寄せるのは、Facebookが提供する四半期ごとの動画広告の事前取引だ。エージェンシー幹部3人によると、この四半期ごとの事前取引では、インストリーム動画インベントリー全体に対する広告のCPMを約25ドル(約2780円)に固定するのと引き換えに、20万ドル(約2200万円)以上の支出に応じるよう、Facebookは広告主に求めているという。

しかし、アップフロント交渉になると、Facebookは価格の大幅引き下げを強いられる可能性が高い。こちらもFacebookとアップフロント交渉を進めている5番目のエージェンシー幹部は、「テレビに置き換わるもの(になること)を期待しているのならば、もっと安くする必要があるだろう。しかし、最初は売るものが多くないから、価格が大幅に下がることはないはずだ」と語った。

未達時の対処計画

広告主側は、価格に加えて、広告主が支払った内容を実現できないような場合の対処計画についてもFacebookの返事を待っている。Facebookは、アップフロント広告がターゲットの年代や性別の視聴者にリーチするという保証をニールセンと協力して提供しているが、広告バイヤーからすると、そうした保証を遂行するための十分な番組と視聴数をFacebookが確保できるのか確信がもてない。

テレビネットワークは、広告主に保証しているものに届かない場合、インベントリーを追加して最初に提供できなかった分を埋め合わせる、いわゆる「埋め合わせ広告」を提供している。Facebookは、広告エージェンシー幹部3人によると、アップフロント取引への埋め合わせ広告を実施するのかも、実施する場合にはどんな内容を提供するのかも、まだ広告バイヤー側と話し合っていない。

インストリーム広告の不足をFacebookがインフィード広告を提供することで補おうとする場合、「それは我々がとても喜ぶものではないし、1対1の埋め合わせになるものとは見なされないということをFacebookは学ぶことになる」と、第4のエージェンシー幹部は語った。

番組中心の売り込み

2018年以降、Facebookは動画ハブのFacebook Watch内にある各番組の広告を買うオプションについて、エージェンシーの広告バイヤーと話し合ってきた。2月26日に主催したニューヨークのイベントに先立ち、Facebookがエージェンシー側と内々で行っていった会合を通じ、この議論がこの数週間で加速。Facebookは、テレビに似た広告主との年間アップフロント取引を推進する一環として、番組スポンサーのオプションを正式に発表した。

アップフロントの売り込みをもっぱら個々のチャンネルのコレクションを中心に調整してきたYouTubeと異なり、Facebookは、番組中心の売り込みで2019年のアップフロントサイクルに割って入るという、従来型のルートをとっている。

Facebookで北米エージェンシー営業のディレクターを務めるエリック・ガイズラー氏は、2月26日のFacebookのイベントで、「かつての動画広告マーケットプレイスに出会うという指針だ」と語った。

とはいえ、テレビのアップフロント市場ではFacebookは新参者であり、従来の広告セラーに同一条件で対抗できることを証明するには、販売戦略を適合させることが必要になるだろう。Facebookはこの3カ月から半年、「この方向に舵を切り、テレビのマーケットプレイスに慣れている人が理解しやすい形の売り込みとパッケージングのいちばんいい方法を目指している」と、4番目のエージェンシー幹部は語った。

プログラムガイドの存在

Facebookはこの数週間、13ページからなるFacebook Watchのプログラムガイドをエージェンシーに提供しており、これを通じて、個々の番組のスポンサーに対し、広告主の興味をかき立てようと努めている。エージェンシーの広告バイヤーのひとりが、印刷されたプログラムガイドの小冊子を米DIGIDAYに見せてくれた。

このプログラムガイドは、ジェイダ・ピンケット=スミス氏の「レッド・テーブル・トーク(Red Table Talk)」や「ナイン・マンス・ウィズ・コートニー・コックス(9 Months with Courteney Cox)」といった「Facebookオリジナル」シリーズや、「バフィ・ザ・バンパイヤ・スレイヤー(Buffy the Vampire Slayer)」や「ファイアフライ(Firefly)」をはじめとするライセンスされたテレビ番組など、Facebook Watchで提供されている25番組が取り上げられている。番組ごとに1~2文の簡単な説明と番組ページへのURLが載っているが、ジェシカ・ビール氏とスタンリー・トゥッチ氏を起用した「ライムタウン(Limetown)」など、初公開前のためURLがない番組もある。

同じくこの冊子を受け取った別のエージェンシー幹部は、「Facebookのプログラムガイドを見たのは、これがはじめてだった」と語った。

エージェンシー巡回説明会

2019年のテレビのアップフロントサイクルに加わることにFacebookがとても力を入れていることから、5月にテレビネットワークがアップフロントのプレゼンを行う時期に、Facebookがニューヨークでアップフロントの独自イベントを開催する計画をしているという感触を、複数のエージェンシー幹部が得ていた。しかし、Facebookの広報担当者によると、そうしたイベントを開くのではなく、アップフロントでエージェンシーに売り込む内容をまとめたエージェンシー巡回説明会を行う予定だという。

Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)
Sahil Patel contributed reporting.