広告ユニットの多様化やリーチ保証といった取り組みが評価され、Snapchatは成熟したプラットフォームとして広告主から注目を集めている。予算を新たに用意するブランドはもちろん、これまでSnapchatをメディア戦略に組み込んできた企業のあいだでも、その重要性はさらに高まりつつある。その評価ポイントはどこなのか。
D2Cの男性向け石鹸ブランドで知られるドクター・スコッチ(Dr. Squatch)はこれまで、Snapchatにほとんど広告出稿しなかった。だが、より多様なオンラインメディアへの展開を模索するなかで、2021年のメディアミックス施策の一環として予算の10%をSnapchatに投じる方向転換を図った。
ドクター・スコッチのCMOであるジョシュ・フリードマン氏は、今後もフィードに動画広告を出していく方針だと語る。Facebookやインスタグラムへの過度の依存からの脱却を目指すD2Cブランドは多い。このトレンドのなか、これまでSnapchatをメディア戦略に組み込んできた企業のあいだでも、その重要性はさらに高まりつつある。
メディア戦略の中核を担う存在に
「変化への即応力は我々の強みのひとつだ。そのとき、もっとも効果的なものを選択する」とフリードマン氏は語る。「もはやSnapchatは、ただの『お試し』プラットフォームではない」。Snapchatへの予算増額分は、主にフィード広告やZ世代向けの有料動画コンテンツの制作および配信に充てられている。
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一方、FacebookやYouTubeも相変わらずドクター・スコッチにとって欠かせない存在だ。デジタルメディア予算のうち、実に85%以上をこの2社が占めている(65%がFacebook、20%がYouTube)。Snapchatは前述したとおり10%程だ。そして残りの5%は、TikTokやインフルエンサーマーケティングといったチャネルの試験運用に使われている。
フリードマン氏は「複数チャネルを使い分けることで、急速な成長を実現しつつ、将来的なリスクを軽減したい」と語る。
Snapchatは近年、ブランドにとってより魅力的なプラットフォームとなるよう改修投資を続けてきた。これまで米DIGIDAYが報じたとおり、2020年春には短尺のオリジナル番組の制作や、AR機能の実装なども行った。クリエイティブエージェンシーのR/GAでメディア担当責任者を務める、ファビアナ・キャンベル氏は、「今後、Snapchatを検討するブランドがどんどん増えていくだろう」と述べている。
「Snapchatも、ブランドのメディア戦略の中核を担える存在になりたいと本気で考えているようだ」。
広告ユニットの多様化が注目を集める
しかしながら、現時点でSnapchatを利用してECサイト上にダイレクトレスポンス広告を展開する広告主は多くない。「だがSnapchatは、とりわけ小売分野で、Z世代へのターゲティングに優れていることを実証してきた。躍進はこれからだ」とキャンベル氏は自身の主張の根拠を示す。
ブランドがメディア戦略と広告出稿の多様化に取り組むようになって久しいが、そのなかでSnapchatは「スポンサード・レンズ広告やさまざまな広告ユニットを利用することで、ユーザーのエンゲージメントを深められる存在」として注目を浴びている。2021年のスーパーボウルで、R/GAはウーバーイーツ(UberEats)と提携し、SnapchatのAR機能を活用した広告を展開した。やはりターゲットはZ世代だ。
キャンベル氏は「ブランドとの関係を深め、ユーザーに訴えかける体験を提供したい。(キャンペーン)全体を通して、オーディエンスに受け入れられるプロモーションに仕上げたい」と意気込む。
Snapchatはおよそ10年前、業界で躍進する存在として注目された。だがこれまでPRの失敗や広告主の理解不足などが足を引っ張り、脇役に甘んじてきた。
米DIGIDAYでは2020年秋、Snapchatがキャンペーンを展開するブランドに一定のリーチを保証する「プラットフォームバースト(Platform Burst)」という取り組みを発表したことを報告している。また、同様に米DIGIDAYでは、パブリッシャーがこのプラットフォームで成功を収めていることも報じていた。
今や成熟したプラットフォーム
ドクター・スコッチの2020年の収益は1億ドル(約106億円)だが、メディア予算として3000万ドル(約32億円)を投じている。さらに2021年は、ブランドとしての成長が見込めた場合にはこれを倍増する予定だという。
「今後も成長を続けていきたい。事業規模を2倍にしたいと考えている」とフリードマン氏は強気を崩さない。「それには広告への投資が必要だ」。ドクター・スコッチは、2月に行われたスーパーボウルでもブランドの知名度を上げるためのキャンペーンを実施した。さらには、新規顧客の獲得だけでなく、スニーカー業界のようにさまざまな限定版商品を展開し、既存顧客との関係強化にも余念がない。
リプライズ・エージェンシー(Reprise Agency)でSNSパートナー担当バイスプレジデントを務めるセイディー・ミラー氏は、「SNSの経験豊富なマーケターは、もはやSnapchatを『お試し』とは捉えていない」と指摘する。スマホのカメラを活用し、VRやAR機能を活用できるSnapchatは、プラットフォーマーのなかでも独自の地位を確立している。
「昨年度と比べ、当社のSnapchatへの広告の割合は増えている。今や成熟したプラットフォームだ。オーディエンスへの興味を喚起する広告展開が可能で、広告主の目標達成に貢献できるプラットフォームとして評価している」。
[原文:‘De-risk the path forward’: Why Dr. Squatch sees value in Snapchat as it diversifies its media mix]
KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)