DAZN はいかにして、顧客獲得・維持を向上しているか?:データ活用で体験を改善

スポーツ専門ストリーミングプラットフォームのDAZN(ダゾーン)は、現時点で7つのマーケットに展開し、何百万人ものサブスクライバーを抱えている。展開マーケットは2022年までに20に増える予定だ。新規登録、そして顧客維持のために、彼らが持つエンジニア力、プロダクト力を最大限活かして、この目標を達成しようとしている。

DAZNは、イギリス、ポーランド、オランダに何百人ものエンジニア、デベロッパー、データサイエンティストを抱えており、彼らはそれぞれのマーケットのオーディエンスデータを収集・分析している。プロダクト・ウェブ・顧客獲得維持のディレクターであるクリス・ヘイ氏は、DAZNのデベロッパーのうち、およろ70%が新規顧客獲得のためのプロダクト機能に取り組んでおり、10%が顧客維持に取り組んでいるという。プラットフォームが成熟するにつれて、この数字が入れ替わることを予想している。ユーザーたちは、何かしらスポーツイベントの直前にサービスに加入するのが一般的だ。DAZNにとってのゴールは、イベント後も彼らをキープすることにある。

「スポーツ分野に注がれる情熱は非常に大きく、エンゲージ度も高いけれども、新聞やNeteflix(ネットフリックス)、Spotify(スポティファイ)のようなレベルのデジタル革命はまだ起きていない。DAZNにおいては、CEOから一社員に至るまで、すべての従業員の一番の目的がデータだ。データにさらに近くなる、という文化を作っているところだ」と、サブスクリプション・ソフトウェア企業、Zuora(ズオラ)がロンドンで先週主催したイベントでヘイ氏は語った。

UX向上が至上命題

スポーツ放映の権利は、地域や長期間に渡って切り取られるため、DAZNが提供するコンテンツは、マーケットごとに異なる。初期にローンチされた日本マーケットではMLBの権利が大きな役割を果たした。ドイツではサッカー、カナダではNFLといった具合だ。DAZNはユーザーの視聴方法、デバイス、ロケーション、そして視聴前後の行動に応じて13の異なるグループにカテゴライズし、新規顧客獲得、そしてアプリ内の誘導などをカスタマイズしている。たとえば、イタリア・ミラン地域でA.C.ミランの試合3日前にサービス加入したユーザーの場合、おそらくA.C.ミランのファンであると考えられる。そのため、このユーザーのトップページは、A.C.ミランのトレードマークである赤と黒の色調でカスタマイズされる、といった具合だ。

去る9月、イタリアでのローンチの前、DAZNは大きな試合の直前、毎秒、毎分ごとにどのように登録者数が増えるかというデータを集めていた。登録数はキックオフの30分前までは一定で、30分前になって爆発的に伸びるということが分かった。デジタル・ストリーミングサービスたちは技術的な問題に直面した。Amazonですら、USオープンのストリーミングを改善する必要があるとして批判された。DAZNは登録者数のデータを参考にして、オーディエンスをうまくさばくためのストラクチャーをイタリア向けに構築することができた。

「これが我々を危機から救ってくれた」と、ヘイ氏は言った。

デザイナーたちの工夫

DAZNはまたログイン失敗についても分析をしている。3カ月という期間を持って、特定の地域でログイン失敗の情報を集めた。500万回の失敗したログインの試みのうち、直後にすぐにログインができたのは約300万件だった。残りの約200万件のログイン失敗のうち、パスワード変更へと進んだのはたった10%で、約180万件はログインを諦めてしまった。DAZNはこれに対して、バックエンドの再構築でも対応しつつ、加入プロセスの段階でも後にこういった事態が起きにくくなるように何らかの手段を加えようとしていると、ヘイ氏は言う。

スポーツが下火になる夏にユーザーたちが解約するのを防ぐために、DAZNは解約プロセスのなかに「一時利用停止」の機能を導入した。ヘイ氏によると、この機能の導入前と比べると、利用再開者の数は、140%増加したとのことだ。

試合が退屈になったときにもエンゲージメントをキープするために、DAZNのユーザー体験デザイナーたちは工夫をこらしている。Facebook上でユーザーたちが試合についてコメントを交わすのと同様に、他のファンからの情報を取り入れることでユーザーたちのやり取りを促進している。

いまは細分化の時期

DAZNは新規マーケット参入と、既存のマーケットをさらに深く掘り下げるという、ふたつのゴールをうまくバランスをとらないといけない。他の放送局と比べると、DAZNには強いデータ分析能力が存在している。しかし、それはFacebookやAmazonも同様だと、デジタル・スポーツ・コンサルティング企業セブン・リーグ(Seven League)のシニア・コンサルタントであるチャーリー・ビール氏は指摘する。

「いまは放映権の細分化の時期となっている。そして、将来にはまた再統合、再構築が起きるだろう。DAZNは権利獲得のためには、しっかりとした提案が出来る必要がある。Amazonが持つ予算は極めて大きい」と、ビール氏は言う。

Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)