「データがすべて」: Netflix のマーケティング大戦略、そして恩恵をうけるプログラマティック

マーケティングを広告エージェンシーにあまり頼らず、自社で行おうという気概を持つブランドは少ない。そんななか、Netflix(ネットフリックス)は数少ない例外のひとつだ。同社は今年、自社で行うものも含めて約13億ドルから約20億ドル(約1400億円から2200億円)までマーケティング予算を増やしている。今年、同社がコンテンツに投じる費用はおよそ80億ドル(約8800億円)となっており、2018年だけでもNetflixが製作予定のオリジナル映画は約80タイトルにものぼる。

Netflixはマーケティング戦略について明かすのを拒んだが、アナリストやエージェンシー幹部らは、Netflixのマーケティング予算の増大は同社のコンテンツ戦略と歩調を合わせていると考えている。またNetflixの広告費用の大半はプログラマティック広告を主とするデジタルに加えて、アーンドメディアを生みだすためのオフラインのイベントにも投じられるだろうとの見方が強い。また、同社がメディアバイイングの大半を自社で行っているのは知られている一方で、NetflixはメディアエージェンシーのMECを主要なメディアショップとして活用しているという。

「Netflixはパフォーマンスマーケティングを主としている。同社にとってはデータがすべてであり、これによってNetflixは客観的なマーケティングを行っている」と指摘するのは、調査会社ピボタルリサーチ(Pivotal Research)でシニアリサーチアナリストを務めるブライアン・ウィーザー氏だ。同氏は、「Netflixは増やしたマーケティング予算の大半をデジタルメディアに投じると考えている。だが忘れてはいけないのは、Netflixが成長しているのは海外での躍進によるということだ。だからマーケットごとにさまざまな(メディアバイイング)の選択が行われるだろう」と語る。

投資を増やす分野

Netflixが投資を増やす可能性が高いのはプログラマティック広告の分野と思われる。昨年4月のNetflixの株主への報告書には、10億ドル(約1100億円)を超えるマーケティング関連の支出のうち、プログラマティック広告への投資を増やしており、「個別のマーケティングを大規模に行い、適切な相手に適切な広告を適切なタイミングで届ける」能力を伸ばすことを目標にしていると記載されている。匿名を条件に語ったとある大手アドエクスチェンジによると、過去3年のNetflixによるアドエクスチェンジへの投資額は全ブランドのなかでも十指に入り、同社の動向を見る限り、今後もその位置は変わらないだろうとのことだ。また、Netflixはプログラマティックなメディアバイイングでは、主にGoogleの「DoubleClick Bid Manager(DBM)」を使用しているという。

もちろん、Netflixはプログラマティック広告を社内チームで運用し続けるだろう。ベイエリアを拠点とするこのチームのメンバーには、広告ホールディングス世界最大手WPPや、フランスの大手広告企業ピュブリシス(Publicis)に勤めていた社員も複数含まれている。インデックスエクスチェンジ(Index Exchange)でビジネス開発部門のバイスプレジデントを務めるウィル・ドハーティ氏はこれについて、プログラマティック広告の契約を監視するブランドが増えるなか、Netflixは技術力があるため社内で対処できているのだと指摘し、次のように分析している。

「Netflixはコンテンツ群を維持する必要があるだけでなく、自社のプラットフォーム上で、さまざまなデバイスを利用するユーザーごとに関連コンテンツを勧めている。いずれも高い技術力が求められる内容だ。それに比べればプログラマティック広告はさほど技術的に難しいわけではない。これがもしもキャンディーを販売しているマーケターであれば、こうした技術インフラに馴染むのは難しかっただろう」。

エージェンシー利用も

Netflixの実践的なアプローチはプログラマティック広告だけにとどまらない。技術を中核に求められるストリーミングサービス企業である同社は、独自のマーケティングモデルを作り上げ、内部データも自社で処理している。ウィーザー氏によると、そのため通常メディアエージェンシーはブランドのメディア戦略計画も立てるのだが、Netflixについて担当するのは多くの場合キャンペーンの実施のみとなっているという。「Netflixは自社では効率的にできない仕事のみメディアエージェンシーに依頼している。たとえばテレビCMや屋外広告(OOH)の購入などだ」と同氏。

また、Netflixはクリエイティブについても自社でこなすことがある。メディアエージェンシーのリップルコレクティブ(Ripple Collective)で最高クリエイティブ責任者を務めるロバート・グリーン氏も、Netflixの広告キャンペーンを担当したひとりだ。同氏によると、Netflixは自社で広告を担当するマーケターのグループがある珍しい企業だという。「一般的なのは、純粋にクリエイティブの仕事をこなすグループだ。だがNetflixでは、キャンペーンづくりを支援しつつ、その段階からすでにキャンペーンで結果を出すために尽力するグループが社内に存在している」と同氏。

また、「ほかにも、変わりつつあるとはいえ、キャンペーンの大半はNetflixのプラットフォーム上で行われているのも同社特有だ。補完する形で屋外広告も出しているが、それを除けば、ほかのメディアバイイングは非常に少ない」という。

観てもらうことが大事

Netflixはオリジナル映画の製作を増やそうとしている。グリーン氏はこれについて、同社は映画宣伝のため、ほかの映画スタジオと同じようにテレビCMや屋外広告、デジタル広告を増やす必要が出てくるだろうと分析する。アメリカのエージェンシー、ドイチュ(Deutsch)でエグゼクティブバイスプレジデント兼メディアディレクターを務めるローレン・テトゥアン氏は、パフォーマンスマーケティングを主とするNetflixについて、これまでも、そしてこれからも、ソーシャルメディアからイベントマーケティング、オフラインの展示まで、幅広いオーディエンスにリーチするため革新的なマーケティング戦略を生みだしていくだろうと考えている。

「Netflixは新規コンテンツで視聴数を稼ぐことで、新しい会員を呼び込み維持しようとしている」とするテトゥアン氏は次のように語った。「同社のライバルは、いまやHuluをはじめとするストリーミングサービスだけにとどまらない。大手の映画スタジオもライバルなのだ。だからオリジナルコンテンツを増やし、観てもらうことが同社の計画の大きな軸のひとつと言えるだろう」。

Yuyu Chen(原文 / 訳:SI Japan)