BUSINESS OF TV

「 スマートテレビ は、あらゆる分野からシェアを奪った」: 今年、広告シェアを大きく伸ばしたスマートテレビ

いまだに広告業界では、従来型のテレビCMへの支出が大きな割合を占めている。だが現在、スマートテレビがそのシェアを奪いつつある。あるエージェンシー役員は、「スマートテレビはあらゆる競合分野からシェアを奪っている。従来型テレビはもちろん、従来型のオンライン広告もそうだ。それは今、スマートテレビが注目を集めているからで、注目を浴びるところに金は集まる」と語る。

これまでも従来型のテレビから動画配信プラットフォームへとオーディエンスが移っていき、それに伴い広告支出のシェアは移り変わってきた。だが、今年はそのペースがさらに加速しているようだ。動画配信の視聴数が急増したことで広告枠もまた増加した。さらに販売側が高騰していた広告価格をある程度抑えたことで、広告資金が一気に流入することになったのだ。

米国ではアップフロントと呼ばれる広告インベントリーの前売りが一般的に行われている。業界関係者によれば、2019年は各社のこのアップフロント予算のうち、動画配信インベントリーに割かれていたのは20%程度だったという。これはAmazonやロク(Roku)、テレビ局、YouTubeなどのオンライン動画プラットフォームを含んだ数字だ。だが2020年にはこれが25%にまで急増している。動画への広告支出の割合をさらに高めている広告主は少なくない。たとえば今年、複数のエージェンシー役員が、クライアントのアップフロント予算のうち30%を動画配信に向けたと明かしている。

「誰もがメリットを享受している状態」

ただし、従来型のテレビから動画配信へとシェアが移っているとはいっても、テレビネットワークの広告収益が大きく減っているわけではない。ディズニー(Disny)やFOX、NBCユニバーサル(NBCUniversal)、バイアコムCBS(ViacomCBS)といった米国の大手テレビネットワークは、ここ数年で動画配信への取り組みを進めてきた。こういった各社もまた、従来型テレビから動画配信へと移行していくトレンドに危機感を抱いていたためだ。

「動画配信サービスはテレビネットワークに恩恵をもたらしたとも言える。動画配信の視聴数は急増しており、広告主はそれに飛びついた」と、あるエージェンシー役員は語る。

Amazonやロク、YouTubeといった動画配信サービスに資金は流入しているのだが、テレビネットワークもまたアップフロント予算を維持しているのだ。

あるエージェンシー役員は「スマートテレビ市場は全体的に成長を続けている。ほかのチャネルの予算を奪っているわけではない」と語る。

「動画配信へ流入している資金はあまりにも莫大で、誰もがメリットを享受している状態だ」。

価格引き下げの効果も絶大だった

Amazonとロクは、動画配信プラットフォームで独自のユーザーデータを使ったターゲティングを行っており、広告主の獲得を後押ししている。また、毎月20億人以上のユーザーがログインするYouTubeは、テレビをあまり視聴しない視聴者にリーチできる手段として人気を集めている。だが、エージェンシー役員らは、YouTubeの動画とテレビではコンテンツの質が異なると指摘する。だが、「動画配信サービスのみを展開しているプラットフォームであるYouTubeやロク、Amazonの受けている恩恵は、とりわけ大きいだろう」というのが前述の役員の見解だ。

とはいえ、広告主の予算にも限りがある。その意味では動画配信サービスは、ほかのチャネルから資金を奪っているわけだが、その被害を受けているのは主にオンラインのディスプレイ広告や印刷媒体のメディアのようだ。「今年は異常な年だったが、クライアントは動画広告の予算は維持しようと努めていた。そのなかでも動画配信プラットフォームを重視するところは多かった。一方、大きく減ったのはプログラマティック広告、ディスプレイ広告だ」と、エージェンシー役員は語る。

新型コロナウイルスによるロックダウンで誰もが家に閉じこもるほかなく、動画配信の視聴数は激増した。それに伴い動画配信に資金が流れ込んだのも当然と言えるだろう。コムスコア(Comscore)によると、米国では2020年7月時点で、3700万世帯がスマートテレビでテレビ番組や映画を視聴している。これは前年比で16%増だ。

視聴者が急増すれば、当然ながら動画配信のインベントリーも増える。それに伴い、今年のアップフロントでは動画広告が平均で5~10%ほど安い価格に設定されていたという。「この引き下げの効果はかなり大きかった」とエージェンシー役員は語る。

当然、解決すべき問題もある

このように大量の資金が流入している動画配信市場だが、スマートテレビ広告にも解決すべき問題がある。エージェンシー役員らはフリークエンシーの管理と測定が大きな課題として残されていると口をそろえる。

実際、ディズニーバイアコムCBSロクといった企業は、今年のアップフロントに向けてフリークエンシー管理対策を発表してきる。だがそれもウォールド・ガーデン(壁に囲まれた庭)のなかで行われる対策だ。エージェンシー役員は「さまざまなマーケットプレイスがフリークエンシー管理サービスを宣伝してきた。だがこの問題はいまだに解決していないように思える」と語る。

確かに、たとえばロクの広告購入プラットフォーム「ワンビュー(OneView)」では、ロクが販売するインベントリー以外についてもフリークエンシー管理が可能だ。だが広告主は、外部の場合は購入情報を提供しなければならず、ロク側にとって優位な取引に結びつく可能性が指摘されている。「ロクはメディア販売を行っている立場であり、かなり気になる点だ」と、エージェンシー役員は語る。

さらに配信コンテンツで流す広告の測定方法についても課題が残されており、ニールセン(Nielsen)がロクとHuluのインプレッション測定を試験的に運用している。また同社は来年からYouTubeのスマートテレビのインプレッション測定も実施する予定だ。だがエージェンシー役員らは、これについても、広範囲のエコシステム全体ではインプレッション情報が得られないと指摘する。さらに、従来型テレビの広告主は、どの番組でキャンペーンが行われたかを正確に把握できる一方、Huluなどの動画配信サービスでは番組ジャンルごとの情報しか得られないというケースが多い。

エージェンシー役員も、「測定機能と測定基準の欠如は、今後の課題だ。テレビ業界よりも透明性が欠如している」と指摘する。

だが、従来型テレビのオーディエンスが減り、動画配信のオーディエンスは増えているのは確かだ。だからこそ、こういった課題があっても、なお広告主の資金が集まっている。「フリークエンシー管理と測定の課題があるから広告を出さないほうが良いとは思わない。だが、業界として、より優れた測定機能を実装し、効率化をはかるべきだ」と、エージェンシー役員は語る。「現状でも資金が流入しているなか、この課題が解決すればどれほどのトレンドが生まれるかを考えるべきだろう」。

[原文:‘CTV took from everybody’ How connected TV won this year’s upfront

TIM PETERSON(翻訳:SI Japan、編集:長田真)