「彼女はやり遂げる」: クリテオ が事業再建を託す、元ニールセン社員の人となり

フランスに拠点を置く企業クリテオ(Criteo)は、長年にわたって上場アドテク企業たちに愛されてきた。リターゲティング広告界の象徴的存在である同社は、そのパフォーマンス型広告プラットフォームにリテーラー勢が広告費を注ぎ込むなか、同業他社を常に大きく引き離していたのだ。

ところが突然、クリテオはいわばクッキー型のスピードバンプにぶち当たった。AppleとMozilla(モジラ)が自社ブラウザにおける広告トラッキングを厳しく制限する動きを見せており、さらには新たなプライバシー保護条例――EU一般データ保護規則(GDPR)や、間もなく施行されるカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)を含む――により、消費者の個人データをこれまでほど自由には扱えなくなったからだ。

そこでクリテオは近年、リターゲティングへの依存を減らすための新たなプロダクト群を発表しており、2019年10月30日には、米大手調査会社ニールセンのチーフコマーシャルオフィサー、ミーガン・クラーケン氏を新チーフエグゼクティブに任命し、変革の次なる段階の舵取りを任せることを発表した。

「大きな力になってくれる」

クラーケン氏はニールセンに15年勤続しており、米メディア企業ニューズ・コーポレーション(News Corp)と、コンテンツデリバリネットワーク事業およびクラウドセキュリティ事業を提供する米企業アカマイ・テクノロジーズ(Akami Technologies)に勤務した経歴も持つ。クリテオ入社は11月25日で、氏はそれに合わせて米国からパリに転居する。ニールセンには今年、クラーケン氏の後任を雇用する予定はない。

10月30日に行なわれたクリテオの第3四半期アーニングコールにおいて、社交的なCEOにして共同創設者のジャン-バティスト・リュデル氏はクラーケン氏について、「変革に関する経験が豊富であり」、より多くのパートナーシップ確立の大きな力になってくれると語った。

「ミーガンは効果測定エコシステムとの適切なパートナーシップ確立に寄与してくれると思う。そしてそれはきわめて有益だと考えている」と、リュデル氏はアーニングコールで断言した。今回、リュデル氏とクラーケン氏のいずれからもコメントは得られなかった。

クラーケン氏のキャラクター

ニュージーランドでの学生時代、クラーケン氏は陸上競技界のスターだった。走り幅跳びの選手として1988年ソウル・オリンピックにも出場したが、怪我のため引退を余儀なくされた。その後、スポーツへの意欲は仕事への情熱へと形を変えた。「彼女がオリンピック選手だったことには理由がある」と、アドヴァンスドTV広告企業サイマルメディア(Simulmedia)のCEOデイヴ・モーガン氏は語る。「彼女はやり遂げるんだ」。

10年以上にわたりニールセンと肩を並べて仕事をしてきたモーガン氏は、クラーケン氏を人好きのする、頭の切れる「やり手」と評する。クラーケン氏は実際、ニールセンがハードウェア/リサーチ会社からソフトウェア/データに注力する効果測定企業へと変容するなか、当初のプロダクトマネジメント業務から商業部門を牽引する存在にまで実力でのし上がった。

「ニールセンはもともと市場に優しい企業ではなかった。市場に支配的地位を有する会社であり、その姿勢は『手に入るもので我慢しろ、文句を言うな』という強気なものだった」と、モーガン氏。「そんななか、彼女はパートナーの必要性に気づいたんだ」。

クリテオが置かれた現状

現在、クリテオは重要な岐路に立たされており、クラーケン氏は主要広告主の需要と株主の信頼を再構築しなければならない。クリテオの株価は2014年の60ドル(約6500円)弱から、この記事の執筆時点(2019年10月30日)で、取引値17ドル(約1850円)前後にまで急落している。2019年度の収益予想は下方修正された。第3四半期の収益(トラフィック獲得コストを除く)は前年比1%減の2億2100万ドル(約241億円)、修正後純利益は2%減の3500万ドル(約38億円:非修正基礎額は15%増の2100万ドル[約22億円])だった。

クラーケン氏には、リターゲティング以外の新たな広告プロダクト群による大手マーケター勢の迅速な獲得が求められており、それにはたとえば、これまでの基本だったCPCモデルではなくCPIやCPMベースで課金するプロダクト「ウェブ・コンシダレーション(Web Consideration)」や、リテールメディア事業が含まれる。テレビ関連の効果測定に精通する大手企業に長年務めた経歴を持つだけに、クラーケン氏には誕生間もないアドヴァンスドTV広告スペース――「クッキーの死」の衝撃から広く守られている――への進出の一助となることも期待されている。

人気ストリーミングプラットフォームを提供する米企業ロク(ROKU)が2019年10月第4週にアドテク企業データックス(DataXu)を1億5000万ドル(約163億円)で買収した事実からも明らかなとおり、現在アドテク勢はいずれも、いわばアドヴァンスドTVスペースのGoogleを目指している。リュデル氏は先のアーニングコールにおいて、クリテオは現在、この領域の「瀬踏み」をしている段階であり、アイデンティティ解決に精通する企業ライヴランプ(LiveRamp)とのパートナーシップを通じ、ターゲティング広告に同社のオーディエンスアイデンティティプロダクトを使用していると、発言した。

「なぜ、いまなのか?」

リターゲティングの一芸しか持たなかった小企業クリテオの事業拡大は、いまだごく初期の段階にある。実際、リュデル氏自身も経営立て直しのため2018年4月にCEOに再就任したばかりだ――これは2016年にエグゼクティブチェアマンに戻って以来、2度目の復帰となる。

米投資銀行サントラスト・ロビンソン・ハンフリー(SunTrust Robinson Humphrey)のデジタルエンターテイメントおよびデジタルマーケティング向けエクイティリサーチ部門ディレクター、マシュー・ソーントン氏は、クリテオの新CEO任命に関する最大の疑問のひとつは「なぜ、いまなのか?」だと指摘する。

「株価はきわめて低く、[クリテオは]現金を生み出しており、収益性があり、大規模で優良なクライアントベースを有している。何らかの価値があるのは明らかだ」と、ソーントン氏。「[しかし]我々にはいまだ、今後上向きに転じる証拠も復活の兆しも一切見えていない」。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:SI Japan)