新型コロナ の影響で、さまざまな重圧がかかる eコマース 勢 : 売上拡大と商品不足

デジタル広告およびオンラインリテール勢は現在、新型コロナウイルスが引き起こした物流問題および商品不足への対応に追われている。

感染が拡大を続けるなか、経済への影響は広範に及ぶ可能性もあり、中国の巨大消費力に大きく依存する企業の業績下方修正や店舗の閉店、信用破綻にもつながりかねない。ただし、このアウトブレイクに起因する消費者心理の変化の恩恵を受けたと思われる企業もある。

中国における新型コロナウイルスのアウトブレイク直後、自宅に缶詰状態のeコマースショッパーがこぞってオンラインを利用したため、eコマース勢にとっては思わぬ好機が生じた。

eコマース勢に思わぬ好機

テンセント(Tencent)グループの一員、JD.comは2月2日までの10日間で生鮮食品の売上を215%伸ばし、その総量は15000トン近くに達した。

今回のアウトブレイクはまた、家族のウイルス感染を懸念する潜在的eコマースショッパーによるオンライン購入の急増も生んだ。免疫力強化を謳う商品はその典型であり、たとえば英医薬品/日用品メーカー、レキットベンキーザー(Reckitt Benckiser)傘下のブランド、デトール(Dettol)の消毒薬製品は、2月10日から2月13日にかけて、中国のeコマース企業スンニ・コム(Suning.com)において前年比643%増を記録した。

「各社が製造する商品ジャンルによって、状況は大きく変わってくると、我々は予想している。たとえば、玩具、ベビーケア用品、パーソナルケア用品、家庭用掃除用品などは、過度に中国で製造されている」と、eコマースにフォーカスするアドテクベンダー、レヴトラックス(RevTrax)のCEOジョナサン・トレイバー氏は語る。 「これに対し、食品をベースにした多岐にわたるコンシューマーグッズの場合は、一般に、製造地は広範な地域に及んでいる」。

商品供給が追いつかない

ただし、オンライン注文の急増はそれに対応する企業側に過剰なプレッシャーも与えている。実際、eコマース事業そのものが転覆させられかねない、との恐れを抱いているところもある。

プロクター&ギャンブル(P&G)の幹部勢は2月第4週、コロナウイルスは同社のeコマース事業を圧迫していると明かした。同社の商品を販売する店舗の多くが閉店/短縮営業を余儀なくされ、売上が減少するなか、多大な需要がオンラインに移行していると、P&Gのチーフファイナンシャルオフィサー、ジョン・ムーラー氏はコンシューマー・アナリスト・グループ・オブ・ニューヨーク(Consumer Analyst Group of New York)の会合で述べた。氏いわく、需要はあるが、商品の供給が追いつかないという。

「事態は刻一刻と変化しており、言うまでもなく、感染経路は不明だ。したがって、影響の正確な予測は困難を極める」と、ムーラー氏は述べた。

また、中国各地における隔離政策の結果、輸送路に深刻な分断が生じており、注文対応の現場である倉庫の従業員も勤務できない状態が続いている。

メディア支出の縮小と機会

コロナウイルスに対する恐怖から中国の一部地域での広告購入を控える広告主もおり、そのためWeChat(微博)といったプラットフォームでキャンペーンを張りつづける広告主にとっては、競争緩和が生じている。

たとえば、デジタルエージェンシー、ロースト(Roast)のクライアント数社は、感染拡大地域におけるオンラインメディア支出を一時的に停止、あるいは大幅に縮小した。

一方、自動車業界はこの機会に飛びついている。メルセデス・ベンツはWeChat上でキャンペーンを展開しており、同アプリを介して、新型コンパクトSUV、GLBの車内を360°見られるようにしている。また、中国の自動車メーカー、吉利(ジーリー)は先頃、自動車のオンライン販売および宅配サービスを導入した。

2003年のSARS騒動を踏まえ

この混乱は、中国随一の時価総額を誇る企業にも打撃を与えている。アリババ(阿里巴巴)CEOダニエル・チャン氏は2月前半、新型コロナウイルスのアウトブレイクによって生じた注文処理/商品配送の支障により、中核であるeコマースビジネスの売上低下が予想されると、投資家らに伝えた。

こうした混乱が小売業者/顧客に打撃を与えた事例は、今回がはじめてではない。いまから遡ること20年弱、2003年のSARS騒動はアリババとテンセントの両者にとって大きな転換点となった。当時、eコマースは現在ほど発達していなかったが、SARSの大流行により、大多数の中国サプライヤー勢がわずかに残った実店舗での販売を余儀なくされるなか、多くの消費者が閉店を免れたオンラインプラットフォームに目を向けた。

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)