オンライン動画は、かつてないほどよい時代を迎えているが、それなりの課題を抱えている。
業界人に匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、オンライン動画で稼ごうとしているインフルエンサーと実業家が年に1回集まる「ビドコン(VidCon)」で、オンライン動画の幹部やパーソナリティに、考え出すと夜眠れなくなるほどの悩みのタネについて尋ねた。
オンライン動画は、かつてないほどよい時代を迎えているが、それなりの課題を抱えている。
業界人に匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、オンライン動画で稼ごうとしているインフルエンサーと実業家が年に1回集まる「ビドコン(VidCon)」で、オンライン動画の幹部やパーソナリティに、考え出すと夜眠れなくなるほどの悩みのタネについて尋ねた。
わかりやすくするために回答を少し編集している。
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テレビとデジタルパブリッシング事業のベテラン幹部:
この業界は厳しい業界であり、オンライン動画には最高に素晴らしいと言えるようなビジネスモデルがない。それなのに、多くの企業には長丁場に向けて仕事をしていくスタミナも忍耐力もない。オンライン動画は3~5年かかる市場であり、いますぐ結果の出る市場ではない。1年で大きな利益を得ようと考えるのは間違っている。ベライゾン(Verizon)がストリーミングサービスの「ゴー90(go90)」からどれくらい手を引かずに我慢できるか、見ているがいい。ユーザーの行動を変えるのは簡単なことではなく、ユーザーの習慣には、マネタイズがお粗末なプラットフォームがすでに根付いている。
デジタルスタジオの幹部:
先月はFacebookでの視聴数が10億回になったという人、10人に会った。10億回という数字が突如、価値のないものになったわけだ。あそこの視聴数はYouTubeのものと同じものなのか。おそらく違う。何が本当で何がそうでないのか、奇妙な感覚になる。
デジタルパブリッシング事業のベテラン幹部:
この業界は何が本物で何がニセ物なのかを普通の人が区別するのが難しい。ほとんどの場合、そのためのシステムが実際にはその目標とは反対の働きをする。パブリッシャー側では長年、複数のサイトをひとつにまとめてコムスコア(comScore)の調査対象とすることができた。報道はそのことを無視して、Viceのトラフィックが減少したと報じるだろう。減ったのではない。サイトがひとつなくなっただけなのだ。
テレビではそんなことはない。ニールセン(Nielsen)はたくさんの欠点があるが、番組へのトラフィックを買って視聴者を増やすことはできない。オンラインでは、動画を制作していくらかのお金を使うと、最大級の動画になったと喧伝することができるのだ。ダブ(Dove)は500万ドル(約5億円)を使って「リアルビューティ」の最初の広告を世に出した。 素晴らしい広告で人々の目を引いたが、まったくのオーガニックだったわけではない。
YouTubeの大手ネットワークの幹部:
イノベーションが起きないのは我々がみな未熟だからだ。この業界の才能ある人々は、信じられないくらいプロ意識が欠けている。才能がないわけでも、よいモチベーションがないわけでもないのだが、既成のメディア企業やブランドと一緒に仕事をするにはどうすればよいのかを理解するまでには至っていない。すべてを自分の寝室で自分の力で作ってきたので、納期を厳守し、やると言っていることをきちんと実行する必要があることをわかっていない。そのため、仕事をやり遂げるのが信じられないほど難しく、これが理由で不快な経験をしたブランドは、我々に予算を使うことをますますためらうようになってしまう。
YouTubeの小さなネットワークの幹部:
視聴数とは何なのか、標準料金表とはどのようなものなのか、価値とは何なのかに関する基準がない。使っている計算式や製品がみんなバラバラなので、買い手が混乱することになる。
YouTubeの大手ネットワークの幹部:
MCN(マルチチャンネルネットワーク)にせよ、もっと小さなインフルエンサーのエージェンシーにせよ、我々の世界には自分は誰でも動かせると言う人がいる。契約関係による説明責任というものがない。大手エージェンシーのウィリアム・モリス・エンデバー・エンターテインメント(William Morris Endeavor Entertainment:WME)が、同じく大手エージェンシーであるクリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー(Creative Artists Agency:CAA)側のクライアントを紹介できるとキャスティング責任者に主張するようなことは決してないだろう。この問題で広告主が本当に混乱している。
これを止める方法のひとつは、ある意味冗談なのだが、契約を徹底することだ。私が誰かと独占契約を結んだとしよう。ネットワークのフルスクリーン(Fullscreen)がその人物に仕事を持ち込み、その人物が勝手にその仕事をした場合、私はその人物を訴えることができる。しかし、それがビジネスにプラスなのかというと、答えはノーだ。互いにもっと敬意を持つようになるまでは、我々はクソをつかんで壁に投げつけている子供にすぎない。
映画とテレビのベテラン幹部:
私がエンターテインメント業界で出世したのは、仕事の後でお金が支払われていた時代だ。いまの若い労働者は、「それをやって欲しいの? まずお金を払ってよ」という気持ちでいる。私は30年間で4つの職を経験した。私が知っている28歳と30歳は、1年間に1万ドル(約100万円)多い条件を提示されたという理由で6つの職を経験している。オンライン動画にはそのように、楽に稼げるという感じがある。だからたくさんの会社が問題のある前提に基いて設立され、問題のある人々をアサインして仕事をしてもらうことが必要になった。
チャンネル登録者数300万人の有名ユーチューバー:
まともに相手をしてもらえないことがある。我々のような人間は、自分自身がひとつの企業みたいなもので、何もかも自分でやっている。一方、従来の俳優は、たしかにたくさんの仕事をしているが、はるかに大きなチームが周りにいるじゃないか。だから、私が働き者ではないという話をたびたび耳にするのは、何だか笑える。
Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)