コムスコア と ニールセン 、白熱するライバル関係:真の クロスプラットフォーム 測定プロバイダーは?

サンタクロースはいない。もしサンタクロースがいたら、広告主とメディア企業はいまごろ、完全なクロスプラットフォーム測定製品を手に入れているはずだ。

「あらゆる場所に当てはまる、ひとつの方法によって定義された、すべてを支配するインプレッション」と、グループ・エム(GroupM)で実装研究と市場分析の責任者を務めるエド・ガフニー氏は表現する。「残念ながら、そのようなものは存在しない」。

業界幹部たちは、少なくとも真のクロスプラットフォーム測定に近い何かは実現可能だという希望を抱き続けている。しかし、これは根拠のない希望だ。クロスプラットフォーム測定プロバイダーの業界トップを巡る、コムスコアとニールセンのライバル関係は、数年かけて1周したあと、再びヒートアップしている。2018年、両社は広告業界のベテランをCEOに指名。コムスコアはブライアン・ウィーナー氏、ニールセンはデイビッド・ケニー氏だ。そして、それぞれを悩ませてきた大失敗を乗り越えようとしている。

両社の新測定ツール

2019年、両社は新しい測定ツールの発表を計画している。番組や広告を見ているのが従来型のテレビでも、ストリーミング動画サービスでも、広告主やメディア企業がプラットフォームをまたいでオーディエンスを把握できるツールだ。

コムスコアは2018年9月、広告主が従来型テレビ、コネクテッドテレビ、デスクトップ、モバイルの動画広告配信を測定できる「キャンペーンレーティング(Campaign Ratings)」を発表。コムスコアのウィーナー氏によれば、2019年第1四半期にはメディア企業向けの測定製品を発表し、同様の手法で動画コンテンツ配信を測定できるようになるという。一方、ニールセンの製品リーダーシップ担当シニアバイスプレジデント(SVP)、ケリー・アブキャリアン氏は、「トータルコンテントレーティング(Total Content Ratings)」製品のデータを広告バイヤーに配信する計画だと述べている。トータルコンテントレーティングは、従来型テレビとデジタルの動画視聴率を測定するツールだ。

このふたつの製品は、異なる経歴を持つ、ふたつの測定企業が真っ向からぶつかり合うことを示唆している。ニールセンは従来型テレビ、コムスコアはデジタルの世界で勝負してきた企業なのだ。

「クロスプラットフォーム測定の世界では、伝統的な測定の側面から見れば、事実上、コムスコアとニールセンしか選択肢はない」と、オムニコム・メディア・グループの最高調査責任者ジョナサン・シュトイアー氏は語る。「彼らは正反対の方向からスタートし、クロスプラットフォーム測定はその中間点に位置する。中間点にたどり着いた者はまだいない」。

中間点を目指して

両社は互いの領域で力を獲得しようと競い合っている。コムスコアに求められるのは、ニールセンのパネルが提供している人ベースの詳細な測定。一方、ニールセンはより多くのデータを集めてパネルを強化し、デバイスレベルで詳細な測定を提供しなければならない。

「何かを起こそうと、列を成している状態だ」と、シュトイアー氏は話す。

そうしなければならないのは、その必要があるためだ。NBCユニバーサル(NBCUniversal)からBuzzFeedにいたるメディア企業は長年、サードパーティの測定プロバイダーはコンテンツのリーチを適切に評価できないと主張してきた。その大きな理由は、プラットフォームやサイトがどんどん増加し、コンテンツがオンライン上で散らばっていることだ。同様に、誰がどこで広告を見たかを広告主が知るには、さまざまなプロバイダーの測定を総合し、独自に計算するしかない。

メディア企業とマーケターは業界の弱点に率直で、新しいプラットフォームが次々と現れるため、動く標的に的を定めようとしているようなものだと認めている。また、コムスコアとニールセンが企業として困難に直面しており、それが測定事業の妨げになっている可能性があることも認識している。コムスコアは会計問題を抱えておりニールセンは投資家からEUの一般データ保護規則(GDPR)関連の訴訟を起こされている。さらに、両社とも経営陣が入れ替わったばかりだ。両社とも「中間点を目指して20%移動し、失速してしまった」とシュトイアー氏は話す。

少しずつの前進を示唆

電通イージス・ネットワーク傘下の360iで13年にわたってCEOを務め、その後、執行役会長を経験したコムスコアのウィーナー氏は「自らに課した苦難と財務上の不正が原因で、何も起こらない状況が長年続いていた」と述べている(デジタスのCEOだったニールセンのケニー氏にも取材を申し込んだが、本記事の締め切りに間に合わなかった)。

とはいえ、クロスプラットフォーム測定の改良がまったく進んでいなかったわけではない。たとえば、コムスコアとニールセンは現在、オーバー・ザ・トップ(OTT)の動画視聴も測定の対象にしている。

ピュブリシス・メディア(Publicis Media)のSVPとして、データサイエンスのためにデジタルマーケットプレイスの情報収集を行うエリック・キャバノー氏は「もちろん徹底的、包括的とは言い難いが、2017年には見られなかった状況になっている」と話す。

ストリーミング動画測定の進歩は、パネルベースの測定からの脱却といった大きな変化ではなく、少しずつの前進を示唆している。業界幹部たちが2019年のコムスコアとニールセンに期待するのはそれだ。グループ・エムのガフニー氏は「まったく違うものへの変化は、金銭的な負担と流血を伴う革命のようなものだ」と表現する。

「パネルを信頼している」

革命のような変化が起きる可能性は低い。コムスコアもニールセンも上場企業であり、急激な動きは投資家に受け入れられない可能性があるためだ。おそらく広告バイヤーにもあまり歓迎されないだろう。

ピクセルの追跡などによってデジタルコンテンツや広告を直接的に測定するという理由で、パネルはしばしば冷笑の対象にされるが、コードには収集できない情報を集めることができる。年齢や性別を把握したり、個人が消費するコンテンツの点と点を結んだりといったことだ。「大量の世帯データをモデル化するにはパネルが必要だ」と、ガフニー氏は話す。

コムスコアもニールセンもパネルベースの測定を廃止するつもりはないようだ。

「我々はパネルを信頼している」と、コムスコアのウィーナー氏は説明する。「あなたが言及しようとしている企業と我々のもっとも大きな違いは、我々はデータを第一に考え、データセットに情報を与える目的でパネルを利用している点だ。パネルを中心に置き、その周辺でデータを利用するやり方とは違う」。

ニールセンのアブキャリアン氏は「パネルは今後も測定を支え、真理集合であり続けるだろう」と話す。同社はコンテンツの自動認識を専門とするグレースノート(Gracenote)を買収し、ケーブルテレビのセットトップボックスやスマートテレビからのデータ収集を強化している。しかし、ケーブルテレビの契約を解除する人が増えているため、視聴者数の予測においてはやはり、パネルが「重要な役割」を果たしているとアブキャリアン氏は述べている。

イースター・バニーもいない

コムスコアとニールセンのアプローチの違い、両社がそれぞれの限界を超えるために必要な作業を考えると、どちらかが真のクロスプラットフォーム測定プロバイダーとして台頭するという希望は、いや応なしに小さくなっていく。

グループ・エムのガフニー氏は「ひとつの主要プロバイダーが現れるとは思わない。むしろいまより断片化するだろう」と予想する。

つまり、イースター・バニーもいないということだ。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)