Twitterは5月4日、スクロール(Scroll)の買収を発表した。スクロールは長年注目されてきたサブスクリプションサービスで、数百の優良なパブリッシャーがネットワークを構築し、良質な広告なしのブラウジング体験を提供する。今回の買収に関する要点をまとめた。
Twitterが、メディア愛好家向けの高品質サービスを提供しようと、さまざまな取り組みを見せている。
Twitterは5月4日、スクロール(Scroll)の買収を発表した。スクロールは長年注目されてきたサブスクリプションサービスで、ボックスメディア(Vox Media)やインサイダー(Insider)、アトランティック(The Atlantic)といった数百の優良なパブリッシャーがネットワークを構築し、良質な広告非掲載のブラウジング体験を提供する。
Twitterによる買収の主な特徴:
- スクロールの中核をなす機能(広告非掲載かつ、高速のウェブページ閲覧)をTwitterのサービスとして導入する予定。
- 一時的にスクロールを市場から引き上げる。新規ユーザー登録を停止し、プライベートベータ版に戻す。さらに、スクロールが買収したキュレーションサービスのナズル(Nuzzel)も停止する。
- スクロールをTwitterのサブスクリプションサービスに組み込む(現時点では価格未定)。現状のスクロールの価格は月額4.99ドル(約540円)。
- 今回の買収条件は非公開。クランチベース(Crunchbase)によれば、スクロールはすでにベンチャーキャピタルで合計1000万ドル(約11億円)を調達している。
解決すべき課題も山積
Twitterは、1年以上前からサブスクリプション商品の開発計画を発表していた。なかには、当初の意図とは異なるものも生まれている。2020年には、ツイート編集機能のツイートデック(Tweetdeck)への有料アクセスという話も持ち上がった。
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これらのアイデアは、市場のみならずTwitter社内からも懐疑的な目が向けられた。これに対し、TwitterのCFO、ネッド・シーガル氏は2020年夏にアナリストへ向け「Twitterの有料化で消費者の指示を得るのは、極めて難しいだろう」と伝えている。
ここ数カ月で見えてきたのは、Twitterは自社のプラットフォームを利用したまったく別のコンテンツ体験を提供しようとしている点だ。たとえば1月には、ニュースレター発行プラットフォームのレビュー(Revue)買収を発表した。この発表では、クリエイターに向けて、ニュースレターとTwitterをより緊密に連携させていくとしている。
Twitterは5月第1週に、Clubhouse(クラブハウス)を真似たライブ音声サービスの「Twitter Spaces(スペース)」を発表したが、一部機能が有料化となる可能性がある。
スクロール買収の発表は、こういったプレミアムコンテンツ導入という流れの一部とも考えられる。質の高いコンテンツを展開することで、ユーザーがよりTwitterのサービスに割く時間が増える。また会員限定のものも含め、多彩な機能について話題になる機会も増えるだろう。
スクロールの創業者トニー・ハイレ氏は自身のブログで、「ニュースを愛する人たちが集まり、有料会員として金銭的支援を続けてくれる、素晴らしいプラットフォームになるだろう」と述べている。
インターネットの二極化?
これは裕福なメディア愛好家にとっては魅力的なアイデアかもしれないが、必ずしもメリットばかりではない。サブスクリプション収益への関心が高まるなか、それがネットの二極化につながるのではないかという懸念も拡がっている。つまり、有料ニュースレタープラットフォームのサブスタック(Substack)やメディアの提携といった高品質な情報の有料サービスが増えていく一方で、無料コンテンツはタイトルばかりの中身の薄いものになっていくのではないかという懸念だ。こうしたトレンドは、メディアに限らず社会全般で問題視されつつある。
大げさに聞こえるかもしれないが、今回のTwitterによる買収は多くのパブリッシャーの収益に影響を与える可能性もある。現在、ほとんどのパブリッシャーがサードパーティCookieの終了に備え悪戦苦闘しているなか、Twitterは今回「スクロールにより多くのパブリッシャーが参加できるよう支援していく」と発表している。
サードパーティCookieの問題とは関係なく、一定の魅力を備えるスクロールだが、あるパブリッシャー関係者は4月末に米DIGIDAYに対し、次のように述べている。「スクロールで得られるユーザー1人あたりの収益は、広告収益と比べて何倍にもなる」。
[原文:Cheat sheet: Where Scroll fits in Twitter’s subscription plans]
MAX WILLENS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)