Shopify(ショッピファイ)は6月15日、ワンクリック決済サービスのShop Pay(ショップペイ)が、GoogleやFacebook、インスタグラムショップ(Instagram Shops)の販売業者すべてに、Shopifyでストアを開設していなくても提供されるようになると発表した。
オンラインでの購入には信頼が必要だ。GoogleとFacebookは、eコマース市場でシェア獲得競争を繰り広げるなか、予想外に堅固な消費者の信頼を築いた決済サービス会社と提携した。
Shopify(ショッピファイ)は6月15日、ワンクリック決済サービスのShop Pay(ショップペイ)が、GoogleやFacebook、インスタグラムショップ(Instagram Shops)の販売業者すべてに、Shopifyでストアを開設していなくても提供されるようになると発表した。
重要なポイント:
- このオプションは、米国のFacebookを利用する小売業者に対しては2021年7月末までに、Google利用の小売業者に対しては2021年末までに提供される。
- Shopifyの広報担当者は、170万のShopify出店者のうちどれだけがShop Payを現在利用しているのか、FacebookやGoogleの場合はどのような状況なのかについて、明らかにするのを避けた。また、レベニューシェア契約の詳細についても説明を控えた。
- これは、ストアの運営にShopifyを利用していない小売業者にShopifyが提供する初めてのサービスとなる。
- FacebookとGoogleは、メールアドレスや配送先の住所、クレジットカード番号など、注文を取り扱うのに必要なデータを入手する。
今回のサービスの対象範囲拡大に先立ち、Facebookで販売するShopify出店者は2021年2月に、Googleで販売するShopify出店者は同年5月に、Shop Payを利用できるようになった。Shopifyによると、2021年末までには、FacebookとGoogleの双方で100万社以上の小売業者がShop Payを利用できるようになるという。
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FacebookとGoogleでShop Payをより広く利用できるようにすれば、それらのプラットフォームがAmazonに追いつくのに役立つ可能性がある。Amazonにはかなり前から独自のワンクリック購入オプションがあり、スムーズに購入できるため、カゴ落ち(商品を買い物かごに入れておいて購入しないこと)が大幅に減少してきた。Shopifyはこの市場での拡大を目指しており、それによって販売拡大を図っている。一方でFacebookとGoogleは、小売業者以外のウェブサイトでクレジットカード情報を入力するのに慎重な消費者の信頼を勝ち取れる可能性がある。
Shopifyによる決済への投資
2020年5月のブログ投稿によると、4000万人以上の買い物客がShop Payを利用してShopifyのストアで定期的に購入している、とShopifyは主張している。2021年2月のShopifyのリリースによれば、Shop Payが2020年に処理した注文は1億3700万件で、総流通額(GMV)は200億ドル(約2.2兆円)近くだったという。
「このような既存のパートナーの拡大は、Shopifyがこれまで以上に販売力を強化するのに役立つ」と、インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)で主任アナリストを務めるスージー・ダビダニアン氏は、メールで述べている。
パートナーシップ拡大前も、Shopifyはこれまでに、eコマース企業の決済を処理するストライプ(Stripe)に3億5000万ドル(約387億円)を投資してきた、とウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に報じられている。
「小売業者はしばらくのあいだ、カゴ落ちを避けるために、スムーズなショッピング体験に取り組んできた。Amazonの『今すぐ買う』ボタンは、大成功を収めてきた」とイーマーケター(eMarketer)のアナリスト、ナムズル・イスラム氏はメールに書いている。
Shopifyは、そうした成功の一部を奪おうとしている。Shop Payは標準的な精算フローよりも70%速く、コンバージョン率は1.72倍高いと同社は主張している。
Amazon対他社
eコマースが活気を増し続けるなかで、容易な決済は市場シェアを伸ばす要となる。
「Shopifyにとってこれは、対象範囲を広げて、Shopifyプラットフォームのほかのサービスを利用したい新規顧客をあわよくば獲得できる、またとないチャンスだ。公には(まだ)話し合われていないが、これはShopifyにとって別の収益源となる可能性もある」と、ダビダニアン氏は書いている。
それでも、Amazonに取って代わろうとすると、苦戦するかもしれない。eコマースデータ企業のマーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)によると、Amazonのセラーは、北米で300万強(および世界全体で600万超)だという。対照的に、Facebookの広報担当者によれば、Facebookとインスタグラムには世界全体で100万を超えるショップがある(広報担当者は米国のみの数字を明らかにするのを避けた)。Googleは、サイト上で発生する1日当たりのショッピングセッションが10億を上回ると主張している。
ERIKA WHELESS(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:長田真)