YouTube TV 、アドレッサブルTV の予算を狙い 戦略変更

アドレッサブルTV(インターネットTV端末)インベントリーに広告主が関心を高めるなか、YouTubeはYouTube TV(テレビ番組をYouTubeでライブ視聴できるサービス)のインベントリーをほかの商品から切り離し、YouTube TVにおける当初の広告販売方法について広告主からあがっていた不満に対処する構えだ。

YouTube TVはここ1年、Google Preferred(グーグル・プリファード)のキャンペーン向けのインベントリーの1分野として提供されてきた。だが事情を知る業界の役員3人によると、YouTubeは今年度分を前払いする購入サイクルにおいてYouTube TVのインベントリーを切り離す見込みだという。同役員によると、広告主がYouTube TVにアクセスするには依然としてGoogle Preferredの契約が必要だが、YouTube TVのキャンペーンをGoogle Preferredのキャンペーンと独立させた形で管理できるようになるとのことだ。

YouTubeから本件についての回答は得られなかった。

拡大するストリーミングTV

ストリーミングTV(従来のテレビ同様にリアルタイム視聴する番組)のインベントリーに関心を寄せる広告バイヤーからすればYouTube TVのみ購入できるというのは非常に大きい。これは直感的には納得しにくいかもしれない。広告主は、ストリーミングTVサービスの規模が従来の有料TVと比べて大幅に小さいことに懸念を抱いているからだ。だがストリーミングTVのインベントリーを独立して管理できれば、より広範囲のアドレッサブルTVキャンペーンをこれまで以上に柔軟に組み合わせられる。そうすることでアドレッサブルTVのキャンペーンでは世帯に対象をしぼり、「視聴者」の年齢や性別にとどまらずカテゴリーに基づくターゲティングが可能となる。さらに単独のサービスでは難しいような規模に展開することもできる。

ストリーミングサービスの広告インベントリーはバイヤーにとって魅力的だ。テレビで実際のコンテンツのすぐとなりに表示される広告であり、従来のテレビ契約を打ち切ったオーディエンスに全国規模でリーチでき、特定のオーディエンスへのターゲティングも可能だ。だが一般的に見ればそれだけでは不十分だ。このサービスでは1時間番組あたりで販売できる広告インベントリーは2分にすぎない。これは従来の有料TVサービスと同じだが、リーチできるのはせいぜい100万から200万人にすぎず、従来のテレビにおける数千万人の契約者と比べると非常に少ない。

ストリーミングTVサービスはこうした規模の問題を少しずつ解消しつつある。ストリーミングTVサービスとしておそらく最大の規模を誇るディッシュ・ネットワーク(Dish Network)のスリングTV(Sling TV)は、親会社による最新の業績報告書によると、2018年末時点において対前年比で9%増加の242万人と契約している。ブルームバーグ(Bloomberg)によるとHulu(フールー)によるテレビのリアルタイム配信は200万人近い契約者がおり、YouTube TVには100万人以上の契約者がいる。また、通信大手AT&TのディレクTV ナウ(DirecTV Now)は同社の最新の業績報告書によると、2018年末時点で160万人の契約者がおり、これは対前年度比で38%の増加となっている。

YouTubeとHuluが急成長

電通イージスネットワークのエグゼクティブバイスプレジデントで動画投資部門のマネージングディレクターを務めるマイケル・ロウ氏は「1年前の時点では規模は十分ではなかった」と指摘する。

こうした規模の拡大は、2017年にサービス提供を開始したYouTubeとHuluのTVシリーズにおいてとりわけ顕著だ。スリングTVの契約者は対前年度比で9%の増加だったのに対し、ディレクTVナウは対前年度比で38%の増加だ(後者は第4四半期で26万7000人減となっているが)。またCNBCによる今年3月の発表を見ると、Huluの場合は2018年1月の時点で45万人だった契約者数がほぼ4倍に、YouTubeも30万人から3倍以上の伸びを記録している。「とりわけ成長著しいのはHuluとYouTube TVだ。いずれも宣伝のために資金を投じている」と指摘するのはマレンロー・メディアパブ(MullenLowe Mediahub)で動画およびデータ関連投資担当シニアバイスプレジデントを務めるマイク・パイナー氏だ。

YouTubeとHuluのストリーミングTVサービスはこれまで規模が小さかっただけでなく、供給における制約が存在していた。販売できる広告スロットが限られていたのだ。昨年の前払い購入サイクルにおいて、YouTubeもHuluもストリーミングTVのインベントリーをより広範囲なパッケージ商品に組み込んでいた。YouTubeはYouTube TVをGoogle Preferredに組み込んだが、Huluの場合は基本的に広告バイヤーに対する実験的な試みだった。同社によるテレビのリアルタイム配信は通常のHuluのサービスを利用できるデバイスすべてで利用できる状態ではなかった。たとえば古いバージョンのApple TVや現行のGoogleによるAndroid TVをテレビに接続している場合、同社のOTTアプリを使ってもサービスを利用できなかった。

広告バイヤーは、YouTubeもHuluも供給における制約をスリングTVやディレクTVナウの前例にしたがって解決できるのではないかと期待している。両サービスは、広告主がアドレッサブルTVへの関心を高めているのを把握しており、専用の広告インベントリーを提供している。ホライゾンメディア(Horizon Media)で動画投資部門のシニアバイスプレジデントを務めるサマンサ・ローズ氏は「スリングTVはアドレッサブルのプラットフォームとして見ることが多い。ディッシュ・ネットワークからはアドレッサブルTVを容易に購入できるようになっているからだ」と指摘する。

ストリーミングTVを狙う広告主

ストリーミングTVサービスからの広告購入についてパイナー氏は「ほかに購入している商品への補助的な商品として使用するのであれば非常に理にかなっている」と語る。

従来のブランドはストリーミングTVのインベントリーにはほとんど興味を示していない。テレビネットワークで全国規模の広告を買えばストリーミングサービスでも展開されるからだ。だがこうした広告主のあいだでも、特定の世帯に向けてカスタマイズしてターゲティングできるストリーミングTVへの興味は増しつつある。広告バイヤーからは、従来のテレビ契約を打ち切った世帯には貴重なミレニアル世代をはじめとする若い世代が多いと捉えられているためだ。

さらにDTC(Direct to Consumer)ブランドのマーケターをはじめとするデジタルを重視する広告主は、テレビの広告でブランドを確立することで同様の広告を行ってきた企業に取ってかわろうと目論んでいる。このような広告主にとって、ストリーミングTVサービスをはじめとするアドレッサブルTVは市場参入にあたって費用対効果が高いのだ。ローズ氏は「テレビへの広告予算をあまり確保できないデジタルファーストなクライアントはストリーミングTVのインベントリーに強い関心を寄せている」と語る。

パッケージ商品であることが課題

だがストリーミングTVのインベントリーをアドレッサブルTVの広告の補助とできるのは、アドレッサブルTVのパッケージ商品として組み込める場合だけだ。それはスリングTVやディレクTVナウ、YouTube、そしておそらくHuluも、ストリーミングTVをアドレッサブルTVに追加するということを意味する(本記事に関連して連絡をとった広告バイヤーからは、HuluによるストリーミングTVの売り込み変更計画について情報は得られなかった)。つまり広告主に対してアドレッサブルTVの購入と独立してより容易に管理できるインベントリーを提供するということだ。ロウ氏は「我々の第一希望は、アドレッサブルなフォーマットで独立して購入できることだ」と語っている。

TIM PETERSON(原文 / 訳:SI Japan)