カリフォルニア州でデータブローカーをさらに規制する法案が、州法制定に近づいている。
2023年8月第4週、「削除法(The Delete Act)」が州議会歳出予算委員会を通過し、民主党議員10名が賛成、共和党議員3名が反対票を投じ、9月末のカリフォルニア州議会での本会議採決に持ち越された。
ジョシュ・ベッカー上院議員(民主党、サンマテオ州選出)が提出した「上院法案362(以下SB362)」は、プライバシー擁護派からは称賛されているが、広告業界からは攻撃されている。この法案は、データブローカーにより透明性を求めるとともに、消費者がデータブローカーに自分の個人データを削除してもらうための簡単な方法を提供し、新たな執行手段を設け、違反した企業に新たな罰金を課すというものである。
ベッカー氏は米DIGIDAYとのインタビューで、法案について、データブローカーに懸念を抱く理由、そして最近のアドテク業界からの反発についてどう思うかについて語った(ベッカー氏がデータブローカー法案を提出するのは、2022年提出した同様の法案に続いて2度目である)。
「複雑すぎて扱えない権利は、本当の権利ではない」とベッカー氏は言う。「私たちはそれを扱いやすくしようとしているだけだ。私がかつてデータ業界の人たちと話をしたときに、顧客が望んでいないことはしない、と言っていた。それなら、人々が自身のデータを簡単に扱えるようにすればいい」。
カリフォルニア州ではすでに500社近くのデータブローカーが登録されているが、州全体のデータブローカー数はその2倍に達するとの見方もある。「削除法」は、部分的には「電話お断りリスト(The National Do Not Call Registry)」をモデルにしており、データブローカーの説明責任と透明性を高めるのに役立つ。同時に、「人々は自分について何が公開されているのか、そしてそれが社会にとって良いことなのかどうかについての知見を得ることができる」とベッカー氏は語った。
なお、このインタビューは簡潔にまとめるため編集されている。
◆ ◆ ◆
――明らかに、あなたの選挙区にはハイテク企業がたくさん存在しているが、そもそもデータプライバシーに興味を持ったきっかけは?
そのとおり。私の選挙区にはハイテク企業が多く、経済における技術革新の大きな原動力となってきた。一方、同時に懐疑的な視点を持ち、生み出される可能性のある問題に対抗することも私の責任だと考えている。そこで私は、データブローカーと、彼らが収集する私たち一人ひとりの情報の量に注目した。そして、その情報に関して「データ漏洩からその情報は安全なのか?」「あなたの情報はどこに売られているのか?」「私たち一人ひとりについて、どのような情報が入手可能なのか?」といった懸念すべき点があったのだ。
メンタルヘルスのウェブサイトや薬物乱用、アルコール、カウンセリングのウェブサイトに掲載された人々の機密情報が流出し、データブローカーに売却される懸念がある。私たちは、このような情報が外部に流出することのリスクを把握し、人々がそういった情報をコントロールできる方法を考える必要がある。
もし人々が情報を開示したければ、それはひとつのやり方だろう。しかしながら問題なのは、データブローカーは私たちがよく知らない企業であるということなのだ。
――プライバシー擁護派は、この法案によってデータブローカーがより世間に開示された存在になると評価している。シリコンバレーを拠点とすることで、広告テクノロジーに対する理解はどのように深まったのか?
私は長年にわたりテクノロジー業界で働いていたので、すでにそういった感覚を持っていた。しかし、1995年にウェブサイトを開設する手伝いをしていたときに、アメリカ政治コンサルタント協会の会議に行ったときのことを覚えている。政党が私たちアメリカ国民の一人ひとりについてどれだけの情報を持っているのか、それをどのようにピンポイントで選挙活動に利用しようとしているのかを聞き、当時は衝撃を受けた。それ以来、私はこの件に関して、気にかけている。
最近、私自身の何のデータが入手可能なのかを調べてみた。そして、私たち一人ひとりについて、どれだけの情報が世の中に出回っているのかを目の当たりにし、不安になった。このことを知らない人も存在するだろう。SB362の目標のひとつは、それを白日の下にさらすことだ。人々が望むのであれば、私たちはそれを通して、「これは信頼できる情報源だ」とか「OK、この人たちは私の情報を健康記録やその他のことに使っているようだが、それは構わない」と判断できるようになるだろう。
現行の法制度では、データブローカーが個人についてどのような情報を収集しているのか、人々が把握することができない。しかし、私たちの法案ではそれを可能にする。どのような情報を収集しているのかを明らかにすることで、人々は 「これでは不安だ。削除しよう」と言えるようになる。グローバルに共有された情報の削除を望むのであれば、それも可能となるのだ。
カリフォルニア州でデータブローカーをさらに規制する法案が、州法制定に近づいている。
2023年8月第4週、「削除法(The Delete Act)」が州議会歳出予算委員会を通過し、民主党議員10名が賛成、共和党議員3名が反対票を投じ、9月末のカリフォルニア州議会での本会議採決に持ち越された。
ジョシュ・ベッカー上院議員(民主党、サンマテオ州選出)が提出した「上院法案362(以下SB362)」は、プライバシー擁護派からは称賛されているが、広告業界からは攻撃されている。この法案は、データブローカーにより透明性を求めるとともに、消費者がデータブローカーに自分の個人データを削除してもらうための簡単な方法を提供し、新たな執行手段を設け、違反した企業に新たな罰金を課すというものである。
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ベッカー氏は米DIGIDAYとのインタビューで、法案について、データブローカーに懸念を抱く理由、そして最近のアドテク業界からの反発についてどう思うかについて語った(ベッカー氏がデータブローカー法案を提出するのは、2022年提出した同様の法案に続いて2度目である)。
「複雑すぎて扱えない権利は、本当の権利ではない」とベッカー氏は言う。「私たちはそれを扱いやすくしようとしているだけだ。私がかつてデータ業界の人たちと話をしたときに、顧客が望んでいないことはしない、と言っていた。それなら、人々が自身のデータを簡単に扱えるようにすればいい」。
カリフォルニア州ではすでに500社近くのデータブローカーが登録されているが、州全体のデータブローカー数はその2倍に達するとの見方もある。「削除法」は、部分的には「電話お断りリスト(The National Do Not Call Registry)」をモデルにしており、データブローカーの説明責任と透明性を高めるのに役立つ。同時に、「人々は自分について何が公開されているのか、そしてそれが社会にとって良いことなのかどうかについての知見を得ることができる」とベッカー氏は語った。
なお、このインタビューは簡潔にまとめるため編集されている。
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――明らかに、あなたの選挙区にはハイテク企業がたくさん存在しているが、そもそもデータプライバシーに興味を持ったきっかけは?
そのとおり。私の選挙区にはハイテク企業が多く、経済における技術革新の大きな原動力となってきた。一方、同時に懐疑的な視点を持ち、生み出される可能性のある問題に対抗することも私の責任だと考えている。そこで私は、データブローカーと、彼らが収集する私たち一人ひとりの情報の量に注目した。そして、その情報に関して「データ漏洩からその情報は安全なのか?」「あなたの情報はどこに売られているのか?」「私たち一人ひとりについて、どのような情報が入手可能なのか?」といった懸念すべき点があったのだ。
メンタルヘルスのウェブサイトや薬物乱用、アルコール、カウンセリングのウェブサイトに掲載された人々の機密情報が流出し、データブローカーに売却される懸念がある。私たちは、このような情報が外部に流出することのリスクを把握し、人々がそういった情報をコントロールできる方法を考える必要がある。
もし人々が情報を開示したければ、それはひとつのやり方だろう。しかしながら問題なのは、データブローカーは私たちがよく知らない企業であるということなのだ。
――プライバシー擁護派は、この法案によってデータブローカーがより世間に開示された存在になると評価している。シリコンバレーを拠点とすることで、広告テクノロジーに対する理解はどのように深まったのか?
私は長年にわたりテクノロジー業界で働いていたので、すでにそういった感覚を持っていた。しかし、1995年にウェブサイトを開設する手伝いをしていたときに、アメリカ政治コンサルタント協会の会議に行ったときのことを覚えている。政党が私たちアメリカ国民の一人ひとりについてどれだけの情報を持っているのか、それをどのようにピンポイントで選挙活動に利用しようとしているのかを聞き、当時は衝撃を受けた。それ以来、私はこの件に関して、気にかけている。
最近、私自身の何のデータが入手可能なのかを調べてみた。そして、私たち一人ひとりについて、どれだけの情報が世の中に出回っているのかを目の当たりにし、不安になった。このことを知らない人も存在するだろう。SB362の目標のひとつは、それを白日の下にさらすことだ。人々が望むのであれば、私たちはそれを通して、「これは信頼できる情報源だ」とか「OK、この人たちは私の情報を健康記録やその他のことに使っているようだが、それは構わない」と判断できるようになるだろう。
現行の法制度では、データブローカーが個人についてどのような情報を収集しているのか、人々が把握することができない。しかし、私たちの法案ではそれを可能にする。どのような情報を収集しているのかを明らかにすることで、人々は 「これでは不安だ。削除しよう」と言えるようになる。グローバルに共有された情報の削除を望むのであれば、それも可能となるのだ。
――調査資料から自身のどのような情報を得られたのか?
少し奇妙に感じるかもしれないが、今、まさにその資料を見ながら話している。非常に詳細な資料だ。誰か1人の情報について調べれば、そこにあるデータ量にみんな本当に驚くと思う。例えば、このデータの中に20数年前のルームメイトの情報もあった。もし誰かがこれを詐欺に利用して、誰かになりすまして私を騙そうと思ったら、信頼できると思わせるような情報がたくさんあるんだ。メールアドレスもあるし、90年代にワシントンDCにいたときの住所もある。夏に3カ月間住んでいただけの場所まで含まれている。かなり広範囲に渡る。
――データブローカーをめぐるあらゆる懸念がある中で、この法案はどのように説明責任を拡大するのか?
これがこの法案の重要な点だ。我々には監査能力があり、違反した場合には実質的な罰金を科すことができる。だからこそ、反対派とはこの件で激しく争っている。
――この法案が多くの反発を受けているのは興味深いことだが、そのことに驚きはあるか?
イエスでもありノーでもある。2022年はデータブローカー法案が否決されたので、この法案についても争いになるだろうと思っていた。「顧客を不幸にしたくない。こういったデータの取り扱いを簡単にしたい」と私たちと協力してくれた人たちもいれば、そのような態度をとらなかった人たちもいる。
――前回の投票以来、反対派を懐柔するために変更点があったと聞く。それは何なのか?
データブローカーの中には、詐欺を防止したり、事故歴のある車の履歴を見ることができたりと、重要な役割を担っているところもある。そのため、合法的な用途であれば、人々がそのような情報を保持できるようにしたい。
厳重なセキュリティを持つ合法的なデータブローカーもあるが、私たちはこれらの情報をコントロールする方法を見つけなければならない。詐欺はますます巧妙になっている。情報が出回れば出回るほど、リスクは高まる。
――この法案はAIモデルのトレーニングに消費者データが使用されることを防ぐのだろうか? この件は2023年の重大なトピックだが、CPRA(カリフォルニア州プライバシー権法)は現在のジェネレーティブAIブームが始まる前に可決されている法案にもかかわらず、関連する記載がなかったことに驚いた。
この法案ではその点には触れていない。私は別のAI法案を抱えており、これはAIに関する包括的な検討チームを設置し、問題を詳細に掘り下げるべきものだ。8月下旬に、この件についてラウンドテーブル会議を開いた。このように、私はAIの応用に関心を持っていることは確かだ。ただ、これは別の取り組みで、この2つを結びつけて考えてはいない。
[原文:California State Senator Josh Becker on privacy, data brokers and why he’s sponsoring the Delete Act]
Marty Swant(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)