Amazonの「Twitch(ツイッチ)」は、非常に大きな注目を集めている。だが、新しい市場でよくあるように、大手メディア企業のバックアップを受けた新たなライバルが、ビデオゲームストリーマーのあいだでひそかに注目を集めている。それがカフェイン(Caffeine)だ。
Amazonの「Twitch(ツイッチ)」は2018年、大人気となったゲーム「フォートナイト(Fortnite)」とプロゲーマーのタイラー・「ニンジャ」・ブレビンス氏のおかげで、非常に大きな注目を集めることができた。だが、新しい市場でよくあるように、大手メディア企業のバックアップを受けた新たなライバルが、ビデオゲームストリーマーのあいだでひそかに注目を集めている。
それがカフェイン(Caffeine)だ。同社は、ゲーム好きの人たちが自分のゲームプレイをストリーミング配信したり、ほかのゲーマーと交流できる新たな場所を提供している。「Apple TV」の元デザイナー、ベン・キーラン氏とサム・ロバーツ氏が2016年4月に設立したこのスタートアップは、これまでに1億4600万ドル(約159億円)の資金を調達した。最近では、2018年9月に21世紀フォックス(21st Century Fox)から1億ドル(約109億円)の出資を確保している。バラエティー(Variety)の記事によれば、カフェインはニュー・フォックス(New Fox)とのジョイントベンチャーだという(ニュー・フォックスは、フォックスがウォルト・ディズニー・カンパニー(The Walt Disney Company)が売却しなかった資産を管理する新会社)。LinkedInを見ると、カフェインは従業員が70人ほどに増えているようだが、マーケティング面ではいまも目立った動きをしていない。
AmazonのTwitchは、いまもゲーマーのあいだでもっとも人気の高いライブストリーミングプラットフォームで、2018年には毎月300万人以上のストリーマーが利用したという。ニンジャ氏だけでも、Twitchで1250万人以上のフォロワーを獲得しており、そのうち4万人近くが有料サブスクリプションの契約者だとCNNは報じている。これに比べれば、カフェインのユーザーはまだ少ない。2019年1月はカフェインにとって、いままでで最高の月となっているが、21日の段階でアプリのダウンロード数は2万500件ほどだと、モバイルアプリ分析企業のアップトピア(Apptopia)は報告している。同社によれば、2017年6月のリリース以来、iOSでのダウンロード数は約14万2000件だという。また、Google Playでは5000件超だと、このアプリのページには書かれている。
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シンプルさが一番の魅力
だが、ストリーミング時の遅延の少なさやコミュニティの規模の小ささといった特徴が人々を惹きつけはじめていると、複数のストリーマーが述べている。この件について、カフェインにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
「私は一定の数のオーディエンスを抱えているので、Twitchとカフェインを交互に使うことが多い。ただし、このふたつには違いがある。Twitchでは、ボットやオーバーレイ、それに拡張機能を使って自分のストリーミングをカスタマイズできる余地が大きいと思う。一方、カフェインはもっとシンプルなので、あまりいろいろなことを考えずに、単純にストリーミングを行ってオーディエンスと楽しむことができる」と、シルバー氏(仮名)は語った(彼のTwitchとカフェインでのハンドルネームは「Silverwolf77」だ)。
カフェインのもうひとつの利点は、Twitchよりも遅延が少ないことだ。TwitchとCaffeineの両方を利用しているローラ・レッドマン氏は、数カ月前にカフェインのアプリで、お気に入りのゲーマーであるオームレッカー氏のストリーミングを見たときに、カフェインのほうが「レスポンスが速い」ことにすぐ気づいたという(オームレッカー氏は1月21日、カフェインでのフォロワー数が2万人に達したとツイートした。ちなみに、Twitchでのフォロワー数は36万7000人を超えている)。
「Twitchと比べて、ひどい遅延が発生することはなかった。もちろん、オームレッカー氏がストリーミングをはじめてから、私たちはカフェインを10回くらい停止させてしまったけれど」と、レッドマン氏は述べている。
高度な利用は現状不可
しかし、パブリッシャーはいまのところ、カフェインと一定の距離を置いている。多くの時間とリソースを注ぎ込む前に、カフェインがユーザーの支持を拡大するかどうか見極めようというわけだ。カフェインは現在、ブランド向けの広告製品を用意していない。
ビジネス動画ネットのチェダー(Cheddar)でCEOを務めるジョン・スタインバーグ氏によれば、カフェインのコミュニティは「フレンドリー」で、アプリは「子どもたちがきわめて安全に過ごせる場所」になっているという。Twitchで積極的にストリーミング配信を行っている同社は、カフェインでのストリーミングを試してみたものの、動画の高度なエンコーディングができないため、利用を見合わせているとスタインバーグ氏は語った。
「カフェインがスポーツニュース番組をはじめたいと考え、我々がCNETやゲームスポット(GameSpot)の隣に表示されるようになれば、私にとってそれ以上うれしいことはない。カフェインがフォックスから得たお金を使って、ニュース専門メディアのコンテンツを配信することになれば、我々も関心を示すだろう」と、スタインバーグ氏は述べている。
「面白い体験だった」
メディア企業は、フォックスが出資者になったことから、カフェインがさらに成長する可能性があると考えている。ライブトリビアアプリであるザ・キュー(The Q)のCEO、ウィル・ジェーミソン氏は、フォックスが出資したことを知って、すぐにカフェインに興味をもつようになったという。ルパート・マードック氏率いるニュースUK(News UK)が、ザ・キューと提携したのも、未来のテレビを見据えた動きだ。
「(カフェインは)遅延の少ないライブストリーミングの実現に注力している。そのため、インタラクティブ性の高いリアルタイムなプラットフォームとして、ストリーマーとオーディエンスの結びつきを強めることができるのだ。また、FOXスポーツ(Fox Sports)などを抱えるマードック氏やニュー・フォックスとの戦略的提携により、ほかのプラットフォームが数百万ドル払わなければ利用できないようなコンテンツにアクセスできる」と、ジェーミソン氏は述べている。
Twitchと異なり、カフェインではユーザーがストリーミングのオーディエンス数を確認することができない。それができるのはストリーマーだけだ。もちろん、ストリーマーがその情報をオーディエンスと共有することはできる。AP通信(Associated Press)の国内販売担当幹部、エリック・フィニー氏は、カフェインでストリーミング配信を見ていたときに、オーディエンスが自分だけであることを知って面白さを感じたという。
「私はあの場所(カフェイン)で、フォーナイトのプレイヤーのストリーミング配信をいくつか見たことがある。Twitchより優れているかどうかはわからないが、面白いものだった。カフェインで私は、何人かのとても楽しい人たちと新たに出会うことができた」と、フィニー氏は話す。
視聴者管理が次の施策?
ストリーマーたちがカフェインに求めている改善策のひとつは、モデレーター関連の機能だ。1月にカフェインでストリーミングをはじめたばかりのレッドマン氏は、ストリーマーがアプリで利用できるコントロール機能を増やしてほしいと語った。
「ストリーマーとしての私がカフェインに望んでいるのは、(モデレーション)システム的なものを導入して、Twitchのようにオーディエンスを管理できるようにすることだ、誰かを一時的にブロックできても、最終的な判断はカフェインのスタッフに任されている。だがTwitchでは、モデレーターが入室拒否を選択できるのだ」と、レッドマン氏は語った。
Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)