[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Googleは過去数カ月、アドマネージャー(Ad Manager)のインベントリー(在庫)の10%を対象に、ファーストプライスオークションを実施し、結果を分析してきた。そして、数週間後にファーストプライスオークションを本格始動すると発表。しかし、パブリッシャーと広告バイヤーの疑問がすべて解消されたわけではない。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Googleは過去数カ月、アドマネージャー(Ad Manager)のインベントリー(在庫)の10%を対象に、ファーストプライスオークションを実施し、結果を分析してきた。
そして、数週間後にファーストプライスオークションを本格始動すると発表。パブリッシャーと広告バイヤーのため、さまざまな「透明性」の付加機能を追加すると強調している。しかし、パブリッシャーと広告バイヤーの疑問がすべて解消されたわけではない。
それでは、知っておくべきことをいくつか紹介しよう。
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ファーストプライスムーブメント
約1年前、大部分の独立系アドエクスチェンジがセカンドプライスオークションからファーストプライスオークションに移行した。Googleはしばらく抵抗し、3月、ファーストプライスオークションへの移行を発表した。バイヤーやパブリッシャー、ベンダーはそれまで状況を見守っていた。そのあいだ、バイヤーがファーストプライスオークションに移行するのを手助けする方法として、デマンドサイドプラットフォームがビッドシェーディングを考え出した。次点の入札価格(セカンドプライス)より1セント多く支払えばいいセカンドプライスオークションと異なり、ファーストプライスオークションでは、自身が入札した金額を支払わなければならない。
Googleは9月に入り、ファーストプライスオークションの始動日を10日と発表。また、インベントリーの約3%を対象に、セカンドプライスオークションのテストを継続するが、セカンドプライスオークションを維持する予定はないと明言している。ファーストプライスオークションへの移行に関しては、ほかのアドエクスチェンジに追随した形だが、規模が大きいため、影響も大きい。
アドエクスチェンジ、トリプルリフト(TripleLift)の共同創業者で、最高戦略責任者を務めるアリ・ルーイン氏は「AdXが大量のインベントリーを抱えていることを考えると、(完全移行後の)影響は予想できない」と話す。「今後の変化について理解するためにも、Googleは(セカンドプライスオークションを行うための)トラフィックがいくらかほしいはずだ」。
オークションの標準化、「ラストルック」の優位性との決別
透明性という観点から見れば、エージェンシーやパブリッシャーはGoogleのファーストプライスオークションへの移行、ラストルックの優位性との決別を歓迎している。アドマネージャーのセカンドプライスオークションには、ラストルックの優位性が存在した。また、Googleがついにファーストプライスオークションを本格始動することはバイヤーにとって、入札戦略をさらに標準化できるという利点がある。ファーストプライスオークションが本格始動すれば、オークションの終了後、もっとも低い落札価格を公表するなど、Googleは詳細な情報を提供するようになるだろう。これまでバイヤーは手探り状態か、ビッドシェーディングに過度に依存していたが、今後はそうしたデータを入札戦略に役立てることができる。ビッドシェーディングは広告主から厳しく批判されている手法だ。
アイプロスペクト(iProspect)英国法人のプログラマティック取引責任者ダニエル・キム氏は「ファーストプライスオークション移行の利点が欠点を上回るかどうかは議論の余地がある」と述べている。
しかし、エージェンシーは一般的に、オークションの標準化を進めることのできる変化を歓迎する。
エッセンス(Essence)でGoogle向けのブランドプログラマティックアカウントディレクターを務めるキャサリン・ロフトハウス氏は「このような業界の変化(ファーストプライスオークションへの変化)が単なるテスト段階を終え、より簡潔な形で示されれば、何が正常かを理解し、一本化する助けになる」と話す。
ルーイン氏は今後の予想として、独立系アドテクベンダーはエクスチェンジ入札(Exchange Bidding:以下、EB)の勝率の変動を注視するようになると考えている。「彼らが入札価格を上げることはないだろう。重要なのは入札価格を下げられるかどうかで、もし可能だとしたら、どれくらいまで下げられるかだ」。現在、ファーストプライスオークションを運営するサードパーティがEBに参加する場合(認定バイヤー、オープンビッダーと呼ばれる)、EBにファーストプライスを渡し、AdXのセカンドプライスと競い合う。つまり、独立系アドエクスチェンジがAdXに勝利することも珍しくないが、10日以降、この優位性は失われる。Googleのファーストプライスオークションと真っ向から戦うことになるためだ。
パブリッシャーにとっての利点は入札の視認性向上
パブリッシャーにとって、自身のインベントリーに誰が入札しているかがわかることは良いことだ。ファーストプライスオークションが本格始動すれば、Googleはパブリッシャーがオークションに送る全入札データを提供するようになるだろう。入札データ転送(Bid Data Transfer)ファイルが使用されるため、パブリッシャーは入札の全体像を見渡すことができ、広告ユニット別、バイヤー別の入札価格帯など、さまざまなデータを参照できる。入札データ提供の目的は、パブリッシャーが自身のインベントリーの価値を評価し、入札行動を深く理解する手助けをすることだ。欧州連合(EU)一般データ保護規則(GDPR)などに抵触するため、入札データを個人ユーザーと関連づけることはできない。
つまり、パブリッシャーは自身のインベントリーに対する市場の反応をこれまでより深く理解でき、理論的には、自身のインベントリーをより具体的に評価し、入札価格に影響を及ぼすことができる。また、オークションで誰が自身のインベントリーに入札しているかを示すデータは、見込み客の獲得につながる。つまり、インプレッションを落札できなかったバイヤーと連絡を取り、連携のチャンスがあるかどうかを確かめることもできるということだ。
「バイヤーがインプレッションを過大評価し、過剰な高値で入札することを防ぐこともできる。そうすれば、入札価格とインプレッションの価値の相関性が高まるだろう」と、キム氏は付け加えた。
それでも、一部のパブリッシャーはいまだ、ファーストプライスオークションの本格始動は自身の利益にならないのではないかと懸念している。Googleはファーストプライスオークションへの移行計画を初めて明かしたとき、統一価格設定に関する諸条件も発表し、パブリッシャーに拒絶された。無限にルールを設定できる機能が禁止されるなど、ツールの規制を伴っていたためだ。Googleはルールの上限を当初の100個から増やし、パブリッシャーの批判に対応した。しかし、一部の大手パブリッシャーは満足していない。ある大手パブリッシャーのプログラマティック担当幹部は「我々はルールの上限に満足していない。当初の2倍に増えただけだ。これでは価格設定に支障が出る」と述べている。「彼らは我々の望み通りに増やすと言っているが、要求するには理由を示さなければならないようだ。しかも、彼らはAPIへのアクセスを阻止しようとしている」
プレ入札は二流市民のような存在
すでにファーストプライスオークションに移行した一部のアドエクスチェンジにとって、ファーストプライスオークションはGoogleが本格始動するものではなく、統合型オークションの未来であり、注目すべき分野だ。Googleではいまだ、プレ入札で最低価格が設定される。ルビコンプロジェクト(Rubicon Project)のCTOを務めるトム・カーショー氏によれば、たとえば、1ドルで入札した場合、Googleが1ドル1セントに値上げし、残りの入札者に勝負を挑ませるという。
「プレ入札は古いオークションスタイルの二流市民のような存在だ。Googleはもっと公正な環境を本気でつくろうとしているのだと思う」と、カーショー氏は話す。「やるべきことはまだたくさんある。次のステップはプレ入札とDFP(DoubleClick for Publishersの略。現在はアドマネージャーに改称)を統合し、どうなるかを見守ることだ。なぜならどちらも決してなくならないし、敵対関係は誰かの助けになるためだ」。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)