「人的コストの方が問題」: YouTube「小児性愛関連」動画問題、バイヤーは重大視せず

またしてもYouTubeで発生したブランドセーフティの「危機」を受けて、ディズニー(Disney)やネスレ(Nestlé)、マクドナルド(McDonald)、AT&T、エピック・ゲームズ(Epic Games)といった多数の大手ブランドがYouTubeから広告を引き上げている。だが、メディアバイヤーはほとんど気にするそぶりを見せていない。

DIGIDAYリサーチが2月21日に実施したアンケートで回答した100人のバイヤーのうち、今回の危機がYouTubeへの投資に長期的影響を及ぼすと考えているのは14%にすぎない。また、およそ3人に1人が今回の広告縮小は一時的なものに過ぎないだろうと予測している。さらに回答者の37%が、今回の危機によってYouTubeでの広告計画を変更することはないとしている。

「劣悪な環境だが…」

今回のスキャンダルは、あるブロガーが2月第3週に投稿した20分の動画がきっかけとなっている。この動画では、子どもが運動したりポーズをとったりといった動画のコメント欄に、動画を児童ポルノのようなものとみなす小児性愛者たちが集い悪用していると指摘している。こうした動画自体は無害なものだが、そうした動画を性的なものとみなす人間が同じような動画を探すためにコメント欄を使用している。YouTubeのアルゴリズムによって、同じような動画が次々に表示されるようになっているのだ。

ディズニーやネスレといったブランドがこのような動画で広告を流していた。

だが、2月第4週にナッシュビルで開催された米DIGIDAY主催のメディアバイイングサミット(Media Buying Summit)に参加したエージェンシーのバイヤーからは、今回の件も度重なるブランドセーフティの危機のひとつであって、じきに過ぎ去るだろうと口をそろえる。ある大手エージェンシーの経営幹部は次のように語る。「(今回の件で傷つく企業は)存在しないだろう。YouTubeはブランドセーフティの面からは劣悪な環境だ。だが、それでもYouTubeがもたらすプラス面は大きい。再生数は多いし、コンバージョンにつながる」。

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「人的コストが問題」

ある経営幹部は、今回の件で問題となるのは時間を費やされたことだと語る。たとえば独立系エージェンシーのクロスメディア(Crossmedia)でマネージングディレクターを務めるアリ・プロンチャック氏は、同エージェンシーのなかでも最大のクライアントのひとつであるハーツ(Hertz)から2月19日に、関連動画に広告が流れていないかを確認する電話があったと明かした。それを受けて「問題があった全動画を洗いざらい調べて、過去6週間で問題となったコメントのある動画への支出は7セントだったことがわかった」という。「もちろん調査は必要だが、この調査のせいでできなかったことは多い。人的コストが問題なのだ。火の手の有無を調べていたために、チームは最適化や戦略といった方面に時間を割けなかった」。

さらに同氏は次のように指摘する。「問題が発生したとき、その原因と、講じられている予防手段、そして現実的に予防できる手段がどのようなものかにもよる。もし問題が当社のプロセスを変えるきっかけになったのであれば、それは良いことだ。だがもし問題が特異な場合はどうすれば良いのか」。

カラUSA(Carat USA)で最高変革責任者を務めるルイザ・ウォン氏は、持ち株会社やエージェンシーと複数の電話会議を行っていくなかで、今回の問題についてどうすべきかクライアントとGoogleと丸1日かけて話し合ったという。YouTubeが今回の件でなぜもっとうまく対処できなかったのかという問題もある。ウォン氏は、サードパーティを通じてYouTubeのインベントリを購入したほうがよりうまく管理できていたと指摘し、次のように疑問を投げかけている。「小規模な企業の方が管理に長けているというのであれば、YouTubeはなぜそうなのかを問い正されるべきだろう」。

「代わりは次々と登場」

今回の危機は、2017年のときと比べれば大きなものではない。2017年の危機ではタイムズ・オブ・ロンドン(Times of London)とBBCによる調査の結果、子どもから搾取するようなコンテンツやコメントで広告が流されていることが判明し、大手ブランド各社が大幅に広告支出を削減した。だがこのような大騒動を経ても、大半のブランドはその後にこっそりとYouTubeへと戻ったという経緯がある。確かにGoogleが保有するプラットフォームであるYouTubeではこうした問題を回避するためのツールが追加されている。数十万の動画が削除され、ブランドセーフティを提供するという売り込みでGoogle Preferred(グーグル・プリファード)といたツールが導入された。

ほかにも複数のエージェンシー幹部が懸念しているのは、今回の危機がおよぼす影響全般の拡大だ。バイヤーはある程度のミスは織り込まねばならないと認識している。YouTubeのような巨大なプラットフォームでは、「100%のブランドセーフティ」という環境は期待できない。そういった意味では、今回の「危機」は、実際のビジネス上の懸念よりも、Twitter上のカスタマーが広告のスクリーンショットを拡散させてしまうのではないかという懸念のほうが重大なのは明確だ。

メディアエージェンシーのゼニス(Zenith)でデジタル投資部門のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるウィル・ウォーレン氏は次のように語る。「当社の最高デジタル責任者は、カスタマーに対して次のように説明している。オーディエンスベースの購入を行っているのであれば、ある程度の露出は避けられない。だが、リソースがあるプラットフォームは、99.99%のブランドセーフティが約束されていない商品もプッシュしなければならない立場だ。代わりとなりうるものは、次々に登場する。プラットフォームはそれに対処しなければならないし、実際にそうしている。彼らにとってはいつだって緊急事態だ。社外との競争だけでなく、プラットフォーム内で発生する競争もあるのだ」。

「受け入れるしかない」

エッセンス(Essence)のCEO、スティーブ・ウィリアムズ氏は次のように語る。「今回の件はGoogleの責任ではない。私たちはリアルタイムで素早く対応しなければならない立場だし、100%などというものは得られないことを受け入れるしかない」。

とあるバイヤーは次のように語った。「誰かが、このようなコンテンツに広告が表示されていたというだけで問題となりうる。それが広告主に向けてツイートされる。まさにスクリーンショットがもたらす恐怖だよ」。

Shareen Pathak and Jack Marshall(原文 / 訳:SI Japan)