「テレビの転換期だ」:「共同視聴」の指標、 コネクテッドTV が導入を開始

コネクテッドTVの広告バイイングはよりテレビ的になってきている。同じ部屋でひとつのスクリーンに映っている広告を同時に見ているオーディエンスがふたり以上である視聴、「共同視聴(co-viewing)」を広告主たちは計測しはじめている。これはコネクテッドTVキャンペーンの一環として行われており、コネクテッドTV広告の成熟を示している。

電通イージス・ネットワーク(Dentsu Aegis Network)、ホライゾン・メディア(Horizon Media)、ムレンロウ(MullenLowe)のメディアハブ(Mediahub)とRPA、といったエージェンシーたちがコネクテッドTVにおける共同視聴インプレッションの計測に同意した。これはHulu(フールー)とロク(Roku)との、もっとも最近のアップフロント契約で交渉されたインプレッション保証に対するものだ。

「OTT視聴がリビングルームで、実際起きていると我々は知っているが、リニアTVのコンテンツを視聴するのと同じように人々が視聴しているとしたら、物事を公平にするために共同視聴の方向性にプッシュすべきだ、という考えにまったく賛同する」と、ホライズン・メディアのビデオ投資部門シニア・バイスプレジデントであるサマンサ・ローズ氏は言う。

共同視聴インプレッション計測を導入することで、コネクテッドTV広告がよりテレビ広告と密接に評価されるチャンスとなる。通常のテレビ広告では共同視聴の計測は確立した慣習となっている。「我々の大多数がリニアTV側からやって来ている。そして(共同視聴の計測)はビジネスにおける標準的な慣習だ。人々は共同視聴をするし、それをちゃんと提示できるようになりたい」と、RPAのブランデッドコンテンツ、国内動画投資部門のディレクター、シニア・バイスプレジデントであるリサ・ハードマン氏は言う。

作業は単純ではない

言葉ではシンプルなことに聞こえるかもしれないが、テレビビジネスで確立された慣習をコネクテッドTVのような新しいメディアに拡張するという作業は単純ではない。広告バイヤーたちは共同視聴の計測に同意しているものの、これらの数値がどれほど正確かについて不安を抱えている。その結果、Huluとロクとの最新のアップフロント交渉において、共同視聴は重要な切り札となった。

「供給が減っているため、リニアTVにおける広告コストが上がっていることは全員が分かっている。そこで、(ひとつの広告視聴に対して複数のインプレッションを数えることで)コネクテッドTVにおける供給を突然追加すれば、コストは下がるはずだ」とムレンロウのメディアハブ、動画・データ中心投資部門SVPであるマイク・パイナー氏は言う。

コネクテッドTV広告インプレッションはこれまで、ウェブやモバイルの広告インプレッションのような形式で計測されてきた。スクリーンを見ているのはひとりのユーザーのみ、という考えだ。実際はコネクテッドTVで動画をストリーミングする際、その部屋には複数の人々がいる、と広く信じられているのに、だ。IAB(Interactive Advertising Bureau)によって実施され、Hulu、ロク、コムキャスト(Comcast)のフリーウィール(FreeWheel)がスポンサーした2017年の調査によると、人々がコネクテッドTVでOTT動画をストリーミングする場合、複数のオーディエンスが部屋にいる場合は全体の93%であった。それに対し従来のテレビでは96%であった。

先駆者たちの思惑

広告主たちが最新のアップフロント交渉におけるコネクテッドTVキャンペーンで、共同視聴計測を受け入れ出したのは、「OTTが転換期に差し迫っていると、我々は感じているからだ」と、ローズ氏は説明する。2018年、コネクテッドTVは動画広告インプレッションでモバイルから最大シェアの座を奪った。また昨年、ニールセン(Nielsen)は彼らのデジタル広告レーティング(Digital Ad Ratings)の一環としてコネクテッドTVインプレッションの計測をはじめた。Huluとロクはこれによって共同視聴インプレッションを計っている。Huluとロクに加えて、NBCユニバーサル(NBCUniversal)もまた、ニールセンのコネクテッドTV計測を用い、彼らが擁するプラットフォーム横断広告計測プログラムであるCFライト(CFlight)に共同視聴を導入している。

Hulu、ロク、NBCユニバーサルのような広告セラーが共同視聴インプレッションを導入する理由は明らかだ。広告主に売ることができる在庫が増やせるからだ。これは特にHuluにとってアドバンテージとなり得る。Huluでは供給よりも需要が上回ることが多く、広告主がほかの場所で予算を費やすことにつながっているからだ。広告バイヤーにとっては、共同視聴インプレッションを受け入れることで、価格が下がるかもしれない。

これまでのところ、共同視聴は広告バイヤーにとって価格下落を生んでいるように思われる。バイヤーのひとりは、インプレッション保証に共同視聴のインプレッションをカウントすることに同意したことで、Huluとの契約で非常に大きな価格待遇を交渉の結果勝ち取ることができた、と語る。

バイヤーたちの不安

バイヤーたちは需要と供給の法則に従った、価格の下落を求めているだけではない。共同視聴インプレッションの計測方法について不確かな側面があることを理由に、ディスカウントも求めている。「ふわふわしている、という表現が当てはまる」と、ハードマン氏は言う。

共同視聴を計測するため、Huluとロクはそれぞれ自社の視聴データをエクスペリアン(Experian)に提供している。エクスペリアンはこのデータをニールセンの、計測パネルにおいてどれだけの数の人がその部屋にいたかを計測するデータとマッチングさせることで、各インプレッションにつき共同視聴の要素を計測する(部屋にいる平均人数)。家庭の構成やその家庭にいる人々がどの番組を見るか、いつ視聴し、どのデバイスを利用するか、といったニールセンのパネル・データを活用し、直接は計測していないものの、家庭の性質が類似しているほかの家庭におけるインプレッションがどれだけの人数を表している可能性が高いかを計算する。その結果、Huluやロクにおけるひとつのインプレッションに対して、広告が提供されているときに部屋にひとり以上がいる可能性が少し高ければ、共同視聴要素が1.23である、と計測する場合もあれば、ふたり以上がいる可能性が高いため共同視聴要素が1.90、と計測されるインプレッションも出てくるわけだ。

「手法がしっかりとしていること、そしてパブリッシャーやメディアオーナーたち、そしてサードパーティの計測ベンダーたちから均質な結果を得ること、これが我々がもっとも注意している点だ」と、電通イージス・ネットワークの非リニア動画リサーチとインサイト部門シニア・バイスプレジデントであるマギー・ザング氏は言う。

共同視聴がどのように計測されているかに関するバイヤーたちの不安は、いくつかの問題点に収束される。まず第一に、Huluとロクがデータをエクスペリアンに渡し、ニールセンのデータと突き合わせて共同視聴を計測するわけだが、そのデータを広告主たちが独自に検証することができない、という点だ。第二に、広告主たちは自分たちのキャンペーンにおける全体のオーディエンス層とニールセンのパネルが対応できていることを信用するしかない、という点。そして最後にニールセンのコネクテッドTV計測手法はまだ、メディア・レーティング・カウンシル(Media Rating Council)によって承認されていない点だ。ちなみに、彼らが承認しているコネクテッドTV広告計測手法は、現時点ではイノヴィド(Innovid)とピクサレート(Pixalate)のみだ。

なぜ導入に動くのか

こういった計測方法に関する不安にも関わらず、バイヤーたちは共同視聴を試験的に導入しようとしている。長期的には従来的なテレビとコネクテッドTVがそれぞれどう計測されているか、について公平性を確立することでテレビ広告予算がストリーミング分野に流れる助けとなるだろう。これはオーディエンスが実際にストリーミング分野へと流れているのを追う形だ。短期的には初期の段階から関わることで、テレビ広告の業界に起きる変化が広告主たちにとって好意的なものであるよう、影響を与えることができるだろう。

「テレビの視聴率が下がっていることを我々全員が確認している。そのため(コネクテッドTVにおいて)視聴が増えている、というのは悪いことではない」と、パイナー氏は言う。「しかしそれを行うには、取引にそれが公平に反映されていることを確実にしなければいけない」。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)