メディアの未来は、 データ を中心とした「協調」にあり:ブライトコーブ「PLAY 2018 Tokyo」レポート

データ革命が、メディアのあり方も変えつつある。

動画配信プラットフォームベンダーのブライトコーブ(Brightcove)は7月6日、グランドハイアット東京にて、自社イベント「PLAY Tokyo 2018」を開催した。動画メディアや動画マーケティングに関する最先端のトレンドとテクノロジーを紹介する本イベント。今回の目玉のひとつが、ブランド、メディア、プラットフォームそれぞれの関係者が集い、変わりゆくメディアビジネスについてディスカッションしたセッション「各社が考えるこれからのメディア未来予想図」だった。

モデレーターは、6月末に日本マクドナルドを退職した、元同社上席執行役員マーケティング本部長の足立光氏。パネリストは、ダイキン工業株式会社 総務部 広告宣伝グループ長 部長の片山義丈氏、楽天株式会社 常務執行役員兼コマースグループカンパニー シニアヴァイスプレジデントの河野奈保氏、フェイスブックジャパン執行役員 マーケティング・サイエンス日本統括の中村淳一氏、テレビ東京コミュニケーションズ 取締役の蜷川新治郎氏の4人だ。

念のため、整理をすると、モデレーターを務めた足立氏およびダイキンの片山氏はブランド側。楽天の河野氏は、ブランド・メディア両側の立場。テレビ東京の蜷川氏はメディア側、Facebookの中村氏はプラットフォーム側となる。

写真左より、足立氏、片山氏、河野氏、中村氏、蜷川氏

写真左より、足立氏、片山氏、河野氏、中村氏、蜷川氏

メディアとの付き合い方

まず、本セッションにおいて浮き彫りにされたのは、新旧メディア間における混乱だ。「マス」の王者でありながら斜陽のレッテルを拭いされないテレビと、いまやマスに匹敵する規模を誇りながら「パーソナル」に訴えかけることもできるデジタルプラットフォーム。そして、その狭間で右往左往するブランドたち…。そんな光景が見て取れた。それは、ダイキンの片山氏の次のような発言にも表れている。

「メディアが増えすぎて、いろんなデータが分断している。それをトータルで提供できるソリューションが全然ない。代理店ですら、この状況を把握できていない。広告主自らが動いてソリューションを見つけ出し、代理店に利用を促すというおかしな構造となっている」。

実際、新しいソリューションの知識の有無にかかわらず大手代理店は、案件をテレビ広告に誘導しがちだ。それがよく馴染んだ方法であり、大きな売上に直結しているからである。しかし、昨今の広告主は、それを求めていない場合も多い。

こうした状況は、テレビ局側も、もちろん自覚している。テレビ業界は、2000年前後に広告売上のピークを超え、以降ゆるやかな衰退期に突入しているからだ。テレビ東京の蜷川氏も次のように語る。

「現状のままのテレビというサービスは、どうしても衰退してしまうと思う。これだけ、ユーティリティの高い、ほかのメディアやサービス、デバイスが増えてくると、そう思わざるを得ない。そのなかで生き残る術は、周りのメディアとの付き合い方にあると思う。我々のコンテンツをいままで以上に、多くの人へ届けるには、どうするべきかが重要だ」。

重要になるデータ連携

そんななか、ECプラットフォームながら、広告ビジネスも急成長させている楽天の河野氏は、死角を見せない。いまやフィンテックからマッチングサービスまで、すでに70以上のサービスを保有している楽天グループの会員総数は、すでに9000万超。自身のサービスをメディアとした広告事業も好調で、2017年度の販売実績は790億円に及ぶ。なのに、外部メディアへの出稿も続けているのだ。

「実際、自分たちのメディアのなかだけで、ユーザーを送り合うのが一番効率が良い」と、楽天の河野氏は語る。「だが、そのエコシステムへ新規ユーザーを引き込むために、外部メディアへの出稿を行っている。そこで重要になるのがデータコネクトだ」。

データを活用して、楽天は外部メディアから新規ユーザーを引き込み、さらに自社のエコシステムを拡充する。そのさきに、2021年には広告ビジネスを2000億円規模にするという目標があるのだ。

一方、デュオポリーとして、Googleと並び畏怖されるFacebookも、データを活用したビジネスモデルを持っている。もともとはP&Gのマーケターだった中村氏は、次のように表現する。

「個人的な意見となるが、P&Gは広告主のなかでも、データリテラシーのレベルは高いほうだと思っていた。しかし、1年前にFacebookへ転職して、分析のレベルはより進んでいることに驚いた。機械学習のアルゴリズムの理解など、とても進化していると感じる」。

企業が抱えるジレンマ

テクノロジープラットフォームがメディア・ブランド、両方の立場で最先端を切り拓いているなか、クライアント側のデジタル人材育成は、なかなか進行しない。デジタル化によって、マーケティング業務が細分化するなか、それをまとめあげるハブが存在しないからだ。

「クリエイティブ、マーケティング、PR、デジタル運用などなど、専門のエージェンシーは存在する。だが、誰もが自分はまとめ役でないという顔をする。営業ですら、そうだ」と、ダイキンの片山氏は困惑顔を見せる。「なので、自分たちもよくわかっていないけど、クライアントサイドが鵜飼いのように、まとめ役にならざるを得ない」。

しかし、テクノロジーの進化は、そうした雑務からの解放を目指している。AI(人工知能)がまさにその象徴だ。クリエイティブ、マーケティング、PR、デジタル運用などなど、使い方によっては、実用に耐えうる技術もすでに存在する。とはいえ、門外漢にとってAIはいまだ、海の物とも山の物とも見分けがつかない。テクノロジーカンパニーでない限り、そちらへ完全に軸足を移せる企業は、ほとんどないだろう。

「だが、実は企業によって、データの価値は違う」と、モデレーターの足立氏は、マクドナルド時代を振り返る。「当時は、自社でデータ収集をしたこともあったが、結局外部に任せて、コストを削減した。データを集めて、ライトタイミング、ライトターゲット、ライトメッセージを狙っても、マクドナルドではあまり効果がなかったからだ」。

だが、購買頻度の高い、ドラッグストアの業界では、データが大きな価値をもつと、足立氏は続ける。たとえば、ドラッグストアのアプリやレシートなどで提供されているクーポン。あれは、なんと9割が利用されているという。「そこには、AIがとても機能している。ライトタイミング、ライトターゲット、ライトメッセージが実現できているのだ」。

グランドハイアット東京の大ホールは満席となった

グランドハイアット東京の大ホールは満席となった

ユーザー意識の変化

テレビ東京の親会社である日本経済新聞社も、そんなテクノロジーへの理解を深めつつある企業のひとつだ。日経電子版を成功させた同社は、それ以降カルチャーが変わったと、蜷川氏は語る。「かつてデジタル人材の声は、あまり強くなかったと思うが、いまは、エンジニアもサービスを引っ張っている。逆に記者や営業がデータベース言語のSQLを勉強しているくらいだ」。

だが、テレビ局は残念ながら、まだ、そこまでには至っていないと、蜷川氏は付け加える。個人的にはデータ開放の方向へ向かうべきだと考えているが、さまざまな制約があって、まだまだ課題は多い。

実際問題、5月25日にEUで施行された一般データ保護規制(GDPR)は、各所でさまざまな混乱を引き起こした。EUだけでなくアメリカでも、GDPRに似たCONSET法案が検討されている。日本においても、2017年に個人情報保護法が改定され、より厳格なものとなった。

「利用者の皆様の意識が変わってきている。データの提供や活用のされ方に対して、理解を深める動きが高まってきた。いままでの手法では、データの利用が難しくなってきている」と、Facebookの中村氏は語る。「さまざまな問題を経て、Facebookはいま、利用者の皆様のデータに関して、利用者自身が管理しやすいような取り組みに注力している。もしデータが活用できない状況になったとしても、たとえば、ゲームをプレイできるバナー広告とか、ARとかVRとか、アドエクスペリエンスで勝負できるようチャレンジしている」。

「メディアは協調すべし」

一方、Facebook同様の大手プラットフォームとして、楽天の河野氏は、若年層におけるテクノロジーへの接し方に対して、希望を見る。Twitterなどで若い人たちは、プライバシーが漏れてもあまり気にしないからだ。たとえ、そうなったとしても、古いアカウントを閉じて、新しいものを作ればいいと考える。つまり、若い人でなくとも、便利だということがわかれば使うはず。サービスのクオリティを上げるしかない。

「楽天のカルチャーは基本的に、パートナー戦略にある。自分たちのエコシステムを広げることだけがすべてではない。パートナーとともに拡大していくことを目標としている」と、河野氏は補足する。「会社が設立した21年前に、他者を元気にするという意味で、『エンパワーメント』という言葉を使った。いまは、これまで接することが少なかった、ほかのメディアとコラボするときだと思う」。

実は、マクドナルドもメディアの要素がある企業だと、足立氏は語る。メニューを提供する際に供される、トレイマット。1日に200万〜300万も配布されており、ちょっとした地方紙並みの規模を保有しているというのだ。これと外部企業がうまく連携すれば、新しい価値が生まれることは、想像に難くない。

「今後、メディアは単独で歩んではいけない」と、足立氏は締めくくる。「ほかのメディアとの協調を考えた方がいい。そうすれば、お互いの価値を高めることができる」。

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Written by 広告制作チーム
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