インターネット上に無数の分散型メディアがローンチしている昨今、それらを構成するために欠かせないのが動画だ。
動画の特徴は長さによって異なるが、ブランドの認知想起、ストーリーをもったブランドメッセージの伝達、商品紹介など。伝えたい内容や目的に応じて、表現の幅がバナーやテキストと比べて広いのが最たる特徴だろう。7月14日、六本木にてBrightcove PLAY 2017 Tokyoが開催された。動画配信事業に関わるテクノロジー業者が多数出展。メディア運営者やブランドマーケター、広告代理店関係者によるセッションも開かれた。
インターネット上に無数の分散型メディアがローンチしている昨今、それらを構成するために欠かせないのが動画だ。
動画はブランドの認知想起、ストーリーをもったブランドメッセージの伝達、商品紹介など、伝えたい内容や目的に応じて表現の幅がバナーやテキストよりも広いことが最たる特徴だろう。
7月14日、六本木にて動画ビジネス、デジタルマーケティングに関わるマーケター、ベンダー、メディア関係者が集うイベント、Brightcove PLAY 2017 Tokyoが開催された。Brightcoveはメディアビジネスやデジタルマーケティングの支援を行っており、動画配信プラットフォームのソリューションを提供している。毎年ボストンで開催しているPLAYは2014年から東京でも開催しており、3回目となる今年も動画配信事業に関わるテクノロジー企業、メディア運営者、広告主が集って熱い議論が繰り広げられた。プログラム以外にも多数のテクノロジー企業、エージェンシーが出展し、各企業が自社の技術やサービスのデモンストレーションを行った。
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今回のPLAY Tokyoでは専用アプリが用意され、参加者はイベント会場で参加するセッションプログラムの確認や、投稿を通して参加者間でのコミュニケーションが行われた。
イベント冒頭ではBrightcoveのCEO、デイビッド・メンデルス氏が登壇し、最新の動画テクノロジーについての紹介と、動画コンテンツを使ってどのようにデジタルマーケティングが促進されるかについて発表。また、長年企業のブランデッド動画の可能性を評価してきた、ショートショート フィルムフェスティバル & アジアを主催する別所哲也氏も登壇し、企業がショートフィルムという形を通して、ブランドストーリーを伝えるマーケティング活動の広がりを語った。
今記事では、イベントのなかから編集部がピックアップしたセッションについて、動画ビジネスで成功するために効果的な戦略について議論された内容を紹介する。セッションでは、メディア運営社の視点からスマートニュース、ブランド広告責任者の菅原健一氏と、ホワイトメディアCEOの明石岳人氏が登壇した。
動画=映像と音ではなくなった
まるで映像技術の原点に戻っているようだが、SNS上でユーザーの目に留まるためには、動画に音は必ずしも必要とされないという。明石氏はFacebookで動画を見るユーザーのうち、音付きで視聴する割合は15%ほどだと指摘する。
「映像は基本的に音とビジュアルがセットで作られる。プレイステーションのCMも最初のドゥーンという音でアテンションを取っている。しかし、ソーシャルでは音でアテンションが取れないので、いままでの映像のノウハウが断絶してしまった。ソーシャルの動画は音声なしでアテンションを取らなければならないうえ、内容を理解させなきゃいけない」と明石氏。
CMの場合、特徴のある音やリズム音、シズル感の表現に活用されるように、音は映像の最大構成要素になるが、SNSのフィード上ではそうはいかない。現在のSNSの仕様上、スマホを手にスクロールし続けるユーザーに対して「音」ではアテンションをとれないのだ。
さらに明石氏は、ライクやシェアされないと動画が多くのユーザーに見られないというSNSの特性において、共感させる動画でなければいけないと語る。
ユーザーが関心のあるモノを最初におく
菅原氏は「そもそも情報には価値がないといけない。(その上で)いままでのネットとの大きな違いは、動画はスキップできるということ」とデジタルで共感させるコンテンツの難しさを指摘。そこでパタゴニアの音なしインフォグラフィック動画が事例として紹介された。目的は、パタゴニアの衣類にオーガニックコットンが使用されていることを知らない人へのリーチだった。
「パタゴニアのかっこいい服を強調するのではなく、ユーザーに対して衣類が肌に影響を与えていないか? 農薬を使われたコットンなのではないか、と問いながら、農薬なしで作られるパタゴニアのオーガニックコットンを紹介。ユーザーにとって関心があることを(動画の)最初に置いた」と明石氏は語る。「タイムラインで偶然出会うわけだが、自然と見ていると何となく分かる。これは、テキストをクリックしてコンテンツに到達する記事広告とは違った体験で、かつ深掘りできる」。
菅原氏は「テキストは常に理解していないとスクロールできない。でも動画だとアテンションがありながら目を逸らさないようになっていて、ただ見ているだけで頭の中に入ってくるような仕組みが作れるというのがホワイトメディアの強み。この動画は視聴完了率がとても高かった」と、この事例の特徴を解説した。
White MediaのFacebookアカウントから。記事で紹介した動画とは異なるパタゴニアのPR動画。
スキップ可能な環境でアテンションを取り続けなければならない
現在、ホワイトメディアはFacebookとスマートニュースに動画を配信していて、月間の再生数は約500万回、リーチでは約2000万人だという。一方、スマートニュースはグローバルでアプリが2000万以上DLされており、MAU は約625万人。一人あたり1日約12.2分スマートニュースを使っているという。今年5月発表のアップアニーの調査では、1日あたりのユーザーのアプリ利用時間は約3時間に達している。
明石氏は「いままではWebサイト全体が世界観を表していたと思うが、いまは、こういう動画をスマホで見るとき、画面いっぱいにその動画が広がる。動画自体が伝えたい世界観や伝えたいモノを表すすべてになった。すると、プラットフォームに関係なく、ユーザーに取って見やすい場所でちゃんと観てもらうことが重要だと思う」と語る。
続けて菅原氏は「いまやオウンドメディアに引きこむというよりは、ユーザーが見たい環境に合わせて届けていくという感じ」と分散型メディア台頭によるユーザーの行動変化を述べた。「メディアのなかにある程度、1日12分みたいなユーザーの平均視聴時間があって、そのなかをホワイトメディアは何分取れるかを考えているということになる。ユーザーに損切りをされないようにしなければならない」とデジタルの性質であるスキッパブルとアテンションの概念を意識したコンテンツが必要だと語った。
明石氏は、ファンのコンテンツに対する期待値を10秒に設定しているという。「10秒まで見られたら、それ以降の離脱率はほぼ変わらない。これは非常に大事なことだ」と語った。
DIGIDAY[日本版]はBrightcove PLAY2017 Tokyoのメディアスポンサーです。
記事内容は一部、修正・変更いたしました。
Written by 中島未知代
Photo from Getty Images