WeChatは、MAUが7億6200万人を超えるが、多くのマーケターにとっては、その閉鎖的なネットワークが難題だ。そこで、ブランドがオーディエンスとつながりを築くには、現地のインフルエンサーを通して、ファンが信頼するプラットフォーム上で交流を図ることが「近道」となる。そんな有力オピニオンリーダー4人を紹介する。
米国の広告主は、ソーシャルメディア・インフルエンサーにいくら支払うべきか、はっきりわかっていない。しかし中国では、もっとわかりにくい状況となっている。人気の高いメッセージングアプリ「WeChat(微信)」については、特にそういえる。
WeChatは、月間アクティブユーザー数が7億6200万人を超えているが、多くのマーケターにとっては、その閉鎖的なネットワークが難題だ。そこで、ブランドがオーディエンスと個人的なつながりを築くには、現地で「キーオピニオンリーダー」と呼ばれているインフルエンサーを通して、ファンが信頼するプラットフォーム上で交流を図ることが「近道」となる。
ハイエンドなオピニオンリーダーはたいてい、WeChatの「サブスクリプション」でアカウント認証をしている。このサブスクリプションで、彼らはブランドのためにスポンサードポストや動画を公開しているのだ。一方、個人アカウントを開設している、もっと影響力の小さいインフルエンサーは、「モーメンツ(朋友圏)」に投稿して、ブランドの認知度を高める。
Advertisement
WeChatでマーケティングを行うインフルエンサーの料金は、200ドル(約2万円)から、オピニオンリーダーがブランドについて複数回書き込みを行う場合の数万ドル(数百万円)まで、さまざまだ。また、一部の有名人たちの場合は、WeChatで「大使」を務める契約のなかに、公の場に姿を現すことやテレビコマーシャル、印刷広告への出演も含まれている場合があり、数百万ドル(数億円)の料金を請求することがある。そう語るのは、調査会社ボモダ(Bomoda)の共同創設者でもあるCEO、ブライアン・バックワルド氏だ。同氏は、以前にWeChatでメディア事業を構築した人物でもある。
以下では、WeChatの有力なオピニオンリーダー4人がブランド(大半はファッション関係)と、どのようなかたちで協力しているかを紹介する。
ファッション関係のブロガー兼批評家、Gogoboi
Gogoboiは、流行のファッションや有名人のファッションセンスについて、「悪趣味」「失敗作」「不快」といった独特な辛口コメントを発信している。そうしたコメントは意外にも、中国の控えめな文化のなかでは新鮮なくらい正直だと受け止められている。
WeChatでのGogoboiの認証済みアカウントは、米女優グウィネス・パルトロウ氏が展開するライフスタイル提案サイト「グープ(GOOP)」のような見た目だ。Gogoboiは、ファッショントレンドや有名人に関するニュースについて投稿するかたわら、グッチ(Gucci)の香水やケーシー(Keecie)のバッグなど、ライフスタイル製品のキュレートや販売を行うモバイルストアを同プラットフォームで運営している。
「中国のブロガーは、報酬をもらっているとか、スポンサー付きだと非常にオープンにいう。現地の消費者から比較的受け入れられているからだ。それと比べて、北米のインフルエンサーは、もっと巧妙に売り込んでいる。そうしなければ、フォロワーを失う恐れがあるかもしれないからだ。このふたつの市場の主要な違いは、信用そのものではなく、インフルエンサーによる信用の勝ち取り方にある」。インフルエンサーマーケティング会社ミューズファインド(MuseFind)のCEO、ジェニファー・リー氏は、こう指摘する。
Gogoboiは、中国の重要な祝日には、無作為に選ばれたファンにジバンシィ(Givenchy)の口紅などの賞品も送っている。中国には、広告の明示を推進する米連邦取引委員会(FTC)のような組織がないので、そうした賞品をブランドが提供しているのかどうかは、不明だ。
メイクアップアーティストのMK
MKはさながら、YouTubeで人気を博したメイクアップアーティスト、ミシェル・ファン氏のWeChat版だ。流行スタイルに関する情報やスキンケア製品の推薦など、多様なコンテンツがある。
MKの投稿は、ページビュー数が数万回におよぶ。たとえば、アジア人の女性がザラ(ZARA)のどのデザインなら背が高く見えるかを検証した最近の投稿は、ページビュー数が1万回を超えた。最良のBBクリームを見つけるために、IOPE、ラネージュ(Laneige)、イニスフリー(innisfree)など、さまざまな韓国ブランドをテストした別の投稿は、ページビュー数が3万5000回に達した。
真にバイラルな投稿がどういうものかについては基準はないが、MKの人気がブランドの目に留まらないわけがない。中国では広告明示に関する規制はないが、宣伝する商品が大量なので、MKがマネタイズに苦労していないのは明らかだ。MKのWebページの最下部にはメールアドレスが明記されている。ブランドがビジネス取引を要請できるようにだ。
ブロガーのMimeng
Mimengは以前、南方日報の編集長だったが、辞職後、自身の映画制作会社を立ち上げた。映画事業が失敗したあと、WeChatアカウントを開設。いまはそのアカウントで、対人関係や結婚、セックス、愛について、恐れ知らずで機知とユーモアに富むコメントをしている。中国メディアのある記事によると、スポンサー付き投稿1件あたり10万回ものページビュー数を獲得しており、最高30万元(約450万円)を手に入れることもあるという。
ストリート・スタイリストのHuohuo Han
Hanは、セレブスタイルのインフルエンサーだ。2009年にオンラインで有名になる前は、マリ・クレール(Marie Claire)中国法人のプロジェクトマネージャーとして働いていた。「地球でもっともハンサムな男」を自称している。欧米のメディアが「中国のキム・カーダシアン」と呼んでいるモデル兼女優のアンジェラベイビー(Angelababy)など、中国の多くの有名人と付き合っているという。
WeChatアカウント経由でブランドにお墨付きを与えることはめったにない。そのためWeChatでは、ファッショントレンドについてもっぱらブログ記事を書いている。だが、WeChatのストリートスタイル画像では、レイバン(Ray-Ban)やシャネル(Chanel)のような多くの有名ブランドがさりげなく宣伝されている。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)