今、インフルエンサーの前にはさまざまなプラットフォームが選択肢として広がっている。そんな「インフルエンサー獲得競争」に向けて、インスタグラムが攻勢を強めている。その取り組みのひとつが、5000人のクリエイターを集めて行われた3日間のストリーミングイベント「クリエイターウィーク(Creator Week)」だ。
複数のプラットフォーマーがしのぎを削る今、インフルエンサーの前にはさまざまなプラットフォームが選択肢として広がっている。そんな「インフルエンサー獲得競争」に向けて、インスタグラムが攻勢を強めている。
その取り組みのひとつが、5000人のクリエイターを集めて行われた3日間のストリーミングイベント「クリエイターウィーク(Creator Week)」だ。今やインフルエンサーは、ブランドのマーケティング戦略において中核的な役割を担う存在になりつつある。
クリエイターウィークでは、インスタグラムから戦略的パートナーシップ担当のアレックス・クック氏やコンテンツクリエイターパートナーシップ担当のベシドン・アモルワ氏などの同社役員が参加したほか、配信プラットフォームを運営する映画スタジオのクリエイター+(Creator+)のコンテンツスタジオ責任者アダム・ウェスコット氏といったクリエイター経済界の大物も登場する。また、インスタグラムのアルゴリズムに関する誤解や資産管理、メディア対応などをテーマにしたパネルセッションも行われる。ほかにもクリエイター側にもより積極的に参加してもらうため、ピッチのコンペティションも実施する。勝者となったクリエイターは、商品展開や動画制作のための賞金が用意されている。一部のプログラムは、インスタグラムのクリエイター向けのアカウント「Instagram’s @Creators」で配信予定だ。
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激化するクリエイター獲得競争
コロナ禍により消費者の在宅時間が増え、SNSの利用時間も伸びたことで、企業のインフルエンサーマーケティングへの関心に拍車がかかった。SnapchatやYouTube、TikTokなどは、インフルエンサーイベントやクリエイター基金を続々と展開させ、インフルエンサーへのアピールに余念がない。YouTubeは2010年にユーチューバーとファンが直接会える場所としてビドコン(VidCon)を、Snapchatは2019年からパートナーサミット(Partner Summit)を開催している。また、YouTubeショート(YouTube Shorts)やSnapchat、TikTokはそれぞれ独自のクリエイター基金を設立した。
インフルエンサーマーケティングのソフトウェアを開発しているグリン(GRIN)のマーケティング担当VPアリ・ファザル氏は、「クリエイターウィークは、インスタグラムがこれからクリエイターのキャリアを本格的に支援していくという意思表明だ」と指摘する。「Facebookもインスタグラムも、企業広告から収益を得ている。企業へアピールするためにも、インフルエンサーは決して無視できない」。
しかし、インスタグラムを取り巻く競争は厳しい。インフルエンサーマーケティングのプラットフォーム、リンキア(Linqia)の2021年4月のレポートによると「インフルエンサーマーケティングでインスタグラムを使う」と回答した米国企業は93%に上るが、約1年前の2020年2月は97%で、若干だが減少傾向にある。一方、TikTokは68%ではあるものの、前年比で16%増となっている。
「プラットフォーマーは、激しいクリエイター獲得競争を繰り広げている」と話すのが、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのバイラルネーション(Viral Nation)の事業開発責任者のゲイブ・フェルドマン氏 だ。クリエイターウィークには、バイラルネーションからもルカ・ワイトテイカー氏とダニエル・ベラルド氏が参加する。「どこもクリエイターにとってのファーストプラットフォームになりたいと考えている。コンテンツをアップロードしてもらうためにも、クリエイターにとって優れた環境を整える必要がある。インフルエンサーがいるところにフォロワーは集まる」。
企業とのコラボは収益の柱
ARアーティストとして知られるSnapchatのインフルエンサー、シレーネ・キアムコ氏は、「Snapchatのクリエイターサミットやインスタグラムのイベントに何度か参加したが、クリエイターにとって重要なネットワーク構築の場になっている」と話す。「プロジェクトで手助けが必要なときにも、実際に会ったことのある相手であれば連絡しやすい」。また、インスタグラムの開発者と面談して、クリエイターツールについてフィードバックできるのもありがたいという。
インフルエンサーにとって、こういったイベントは各プラットフォームの仕組みや特徴について学び、ブランドへのマーケタビリティを高めるチャンスでもある。「クリエイターは通常、ひとつのプラットフォームからスタートするが、企業側は複数のプラットフォームにまたがるコンテンツを求めている」とキアムコ氏は指摘する。「複数のプラットフォームで展開するほうが、マーケタビリティは高いからだ」。
インフルエンサーにとって、企業とのコラボは収益の柱だ。eマーケター(eMarketer)が2021年4月にクリエイターを対象に行ったアンケートによると、「収益に占める割合として、企業案件がもっとも高い」と回答した米国のインフルエンサーは約7割に上る。「アフィリエイトやプロモコードが主要な収益源」と回答したインフルエンサーはわずか9%にとどまっている。
「いまだに過小評価されている」
一方で、インフルエンサー向けのイベントにさほど価値はないという意見もある。
「インフルエンサーマーケティングは10年以上前から行われてきた。それなのに、今回が初の大規模イベントというのも違和感がある」と話すのがインフルエンサーと商品のマッチングを行っているベンチャーキャピタル、スターファンド(Starfund)でパートナーを務めるジル・エヤル氏だ。「YouTubeやTikTokが、インフルエンサー競争でいかに優位に立っているかがよく分かる」。
eマーケターの2021年1月のレポートでは、米国のユーザーは2020年に1日あたり35分Facebookを使用していると報告する。2019年は33分で、増加傾向にある。インスタグラムも2019年の26分から30分に増えており、TikTokも2019年の26分から33分に伸びた。
「クリエイターはいまだに過小評価されている。今や彼らがコマースに及ぼす影響力は、絶大だ」。
[原文:‘Brands are relying on influencers’: Why Instagram is starting its first training week for creators]
ERIKA WHELESS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)