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インフルエンサーの温床、 Clubhouse 広告利用は是か非か? :「利用しない手はない」

インフルエンサーがいる所であれば、どこにでも広告主は現れる。そして、Clubhouse(クラブハウス)はいま、インフルエンサーの温床となっている。

野心に燃えるソーシャルネットワークはどこも、インフルエンサーについて独自の考えを持っている。それは、かの音声アプリも同じだ。Clubhouseは成功の鍵を握る存在だとして、屈指の知名度を誇るインフルエンサー(Clubhouse用語ではモデレーター[moderator])を40名以上仕込んでいる。同社は彼らにツールを公開し、助言を与え、自社幹部と親交を持たせ、招待オンリーの独占的経験を広めるべく、コンテンツの改善に努めている。

目下のところ、Clubhouseは限定的だ。週間アクティブユーザーは200万人程度となっている。にもかかわらず、このアプリは広告主が喉から手が出るほど欲しいものを提供している――ひとところ集まる、影響力の大きい、的を絞りやすい人々の群れだ。広告主にしてみれば、あとはそこに絡んでいく方法を見つけるだけでいい。

ほかと異なり、Clubhouseは音声ベースのSNSであり、ユーザーはさまざまな話題に関するさまざまな会話に参加できる。要は、パネルディスカッションを自由に出入りできるようなもので、しかもスポンサーによるサンドボックス[許可/不許可]もない。ただし、マーケターにはひとつ、越えるべき壁がある――現状、Clubhouseは無広告、という問題だ。無論、マーケター勢は指をくわえて見ているわけではない。どうするべきか、知恵を絞っている。

ひねり出したひとつの答え

そこでひねり出したひとつの答えが、インフルエンサーとの提携だ。これは、ルーム(部屋)で会話を仕切る人物を広告主がコントロールしている限りにおいて安全であり、押し売りが明らかに場違いな所でのマーケティングを可能にする、もっとも手軽な方法でもある――あくまでも、いまのところは、だが。

同アプリでは、モデレーター(つまり、インフルエンサー)が架空のステージに立ち、誰が、いつ、何について話すのかを選ぶことができる。そして、その会話がアプリのメインフィードに表示されると、潜在的には、プッシュアラートを通じてユーザーへの売り込みにつながる、という仕組みだ。

「このモデルでは、それぞれのルームが広告主にとって、各話題に合うブランドアクティベーションや広告に打って付けのオーディエンス集団となる。基本的には、ルームにいる全員が同じ話題に個人的関心を持っており、そこでの会話への参加を自ら選択したことが確実だからだ」と、インフルエンサーマーケティングエージェンシー、マーカーリー(Markerly)の共同創業者ジャスティン・クライン氏は言う。

「十分に利用しない手はない」

たとえば、仏酒造メーカー、ペルノ・リカール(Pernod Ricard)のコニャック「マーテル(Martell)」がグローバルマーケティングコンテンツクリエイター、カレン・シヴィル氏と手を組み、2021年の米黒人歴史月間[毎年2月]に黒人女性起業家を讃えていた理由もそこにある。月間中の毎週、マーテルとシヴィル氏はClubhouseにおいて、美容ブランドオーナーのスーパ・セント氏、ラッシュ・ヤミーズ・パイ(Lush Yummies Pie)CEOジェニファー・ライル氏、Girl CEO(ガール・シーイーオー)創業者ロン・ブラウン氏、起業家プリマドンナ氏といったゲストを招いた会話を主催している。

「我々はブランドとして、自社コンテンツはもちろん、2月中に行なわれる重要な会話をできるだけ多くの人々にリーチさせる必要があると確信している」と、マーテルのシニアブランドマネージャー、イジー・フセイン氏は言う。Clubhouseで消費者と繋がるためにインフルエンサーの力を借りることで、既存のClubhouseコミュニティを活用するだけでなく、パートナーであるインフルエンサーのリーチを通じて、新規ユーザーにも確実に参加を促すことができる」。

水面下ではさらに、多くのマーケターが同様の契約を狙って動いている。

「インフルエンサーになるのはこれが初めてだけれど、Clubhouseではもうかなり注目されている」と、エンジェル投資家のジン・ユー氏は言う。Clubhouse登録名WolfXLionで活動する氏には、現在、6万人近いフォロワーがいる。

氏が活動を始めたのは2020年11月のことで、それ以来、キンプトン・ラ・ピア・ホテル(Kimpton La Peer Hotel)のほか、美容、テクノロジー、ファッションなど、さまざまな業界の企業と組んでいる。「まだまだ新しくて新鮮だから、Clubhouseに何を求めたらいいのか、ブランド勢はよくわかっていないみたいだ。ただ、そこが重要な場であり、十分に利用しない手はない、ということは皆、わかっていると思う」とユー氏は言う。

現状、マーケター向けではない

ただ、インフルエンサーと手を組むのは、マーケターには良案に思えるかもしれないが、ユーザーにしてみれば、Clubhouse内での押し売りは御免被りたい、というのが本音かもしれない。

「Clubhouse側もそれを牽制する動きを見せつつある」と、広告代理店/マーケティング/コンサルタント会社、ワンダーマン・トンプソン・アトランタ(Wunderman Thompson Atlanta)のコンテンツストラテジースーパーバイザー、シドニー・バスビー氏はeメールで指摘する。「現時点で、Clubhouseはブランドを宣伝するメッセージをプッシュする場としてきわめて友好的な所とは言えないことに、マーケター勢は気づいたほうが良さそうだ」。

ただしそれは、マーケター勢は同アプリ活用法の探索をいますぐ止めるべき、という意味ではない。事実、米スウィーツブランドのミルク・バー(Milk Bar)や米粉末飲料メーカーのクールエイド(Kool-Aid)、ポリティコ(Politico)といったニュースパブリッシャーをはじめ、いくつかのブランドはすでに、自身名義でClubhouseにおける存在感を確立しつつある。

広告主から率直なアドバイス

去るバレンタインデーの直前、バーガーキング(Burger King)やポップアイズ(Popeyes)、ティム・ホートンズ(Tim Hortons)を運営する企業、レストラン・ブランズ・インターナショナル(Restaurant Brands International 〈RBI〉)はClubhouseに初登場し、オープンフォーラムルームにオーディエンスを集め、同社幹部らと次のアーニングコールについて語り合わせた。

RBIのチーフコミュニケーションオフィサー、ダンカン・フルトン氏は有償契約したインフルエンサーをClubhouseで利用するという考えに、いまはまだ納得していないという。同アプリのユーザーから彼らが重視している透明性と信頼性を奪いかねない、というのがその理由だ。

フルトン氏いわく、「ブランドがマーケティング目的で操作しない期間が長ければ長いだけ、Clubhouseもまた、人々が安心して楽しめる会話を生む強力なツールであり続けられる」。

いずれにせよ、目下のところ、マーケターがこのアプリを自由に利用できるようになるのは、まだかなり先のことのようだ。

ユーザーは透明性を重要視している

Clubhouseにはキュレートされた大量のコンテンツや、プロフィール写真の数々、フィルターをかけた諸々の画像といった余計なものが一切ない。それはつまり、このアプリとユーザーが透明性を重要視していることを意味すると、ワンダーマン・トンプソンのバスビー氏は言う。同氏によれば、多層的マーケティングの試みを発見した一部のユーザーはすでに、その事実を公表しているという。なかにはTwitterで同様の苦言を呈する者もおり、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)といったメディアも、たとえば、金融に関する助言の仮面を被った多層的マーケティングを売り込むユーザーに触れている。

Clubhouse側もコミュニティの自警力を上げるアップデートをくり返しており、現在、信頼できるモデレーターにそれを証明するバッジを付与する案も検討していると、バスビー氏は言う。

これらを総合すると、登場から間もない現在、インフルエンサーの積極的利用が見られる一方、Clubhouseはしばらくのあいだ、ブランド色が薄い状態を維持すると思われる。新規SNSの多くがそうだったように、広告とマーケターによるその有効利用云々の話は一番後、ということになりそうだ。

「ユーザーの利用時間は信じられないくらい長い――8時間も聴いている人もざらにいる」と、エンジェル投資家のユー氏は語る。同氏が主催するルームの会話のなかには、50時間に及んだものもあるという。

[原文:‘Because it’s so new and fresh’: It took a minute, but brands are in the Clubhouse app

SEB JOSEPH(翻訳:SI Japan、編集:長田真)