TwitterのCEO(最高経営責任者)のジャック・ドーシー氏は2018年9月、議会における宣誓宣言で、「公開している会話の健全性を向上」させ、ユーザーからの通報に基づいてヘイトスピーチを削除するのではなく、もっと先手を打って対策を講じたいと語った。
TwitterのCEO(最高経営責任者)のジャック・ドーシー氏は2018年9月、議会における宣誓宣言で、「公開している会話の健全性を向上」させ、ユーザーからの通報に基づいてヘイトスピーチを削除するのではなく、もっと先手を打って対策を講じたいと語った。同社のプラットフォームは日々、依然としてブランドセーフティの問題に取り組んでいるが、Twitterは、まずは議会で誓約したことを果たしたい模様だと、マーケターは語った。
「Twitterの社内では、健全性が最優先だと、誰もが言う。そのため、誰もがジャック(・ドーシー氏)からのトップダウンの指令に共感している。Twitterは、Twitterをユーザーの議論の場とし、悪用されないようにし、この場を悪意あるユーザーにとってのツールや武器にはさせない必要があると認識している」と、UMのグローバルブランドセーフティ担当役員であるジョシュア・ローコック氏は語った。
UMのローコック氏は、Twitterが下した「MAU/DAUという測定方法をやめる」決断には、特に驚かされたという。この決断は、自社の数字に影響を与える可能性があるからだ。たとえば、Twitterは、同プラットフォーム全体から偽のアカウントやボットアカウントを削除し、ユーザーのフォロワー数からアクティブでないアカウントを削除する取り組みを繰り返してきた。Twitterは最近、レポートの測定基準を月間アクティブユーザー数ではなく、「マネタイズ可能な」1日あたりのアクティブユーザー数に変更した。
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「これは、ウォールストリート(Wall Street)が気にかけているユーザー数に悪影響を及ぼす可能性があるが、信頼できるプラットフォームをめざすのであれば、正しい手順だ」と、ローコック氏は言う。
人力で調整する方針
Twitterは、ほかの競合他社と同様、人間の調整者を雇用し、より技術的なソリューションの開発を通して、コンテンツに対する調整に投資してきた。同社は、FacebookやYouTubeとは異なり、雇用している人間の調整者数については発表していない。同社の広報担当者はこのチームの人員数の規模に関して話すことは控えた。公式には、ワシントンでのドーシー氏が宣誓証言したときと同様に、同社は組織体制の改善や技術面での投資について議論しているということになる。たとえば、Twitterは2018年の6月に、偽アカウントやヘイトスピーチを含むオンライン上での望ましくない行為を特定する悪用防止サービスのスタートアップ、スマイト(Smyte)を買収した。危害を迅速に特定できる技術は、ニュージーランドで最近起こった銃撃事件のように世界的な危機的事態のときには、特に役立つ。
グループ・エム(GroupM)における、アメリカのブランドセーフティ担当で業務執行役員を務めるジョー・バローネ氏は、ニュージーランドで起こった銃撃事件後、Twitterと協働していると語った。
「(Twitterの)AIや機械学習がYouTubeほど優れているかどうかについてはコメントできないが、Twitterは不正なコンテンツを削除するために同種の機能を豊富に導入している。もう少し広く言うと、プレロールのような製品に関しては、人間が取りまとめをする方式を取っている」と、バローネ氏は言う。
リスクを遠ざけるため
媒体資料に書いているようにTwitterは、ブランドがプレロール広告を購入できる200以上のパブリッシャーをまとめたリストを提供し、パブリッシャーがほかの後援金も得られるような協力関係を構築できるようにしている。これは、リスクを嫌う傾向が強く、自社の独自のコンテンツをあまりツイートしたくない(つまりフィードにおいてヘイト投稿コンテンツに近づくようなリスクになることをあまりツイートしたくない、あるいは自社広告に対する悪意あるユーザーからの返信を受けたくない)ブランドにとっては理想的だ。
Twitterは、リスクを嫌うブランドのために、過去にブランドに対して否定的なコメントをしたアカウントをブラックリストに載せられるようにしている。そのため、それらのアカウントは広告配信のターゲットグループに入らないと、バローネ氏は言う。
また、Twitterは、アプリ内での会話を促進する一環としてオーガニック投稿に対するコメント調整を可能にする機能をテスト中だ。TwitterのNYCオフィスにおける10月のアプリのデモ発表で米DIGIDAYが目にしたこの機能について、ジェーン・マンチュン・ワン氏が2月にTwitter上で取り上げたため、Twitterの上級プロダクトマネージャのミシェル・ヤスミーン・ハク氏が、それに反応した。
7/8 We think the transparency of the hidden replies would allow the community to notice and call out situations where people use the feature to hide content they disagree with. We think this can balance the product experience between the original Tweeter and the audience.
— Michelle Yasmeen Haq (@thechelleshock) February 28, 2019
ミシェル・ヤスミーン・ハク @thechelleshock Mar 1, 2019
6/8 この機能を使えば、会話を開始した人は自分のツイートに対する返信を隠すという選択ができるようになるはずだ。ほかのユーザーは、メニューオプションを介して隠された返信を見られるようになるだろう。このURLのような感じになると思う。
ミシェル・ヤスミーン・ハク @thechelleshock
7/8 この返信を隠す機能に透明性を持たせることで、Twitterのコミュニティは、良いと思わないコンテンツが隠されている状態に気づき、意図を理解できるようになるだろうと私たちは考えている。これにより、元のツイート発言者とオーディエンスのあいだに、提供する製品体験のバランスを取ることができると考えている。
この調整機能はまだ広く一般にはリリースされていない。ハク氏は、この機能が今後数カ月のうちに、公にテストされる可能性があるとツイートした。技術ブランドの社内マーケターは、Facebookやインスタグラム(Instagram)などでも利用可能なコメントを調整するこの機能を、Twitterでも歓迎すると言った。
ブランドセーフティへの評価
このマーケターは実際のところ、Twitterに広告のための資金を投資することには抵抗を持ち続けてきた。彼らはTwitterの健全性や安全性に関する懸念を同社の営業担当者に会話や電子メールを介して繰り返し伝えてきたが、フィードバックのほとんどは十分だとは思えるものではなかった。
「Twitterは誇張的なプロパガンダを何通か送ってきた。その内容は『Twitterがいかに本当に素晴らしく良い場であるか』というものだった。そして最終的に、『なるほど。これはすごい。ドーナツダッド(donut dad)には、数日間お客さんが殺到した。ヘイト投稿と白人優越主義は、人々が死ぬこと、いかれた連中が爆弾を送りつけ、ジャーナリストを殺そうとすることにつながる』とまとめた」と、マーケターは言った。
FacebookやYouTubeの場合とは異なり、マーケターはTwitterで目立った事件が起きた場合、そのあいだは広告資金を引き上げることをためらわなかった。あるマーケターは、麻薬の違法販売を促進するスポンサーツイートがTwitterのプロフィール上に表示されたことを受けて、広告への出資を停止したとアドウィーク(Adweek)に語った。
メディアバイヤー71社に対する最近のDIGIDAYリサーチによると、Twitterは、ブランドセーフティの面の評価では、13のプラットフォームのなかで8位であることがわかった。
エージェンシーの見立て
エージェンシーのマーケターは、ヘイト投稿的なコンテンツには一切関わらないようにしつつ、Twitterを使用することに最善を尽くしているという。アイソバー(Isobar)と提携しているDEGのソーシャルメディア戦略担当アビー・エッケル氏は、彼女のクライアントはTwitterを避けているわけではないが、プラットフォーム上での自社のトーンがブランドに合致していること、また返答先のユーザーが正当なユーザーであることを確認しているという。
「我々は相当な注意を払い、挑発的な文言を投稿する人が、『これは……』と思うような対応をせず、誤った情報に基づく会話に関わらないようにしている。自社と関わりを持った人や、そのような人が以前に私たちとの関係のなかで関わったことに配慮するようにしている」と、エッケル氏は語る。
しかし、ブランドやエージェンシーはTwitter上で自社の行動を管理しようとすることはできるが、マーケターはTwitterがもう一段努力し、白人優越主義などの嫌悪を表すコンテンツを同プラットフォームから削除してくれれば感謝するだろうという。
「Twitterは、すべてのプラットフォームと同様に、ユーザーやコミュニティから通報されたこと以外にも、先手を打ってコンテンツの調整周りの決断を下そうと努力している。すべての企業がほかの企業に先導してほしいと思っており、残りの企業はすぐにそれにならう」と、UMのローコック氏は言う。
これはTwitterだけが抱える問題ではない。すべてのプラットフォームが特定のコンテンツを禁止する編集上の判断をするか、あるいはそのコンテンツを促進する責任を受け入れるかどうかを決定せざるを得ない。
「我々は、プラットフォームがそこへ投稿されたコンテンツを誇張し、ユーザーをコンテンツに引き付けておくように設計されている場合に、プラットフォームをよくわからない媒体手段として扱うことをやめる必要がある」と、ローコック氏は言う。
社会的責任も感じている
Twitterのクライアントソリューション部門のバイスプレジデント、ジーン・フィリップ・マヒュー氏と最近会ったバローネ氏は、同社がこの以前にもまして大きな責任を認識していると考えている。
「ブランドは、大きな問題のあるコンテンツはとにかく存在してほしくないと考えている。我々は好ましくないコンテンツやブランドとは決別したいとは考えているものの、プラットフォームが好ましくないコンテンツをどうすれば削除できるかがより重要であり、社会的責任もさらに重要だ」と、バローネ氏は語った。