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元祖 メタバース プラットフォーム「ハボ」の現在:20年に及ぶ歴史の光と影

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Facebookが社名をメタ(Meta)へと変更し、ロブロックス(Roblox)やエピック・ゲームズ(Epic Games)をはじめとする、メタバース開発企業の仲間入りを果たした。

しかし、「ディープなソーシャルデジタルスペース」というコンセプトは、フォートナイト(Fortnite)やそれに類するものよりも、はるか以前から存在している。ハボ(Habbo)などの初期のソーシャルゲームが、何年も前からメタバースを密かに構築していたのだ。山のようなバーチャルアセットの数々と、何十年にも及ぶ歴史。これらメタバースプラットフォームの尖兵はいま、来るべきバーチャルワールドのシェアを再び勝ち取るチャンスを虎視淡々と狙っている。

2000年代なかばに人気を誇ったハボ

2000年に「ハボ・ホテル(Habbo Hotel)」として開設されたハボは、アーケードゲームを思い起こさせるアイソメトリックな風景のなか存在する、ピクセル化されたアバターとアイテムを特徴とするオンラインコミュニティだ。ハボのユーザーたちは、バーチャルな「ホテル」で自由に交流することができる。これらのホテル内には、全員が利用できるパブリックルームや、特別なデジタルアイテムで装飾できるプライベートルームなどが用意されている。

今年1月、ハボの開発を手がけるスラケ(Sulake)を買収したデジタルエンターテインメント企業、アゼリオン(Azerion)のプロダクトオーナー、ホルヘ・ガルシア・ゲラ氏によれば、ハボの現在の月間アクティブユーザー数は85万人で、総アカウント数は3億2000万にのぼるという。

2000年代なかばの最盛期、ハボはティーンのあいだで大人気を集めていた。筆者もそのひとりで、2007年(12歳のときだ)にアカウントをつくった。当時のハボの粗雑な管理体制は、初期インターネットの典型だった。そして、すぐにハボは悪評を買うようになった。2012年、その悪評はバイス(VICE)の記事「We Met a Pedophile on Habbo Hotel(ハボ・ホテルで小児性愛者と出会った)」でクライマックスを迎えた。

「2010~12年頃と比べると、状況は大きく変わった」と、ガルシア・ゲラ氏は語り、その要因として、ミュートボタンや、24時間体制のモニタリング、個人情報の共有をブロックするワードフィルターなどのセーフティツールの導入をあげた。

「ハボには人生のすべてがある」

また、ハボとともに、そのユーザー基盤が成長したことも大きい。昨年、ハボの「プレジデント・オブ・ファン(President of Fun)」に選ばれたパワーユーザーのPulx(本名:非公開)は、2005年にアカウントを開設して以来、ほぼ毎日、ハボにログインしている。「最近は、18歳以下のユーザーとハボで実際に話す機会はめったにない」と、Pulxは語る。「コア層は20歳以上だと思う」。

今日では、ハボの平均的なユーザー(つまり「ハボ」たち)は、同プラットフォームを単に宿題のことを忘れさせてくれるものではなく、それ以上のものとして利用している。年齢を重ねて知恵を身につけたハボたちは、このプラットフォームを利用して、メタバース度の高い人生を送りはじめているのだ。

「ハボで出会い、結婚し、子どもを授かった人たちを知っている。ハボにはまさに人生のすべてがある」と、Pulxは語る。「私自身もコロナ禍のさなかにハボで、13~14歳のときに親しくしていた人物と再会した。リアルでは他界してしまった人のアイテムが、いまもゲーム内に残っているケースもある。ユーザーたちは時々、その人の部屋を訪ね、故人をしみじみと悼んだりしている」。

ゲームエンジン「ユニティ(Unity)」を使ってリブート版「Habbo 2020」の開発に取り組んできたチームにとっては、こうしたユーザー層の変化や行動の変化がプライオリティになっている。新生ハボの初期バージョンには、アイテム交換などの昔からのある要素が欠けていた。ユーザーたちが抗議の声をあげると、開発チームはそれに合わせてプラットフォームをマイナーチェンジした。

開発チームはまた、ユーザーたちが何十年もかけて集めてきたバーチャルアイテムを、この新たなハボのスペースへ移せるようにもした。アゼリオンのゲームおよびコンテンツ担当バイスプレジデントを務めるジュリアン・バン・トゥーネンブルーク氏は、次のように語る。「本当に美しくて強固なコミュニティだ。住民たちに気に入ってもらえるように、コミュニティの管理に全力を尽くさなければならない。我々の力がもっとも試される仕事のひとつといえる」。

購買力のある大人のユーザーが強み

ハボと同じように、インターネット黎明期から生き残ってきたほかのソーシャルゲームもまた、自身の「メタバースの元祖」という肩書きが持つ価値を認識しはじめている。IMVUは2004年、AOLメッセンジャー(AOL Messenger)内のアバタークリエイターとしてスタートした。現在はメタバースとして市場への売り込みをかける同プラットフォームは、700万人の月間アクティブユーザーを抱えながら、NFT(非代替性トークン)ファッションショーの拠点として、その役割を果たしている。

IMVUのCEO、ダレン・ツイ氏は、次のように語る。「ロブロックスなどのプラットフォームに目を向けると、そのコアの年齢層は9~12歳で、男女比は男性のほうが多い。一方、IMVUのコア層は18~25歳で、その3分の2以上が女性だ。これもまた、IMVUのユニークなところだと思う。特に、メタバースという文脈においては」。

IMVUの売上の大部分を占めているのは、バーチャル衣服や家具のプラットフォーム内販売だ。今後、ユーザーがIMVUに注ぐ時間と関心が増えるのに合わせて、その売上も増えることが見込まれている。「IMVUの売上の半分以上は、1年以上前からIMVUを利用してくれているユーザーによってもたらされている」と、ツイ氏は語る。「それだけIMVUに定着してくれているということだ」。

おそらく、ハボやIMVUなどの昔からあるソーシャルゲームが、注目度で勝る新興プラットフォームに対して持つ最大の強みは、これら先発のプラットフォームには忠実な大人のユーザー基盤がついているという点だ。彼らは、バーチャルアイテムの所有に慣れており、そして多くのブランドのターゲット層でもある。これは、ロブロックスやフォートナイトといったプラットフォームに対する強みといえる。

進みつつあるブランドパートナーシップ獲得

ロブロックスやフォートナイトのユーザーは圧倒的に未成年者が多く、彼らが使えるお金には限りがあるからだ。アゼリオンの事業開発マネージャー、マデロン・スミッテナー氏は、次のように語る。「我々はさまざまなターゲット層にリーチするチャンスに恵まれている。おそらくハボは、ほかよりもミレニアル世代のターゲット層が多いからだ。彼らはハボのプロダクト、ゲームとともに育ってきた」。

ハボはこれまで、積極的にブランドパートナーシップ締結に向けて動いている。今年3月には、コカ・コーラ・カンパニー(The Coca-Cola Company)と提携してファンタを宣伝、同ドリンクを模したバーチャルアセットを配した専用のファンタエリアをプラットフォーム内に設けた。スミッテナー氏によれば、このアクティベーションは「ブラジル向けに行われたもの」だという。「ハボにはさまざまな言語コミュニティがある。したがって、地域に特化したものでも、グローバルなものでもホストすることもできる」。

ー🔴 新たなファーニ(家具)がひとつ見つかる

アゼリオンは、オランダのアパレルおよびライフスタイルブランド、BALRをはじめとするアパレル会社とも提携を行い、バーチャル衣服を制作している。また、フォートナイトなどのメタバースプラットフォームと同じようなバーチャルコンサートもゲーム内で開催している。

重要なのは「経験」の自然な再現

ハボにはいまも、何十万人ものレギュラーユーザーがついている。しかし、ソーシャルゲームがもっとも華々しかった2000年代なかばの栄光の日々は、まだ取り戻せていない。管理体制は強化されているものの、ハボの悪評はいまもかつての一部のユーザーの心に大きくのしかかっている。米DIGIDAYのイベントプログラミングマネージャーで、かつてはハボを頻繁に利用していたケイリー・プロトキンは、次のように語る。「ここ最近のハボに関するTikTok動画をずっと見ているが、悪評を覆すのは難しいと思う。ハボについて目にする噂といえば、児童買春や児童ポルノに関するものばかりだからだ」。

だが、ハボとIMVUが再び手にしつつある成功は、メタバースプラットフォームが成功するためには、巨大なスケールへのリーチは必ずしも必要ではないということを示唆している。むしろ、プラットフォームにとってより重要なのは、アイデンティティの形成と人との交流という経験を正確かつ自然に再現し、そこにコミュニティを築いて、ユーザーに毎日、ログインしてもらえるようにすることなのだ。

両プラットフォームの何百万人というレギュラーユーザーの多くは、10年以上にわたってそこで人生を送ってきた。そしてこの事実が、彼らをそこから立ち去り難くしている。彼らにとっては、そこで過ごす時間を増やすことで、メタバースの世界への関与を強くすることが容易になる。そしてこれが、ブランドがそこにいる彼らにリーチできる斬新で刺激的な手法を生み出すのだ。

[原文:Before Meta, there was Habbo: How social games laid the framework for the metaverse

ALEXANDER LEE(翻訳:ガリレオ、編集:分島翔平)
Photo from Habbo Facebook