「現実を見よ」: Amazon アカウントマネージャー、かかる期待とその実情

有名ブランドのアイウェアの代替パーツを販売するレヴァント・オプティクス(Revant Optics)が2019年、Amazonで知的財産の問題に見舞われたとき、CEOのジェイソン・ボルト氏は、月額2000ドル(約21万円)を支払って、専任のAmazonアカウントマネージャーを利用することに決めた。Amazonサイトから出品を取り下げられるという悪夢のような出来事を経験したあとでは、お金を払ってアカウントマネージャーを利用することは、また何かあったときの「保険」になると思えた。

数カ月後、その「何か」が起こった。知的財産関連のトラブルで、レヴァント・オプティクスの製品1000点以上の出品が取り下げられたのだ。ところが、ボルト氏が連絡したアカウントマネージャーは、トラブルを解決するための答えをもっていなかった。

Amazonで製品を販売する業者にとって、アカウントマネージャーは命綱とみなされている。Amazonで物を売るという「ブラックボックス」の向こう側に本物の人間がいて、個々のセラーの必要に応じて疑問に答え、サポートを提供してくれる。

そうした位置づけにもかかわらず、アカウントマネージャーのプログラムは多くの場合、セラー側の戦略とどのように合致するのかわかりにくく、一貫性を欠くものとなっている。

「当社はAmazonで販売する全商品を管理する担当者を置いて、常に最新の変化に対応できるようにしているのだが、Amazonの変化はあまりに速い」とボルト氏はいう。「速すぎて、Amazonのアカウントマネージャーさえ対応しきれていない。そこがもっとも難しいところだ。当社はルールや新ポリシーを常に順守できるよう、できる限りのことをしている。ルールを順守し、変化に対応できるならと、お金を払ってアカウントマネージャーも利用しているが、例の件ではそれが役に立たなかった。つまり、これだけのリソースを投じても、変化に対応するのは難しいということだ」。

サードパーティのセラーのほとんどが、担当のアカウントマネージャーをつけてもらうのに、売り上げから毎月一定のパーセンテージを支払わなくてはならない。一部のセラーは月に数千ドルを支払っているという。場合によっては、Amazonがセラーと共同で特別なイニシアティブに取り組む一環として、アカウントマネージャーに無料でアクセスできるといったインセンティブが与えられることもある。しかしそのアカウントマネージャーは、販売の最適化を専門とする者もいれば、Amazonの広告事業を利用するセラーを増やし、Amazonの広告収入を伸ばす方法に詳しい者もいる。セラーたちが経験しているアカウントマネージャーのまちまちな対応は、つまるところ、個々のマネージャーの経験や知識の違いによるものだ。

こうした問題は、ベンダーよりも、セラーのあいだで広く見受けられる。Amazon(ファーストパーティ)に商品を卸す販売業者であるベンダーの場合、自動的に担当マネージャーがついて、注文の管理や在庫の選択を行ってくれる。これは従来型の卸売業者との関係に近い。

セラーセントラル(Seller Central)のサポートシステムから、セラーポリシーに関する自動化された回答を受け取る以上のサポートを求めるセラーから見れば、アカウントマネージャーは、競争を有利にするうえでお金を支払う価値のあるサービスだ。

しかし、アカウントマネージャーは万能ではない。セラーのビジネスに影響を及ぼしかねないような問題、たとえばアカウント停止、出品停止、知的財産権の侵害、倉庫在庫の損害などが生じた場合、アカウントマネージャーは、セラーの代わりにカスタマーサービスの問い合わせフォームを開くことくらいしかできない。

問題は、ほかのマーケットプレイスに比べて、Amazonのビジネスが独自の細分化を遂げていることだ。ウォルマート(Walmart)やイーベイ(eBay)などは、どちらも特にセラーへのサポートが充実しているとの評判は得ていないが、通常はAmazonに比べてセラーの売り上げからの取り分が少ない。Amazonの外部では、Amazonに関する専門知識を取り扱うエージェンシーが新たな産業を形成している。多くはAmazonの元従業員が立ち上げたもので、セラーやブランドがAmazonでのビジネスについて理解する手助けをしている。この動きに対するAmazon内部からの回答がアカウントマネージャーだ。しかし、先に述べたAmazonビジネスの細分化により、アカウントマネージャーたちの知識はサイロ化されて共有されない。

アカウントマネージャーの専門知識

Amazonのサードパーティ事業が小売事業を上回るペースで成長するのに伴い、サードパーティのマーケットプレイスセラーと最前線で接するアカウントマネージャーの役割をめぐる問題は、いっそう明白になりつつある。マーケットプレイスの取扱高は直販プラットフォームを超え、2018年の売り上げは1600億ドル(約17.3兆円)に達した。同時に、Amazonはこの事業をより自給自足型のプラットフォームにする動きを進めている。Amazonの優先事項は、セラーの売り上げを最大限に伸ばしつつ、そのためにAmazonに降りかかる面倒な仕事を極力減らすことだ。

Amazonはセラーサービスを拡充し、より詳細な分析やレポート機能などを導入することで、より無干渉な状態を目指している。アカウントマネージャーはコストのかかるリソースであり、Amazonとしては、自社のビジネス全体を前進させるのに役立つリソースの配分をよく考える必要がある。

「現実を見なくては。アカウントマネージャーは適切なチームに問題を回すことはできるが、顧客に代わって問題を解決してくれるわけではない」と、Amazon専門のコンサルタント企業チャンネル・キー(Channel Key)の創業者、ダン・ブラウンシャー氏は述べる。「Amazonでの出品やその売り上げに影響を及ぼす可能性のあるものは数多く、彼らは必ずしもその問題を解決する能力をもたない。Amazonでは白黒はっきりしているものなどなく、すべてが非常にグレーなのだ」。

さらにブラウンシャー氏は、アカウントマネージャーの知識は、新規のセラーにもっとも適したものだと指摘する。より高度なアカウント戦略に関して、アカウントマネージャーがあまり具体的なアドバイスを授けてくれることはない。

「Amazonは、とても役に立つこともある」と、Amazonのサードパーティ向けマーケットプレイスで製品を販売するブランド、グロウ・アンド・メイク(Grow and Make)の創業者、ウィル・ジョンストン氏はいう。「それがすぐに解決できる問題の場合には。しかし、もっと大きな問題になると、たらいまわしにされてしまう可能性もある。彼らは込み入った問題には対応できない」。

Amazonでサードパーティ向けマーケットプレイスを担当するアカウントマネジメントチームの求人情報を見ると、アカウントマネージャーの目標は、セラーネットワーク全体にわたって選択、クオリティ、利便性を向上させることとある。

「彼らは出品の仕方やキャンペーンの実施には詳しく、はじめたばかりのセラーにとっては優れたリソースだ。しかし、アカウントのより技術的な問題となると、彼らに情報や専門知識はない」と、Amazonセラーを顧客とするエージェンシー、カートロジー(Cartology)の創業者であるマイケル・メイハー氏はいう。「Amazonに手助けするつもりはあるが、ただそれに大きなコストをかける気はない。売り上げで劣るベンダーセントラル(Vendor Central)から販売業者を移動させようとしている様子を見ても、Amazonが利益の大きいブランドに注力し、新規セラーよりそちらにリソースを割きたいと考えているのは明らかだ」。

余計なものを取り除く

Amazonのルール変更に伴い問題が発生している。新たな小売戦略の一環として、Amazonはすべてのセラーに、「ブランド登録(Brand Registry)」を行い、公的機関に登録された商標番号を提出するよう促しているのだ。しかし、特定の知的財産権侵害に関して、またブランド登録における商標の捉え方に関して、ルールが変更されているとの指摘が上がっている。あるセラーによると、単一カテゴリーに出品されている製品に商標を付することはできるが、複数カテゴリーに出品されていると、同じ製品であっても商標を付けられないという。侵害を審査するためにひとまず出品を取り下げられれば、ビジネスを失いかねないセラーにとって、これは頭の痛い問題となっている。

前出のブラウンシャー氏は、Amazonは自社アカウントマネージャーの役割に関して誤解を招くようなそぶりは見せていないと指摘する。それでも、Amazonで何かトラブルが発生すれば、そのリスクは大きく、緊張感は高まる。Amazon側の唯一の窓口であるアカウントマネージャーを悪者にするのは簡単だ。

「Amazonは過剰な期待を抱かせてもいないし、誇大宣伝もしていないと思う。ただ、それがAmazonのやり方というだけだ。巨大なビジネスであり、取り扱うセラーの数も商品の数も多い。あれだけハイレベルなサービスを構築して、すべてを迅速に処理する企業はほとんどない」とブラウンシャー氏は語る。

サポート不足を補うために、セラーたちはネットワークを形成し、外部のエージェンシーを雇うことで、自社ビジネスを成長させ、トラブル対応の問題に対処しようとしている。なかには、自社でAmazonに関する知識を増やし、同社と仕事をするコツを身に付けようとするブランドもある。

「つまり、我々のほうでAmazonへの対応能力を高めようと考えたわけだ」と、ライズ・ブリューイング(Rise Brewing)で特別プロジェクトの責任者を務めるライアン・ウィリアムズ氏はいう。「対応が上手くなると、Amazonの目に留まり、Amazonでのビジネスに熱心だということで、特別なイニシアティブへの参加をもちかけられる」。ウィリアムズ氏によると、ライズはAmazonとともにカナダでビジネスを立ち上げるブランドに選ばれた際、初めてアカウントマネージャーをつけてもらったという。「我々は現実的な期待値を設定している。コカ・コーラ(Coca-Cola)でもない限り、自分たちスタートアップのルールではなく、1兆ドル企業のルールに従うしかない」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)