Twitterは以前から実施するとしていた「事前評価プロセス」について7月21日にMRCと契約を締結。実際の開始が確定している。同評価プロセスの目的は、Twitterに対して、MRCという業界基準認定機関がブランドセーフティ測定を行い、プラットフォームとしてのコンプライアンスを評価することにある。
現在、さまざまなSNSプラットフォームで過激派による投稿や暴力・違法コンテンツの蔓延が問題となっている。こういった現状を受け、米国ではジョー・バイデン大統領をはじめ、規制当局、広告主などがプラットフォーマー各社へ問題解決や未然防止策を講じるよう圧力を強めている。たとえばTwitterは問題のあるコンテンツを減らそうと動いており、ジョージア州共和党議員のアカウントを一時凍結したことなどが話題となった。マージョリー・テイラー・グリーン議員のアカウントは新型コロナウイルスワクチンに関する誤解を拡散させているという判断から凍結されたが、ほかにも広告主のブランドセーフティ確保も課題となっており、その手法についてメディアレーティング協議会(Media Rating Council、以下MRC)の承認待ちとなっているなど、かなり積極的な動きが目立つ。一方、Facebookは米DIGIDAYが以前報じたようにかなり後手を踏む状況が続いているが、7月21日になってようやく監査を開始した。
Twitterは以前から実施するとしていた「事前評価プロセス」について7月21日にMRCと契約を締結。実際の開始が確定している。同評価プロセスの目的は、Twitterのタイムラインやユーザーのプロフィール、検索結果に表示するプレロール広告「アンプリファイ(Amplify)」などについて、MRCという業界基準認定機関がブランドセーフティ測定を行い、プラットフォームとしてのコンプライアンスを評価することにある。
監査は時間をかけて、体系的に進められている。2020年12月、Twitterはブランドセーフティ監査実施の重要性を強調し、MRCによるビューアビリティや無効トラフィックのフィルタリング、オーディエンス測定などに関する広告基準評価を受ける旨を発表した。そして今回、TwitterとMRCは、このブランドセーフティの監査の第1段階の詳細について、書面での合意に至った。MRCは運用や処理手順、報告などの面からTwitterが監査を受ける体制が整っているか否かを調査する。Twitterは、その監査手法および結果の公表について了承した。
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Twitterは今回が初のMRCによる監査となるため、実際の監査を開始するにあたり、まず(前述の)事前評価プロセスをクリアする必要がある。MRCの広報担当者は、「Twitterは認定プロセスについて経験が少ないため、(事前評価プロセスは)初心者向け講習のようなものだ」と話す。
Twitterの商品管理担当シニアディレクターを務めるジョナサン・ルイス氏は、7月21日のオフィシャルブログで、「この事前評価の結果を用いて改善点を特定し、MRCが求める基準と乖離がある箇所について、(MRCからの)高度な勧告に従って、適宜是正していく」と書いている。
極めてセンシティブになっているプラットフォーマー
これまでTwitterやFacebookなどのプラットフォーマーは、独自技術やデータプロセスに対する監査に必要なアクセス権限をMRCへ付与することを避けてきた。知的財産やデータセキュリティ、個人情報保護などの漏洩を懸念することはもちろん、競合他社へこの種の情報が流出するのではないかという危惧があったと言われている。
MRCのエグゼクティブディレクター兼CEO、ジョージ・アイビー氏は4月、米DIGIDAYに対して「一部のプラットフォーマーが、アクセス権限について大きな懸念を抱いているのは確かだ」と話している。一方で、こういった「極めてセンシティブになっているプラットフォーマー」も、適格性についての認定を求める以上「自由なアクセス」をMRCに与えなければならないと指摘している。
Twitterは、実は2018年の段階で、ビューアビリティ指標に関するMRCの監査受け入れについて同意している。この事実について、2021年初頭に米DIGIDAYがTwitterの広報担当者に尋ねたところ、「数年前の段階で広告サーバーを再構築する必要に迫られ、MRCによるプロセスを一旦停止する必要があった」と回答している。「この再構築が完了し、2020年末にはこの取り組みについて公にし、その後はMRCと歩調を合わせながら次の段階に向けて継続的に進めてきた」。
米DIGIDAYが2019年3月に実施したメディア購入担当幹部を対象とした調査では、プラットフォーマーごとのブランドセーフティを評価する質問について、Twitterは13のプラットフォーマー中で8番目という評価を受けている。
ついにMRCの監査受け入れに向けて動き出したFacebook
これまでMRCによるブランドセーフティ監査を延期していたFacebookも、7月21日になって、ついに受け入れに向けて動き出した。Facebookの場合は、MRCと連携して事前評価を実施するのではなく、監査に向けて自社内で準備したプロセスを実行している。FacebookはすでにMRCの監査を受けたことがあるため、事前評価の対象とはならない。
Facebookの広報担当者は今回の監査に向けた動きについて、「責任あるメディアに向けた世界同盟(Global Alliance for Responsible Media:GARM)」との関係について言及している。GARMは、サイト上の誤情報や違法商品の販売といった問題に関する質の高いデータを提供している世界的な広告業界団体だ。
米DIGIDAYからの問い合わせに対し、Facebookの広報担当者は次のように回答している。「我々はこれまでGARMと継続的な取り組みを行ってきたが、その一環として7月21日にMRCと協力してコンテンツ収益化ポリシーとブランドセーフティに関する独立監査を開始した。また、このプロセス尊重の観点から、次回のアップデートはこの監査が終わってからとなる」。不測の事態がない限り、監査は2021年末までに完了予定とのことだ。
現在FacebookとMRCが進めているブランドセーフティ監査について注目すべき点として、透明性レポートのためにFacebookが提出するデータはGARMの独自基準に沿ったものではないということが挙げられる。これは、Facebookのブランドセーフティ監査の交渉における焦点となった。以前、アイビー氏は米DIGIDAYに次のように述べている。「Facebookがもし本当に我々の監査を望むのであれば、GARMの透明性レポートの基準に従ったものを提出して監査を受けるべきだ」。少なくとも現時点ではそうなっていない。監査基準について、GARM側の最終決定が行われたのかは不明なままだ。この件について、GARM側からの回答は得られていないが、先んじてFacebookはアーンスト・アンド・ヤング(Ernst and Young)が実施している独自の外部監査を利用することで、GARMレポートの基準を満たしていると、その妥当性を主張している。
一方でTwitterとMRCのブランドセーフティ監査が、このGARMの基準に沿ったものとして進められているのかは不明なままだ。同社に問い合わせたものの、この記事の公開時点で回答は得られていない。
[原文:As Twitter kicks off its brand safety audit with the MRC, Facebook’s finally starts]
KATE KAYE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)