TikTokをペイドメディア戦略の中核に据えるブランドが増えるなか、果たしてこのショート動画アプリで有料化施策を実行すべきかどうかについて、議論が白熱している。TikTokのアルゴリズムは謎が多い。このアプリでバイラルするのは、言うは易く行うは難しだ。
TikTokをペイドメディア戦略の中核に据えるブランドが増えるなか、果たしてこのショート動画アプリで有料化施策を実行すべきかどうかについて、議論が白熱している。
TikTokのアルゴリズムは謎が多い。このアプリでバイラルするのは、言うは易く行うは難しだ。ペプシ(Pepsi)などのブランドは、オーガニック投稿をほとんど取りやめ、ペイドメディア戦略に注力している。一方、コカ・コーラ(Coca-Cola)やスナックブランドのフリトレー(Frito-Lay)などのブランドは、アカウントを休眠状態にしてしまった。
TikTokは月間アクティブユーザー1億人以上を誇る。このアプリでバイラルする方法を見つけ出すべく取り組んでいるエージェンシーは、1億人以上のユーザーのなかで確実にスポットライトを浴びようと、有料広告を選択している。しかし、TikTokの高額な広告ツールはまだほかのソーシャルメディアに匹敵するレベルにないため、エージェンシーは今もオーガニック戦略を続けている。エージェンシー幹部らの話によれば、多くのマーケターは、ペイドとオーガニックの両方を使ったハイブリッドなアプローチでバイラル化を図り、Z世代にクールな印象を与え、ブランドの認知度と売上を急上昇させているという。
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とはいえ、ロンドンに本拠を置くグローバルデジタルエージェンシー、アナログフォーク(AnalogFolk)でエグゼクティブクリエイティブディレクターを務めるサイモン・リッチングス氏は、「オーガニック(戦略)は非常に難しい」と、話す。「川のなかで物事が過ぎ去っていくのを見て、自分たちも小さなイカダで世界に漕ぎ出してみよう、と希望を持つようなものだ」。
TikTokのフィードは投稿で溢れているが、オーガニック戦略は川というより滝に飛び込むようなものであり、成功するにはハイブリッドなアプローチが欠かせないと、リッチングス氏は指摘する。
「オーガニックに投資する意味は大きい」
米DIGIDAYが過去に報じたように、TikTokの広告製品は安いわけではなく、1回のハッシュタグチャレンジで1週間に15万ドル(約1655万円)もかかる可能性がある。バックパックブランドのブレヴィティ(Brevite)は、そのコストに加え、広告製品ツールを微妙に調整していくことも必要になることから、まだTikTokに巨額の広告費を投入する段階ではないと考えている(同社はTikTokでの広告費を公開していない)。
ブレヴィティのマーケティング責任者、ディラン・キム氏は、Facebookやインスタグラムのように、TikTokのフィードでほんの数投稿ごとに有料広告が表示されるようになっても不思議はないと話す。実際、そうなるのは避けられないというのが同氏の考えだ。
「これまで、これらのプラットフォームが我々に教えてくれたことは、初期には素晴らしいオーガニックリーチと素晴らしいユーザーエンゲージメントをもたらし、それらの数値が上向きになれば広告が挿入されるようになる、ということだ」と、キム氏は話す。「ペイド(戦略)で(バイラル化が)うまくいかなかったからといって、そのプラットフォームが完全に駄目だというわけではない」。
また、データプライバシーの脅威もマーケターに迫るなかで、ブランド認知度を高めるにはオーガニック戦略がますます重要になるかもしれないと、キム氏は指摘する。「状況は急速に悪化しており、iOS14などの要因によって今後も悪化し続けるようなら、TikTokのオーガニックに投資する意味は大きくなる」。
TikTokでオーガニック投稿を3カ月間続けたブレヴィティは、64本の動画で合わせて470万回を超える再生回数を達成し、1本あたりの再生回数は平均7万3400回を記録した。また、もっとも人気のある動画は140万回の再生回数を獲得したと、広報担当者は述べている。
ペイドとオーガニックの二刀流戦略
ニューヨークを拠点とするメディアエージェンシー、360iは、オレオ(Oreo)、サワー・パッチ・キッズ(Sour Patch Kids)、チップス・アホイ(Chips Ahoy)といったモンデリーズ(Mondelez)傘下のブランドのために、昨年末からTikTokのオーガニック投稿に取り組み始めた。360iでソーシャルメディア担当アソシエイトディレクターを務めるエデン・リプケ氏によれば、同社はオーガニックなコミュニティ構築と有料サービスの利用という二刀流作戦を展開しているという。
「我々はコメント欄に姿を見せ、リアルタイムでコミュニティとやり取りしている」と、リプケ氏はいう。「有料サービスを利用する機会は常にある。それ(有料サービスの利用)は火の上にガソリンを置くようなものだ」。
TikTokのアルゴリズムは謎が多い。常に、もっとも人々の関心を引く投稿を表示するよう設計されているが、有料広告は再生回数を保証している。とはいえ、この謎めいたアルゴリズムは、TikTokにとってブランドに確実にお金を払ってもらうためのもっとも有効な手段のひとつなのだと、前出のリッチングス氏は述べる。
「ブランドとしての秘密兵器が必要」
アナログフォークは5月初め、英国のカフェチェーン、コスタ・コーヒー(Costa Coffee)のTikTokキャンペーンを展開し、2万5000人以上のフォロワーがいるブランドページでペイド戦略とオーガニック戦略の両方を活用した。このキャンペーンのために、アナログフォークは複数のTikTokコミュニティに合わせた14種類のショート動画を作成し、バイラルの可能性を高めた。そして、これが功を奏し、14本のキャンペーン動画はどれも100万回以上再生され、1本あたりの平均再生回数はおよそ170万回を記録した。
アナログフォークはこのキャンペーンの広告費について明らかにしていないが、広告はオーガニックに投稿されたあと、メディア支出によってさらに拡散されたという。
リッチングス氏いう。「厄介なのは、『ブランドはこうすればいい』といったルールがないことだ。ブランドとしての秘密兵器が必要になる」。
[原文:As TikTok becomes pay-to-play, marketers remain bullish on organic strategy]
KIMEKO MCCOY(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:小玉明依)