IP 侵害に取り組む Amazon と、煽りを食う第三者セラー

顧客とブランドを守るべく、Amazonは今年、マーケットプレイスの偽造販売や未承認セラー問題に対処するための新しい取り組みを複数、導入している。しかしルール変更があまりに早く連続的に行われ、それにまつわる明確なコミュニケーションもないなか、自動でプロダクトが排除されることでサードパーティマーケットプレイスのセラーたちの多くが巻き添えにあっている。

2月にAmazonがローンチしたプロジェクト・ゼロ(Project Zero)はブランド向けに作られたプログラムだ。自社の商標登録をAmazonのブランドレジストリー(Brand Registry)に登録し、プロジェクト・ゼロへの参加を申請したブランドたちは、彼らのプロダクトの偽造品を販売していたり、未承認でプロダクトの販売を行うセラーの停止権限をより大きく与えられる。問題行為に関する取り組みとしてプレスにもアピールがされたプロジェクトであったが、それと同時に、AmazonはIP侵害に関連する新しいルールをセラーたちに発表した。これは長年の経験を積んだセラーであっても、遵守するのが難しい、カテゴリーごとに異なる、適応されるルールの特定が難しいものとなっていた。ブランドの名前がどこで、どのような形で使われるか、どの画像がプロダクトのリストに使えるのか、そしてプロダクトの描写はどのようにされるべきか、に関して詳細に限定を示すものとなっている。ルールはカテゴリーごとに異なっており、未承認プロダクトはアルゴリズムで自動で一気に排除できる可能性を持っている。

「Amazonは違法セラー対策をブランドとAIによる仕事として移行した。彼らが必要としているのは、より多くの人々が対策を行い、監視をすることだ。AIの役割は大きいが、すべてを出来るわけではない」とマーケティング、プロダクト・コンサルティングのメダフォース(Metaforce)共同ファウンダーであるアレン・アダムソン氏は言う。

レヴァントが被った災難

レヴァント・オプティクス(Revant Optics)のCEOであるジェイソン・ボルト氏は現時点だけで、潜在的な商標侵害の名の下にAmazonから3000以上のプロダクトが取り下げられており、失われた収益は約1万ドル(約100万円)になる、と述べた。レヴァント・オプティクスは、オークリー(Oakley)やレイバン(Ray-Ban)といったサングラスやメガネブランドの交換用レンズをAmazon上のeコマース店舗で販売している。Amazonでは6万件のプロダクトリストを抱えており、ビジネス全体の35%はここからの収益となっている。Amazonでの販売は今年で8年目となる(レヴァントは収益の数字は明かさなかった)。1月に彼らの300のアイテムが取り下げられたあと、ボルト氏は弁護士を雇い商標登録に関する法律を提示した。それによると、上記のブランドのための公開用パーツを会社が売ることができる、ということだった。その結果、11日後にアイテムのリストは回復された。これは4万ドル(約400万円)ほどの売上損失となった。

レヴァントはフルフィルド・バイAmazon(Fulfilled by Amazon)を通じて販売をしている。この件のあと、月額約2000ドル(約21万円)を支払い、自分のアカウントを専門に扱うマネージャーを雇った。今後、同様の問題が起きたときに助けてもらうためだ。しかし6月には再び、米国Amazonから約1000のプロダクトが取り下げられ、海外のAmazonでも1600のプロダクトが追加で取り下げられた。レヴァント担当のアカウント・マネージャーはこの取り下げの理由が何かは特定できなかったが、タイトル、プロダクトの描写、画像の調整を行うことでリスティングの回復をするよう提案したという。しかし、これは上手く行かなかった。ボルト氏はjeff@amazon.comへとeメールを送った。このメールアドレスに送られた質問はエグゼクティブ・サポートチームへと転送され、反応が返ってきた。

レヴァントに起きた問題の原因は、レヴァントが属しているカテゴリーに対する新しい商標関連のルールだった。しかし、このカテゴリーがなぜか、靴となっていたのだ。Amazon側ではレヴァントがなぜ靴のカテゴリーに分類されているのか、理由が分かる人はいなかった。とはいえ、靴カテゴリーのルールが原因で、ブランドの名前やプロダクト・タイトル、描写を載せることができなくなっていたのだ。レヴァントのプロダクトは金曜には回復したが、失われた収益を補填することはAmazonは拒んだ。彼らは商品取り下げをまず行ってから、問題解決に取り組むというポリシーに従っていたからだ、というのが彼らの理由だ。

「eコマース・プラットフォームという点では、Amazonは私たちにとって非常に重要なパートナーだ。しかし、あまり依存しすぎても良くない、という気付きを得た。コミュニケーションが改善されない限りは、そういう状態が続くだろう」と、ボルト氏は言う。

Amazonのサポートの迷路

レヴァントはひとつのブランドに過ぎないが、ほかにも類似の問題を経験しているセラーたちは存在する。彼らもまた、サイトから商品が取り下げられた理由が特定できず、満足できる回答を得られずにAmazonのサポートの迷路に迷い込んでいる。しばしば、彼らはFacebookやリンクトイン(LinkedIn)の各種グループに参加し、質問をすることで、彼らのアカウントに何が起きているのかを探ろうとしている。ポップソケッツ(PopSockets)はAmazonプラットフォーム上の未承認セラーたちを訴訟するというアクションに出た。こういった直接的な行動に出るブランドもいるなかで、Amazonに働きかけをしてグレイゾーンのマーケット・セラーたちを駆逐するべく専門の企業を雇う会社もいる。Amazonのアカウントマネージャーはブランドたちがスケールするための主要な役割を担っていると売り込まれたが、多くの人々がアカウントマネージャー自身も状況を理解できておらず、役に立たないと述べている。

本稿についてAmazonはコメントを返さなかった。

「ルールに従って運営をして、自分でできる範囲での慎重な行動をとったうえで、そのことを証明するために何週間も戦わなければいけない唯一のプラットフォームがAmazonだ。ブラックボックスだ」と、商標違反を理由に商品を取り下げられた後、回復したセラーのひとりは述べた。

「だが、そこには顧客がある」

Amazonがプラットフォームを再構築するなかで、ビジネスの量を最大化するために干渉しないアプローチを取りつつある。それによってベンダー・マーケットプレイスにおける利益率を伸ばそうとしている。大手による強力なプラットフォームが物事の優先順位を変えようとするときは常に、プラットフォームに依存しているセラーたちがその変化のダメージを負わされているように感じる。しかし、ほとんどのセラーがAmazonに残る予定だと語った。

「ブランド・レジストリーはまだ改善の余地が多く残されており、商標侵害の疑いがある場合、セラーとブランドの両方にとって難しい状況となる。インターフェイスは非常にベーシックなもので、非常に混乱を招くようなシステムがある。より大きな投資と注意が必要だ。しかし、Amazonには顧客がある。そのためブランドがリーチを拡大したいと考えているのであれば、Amazonが彼らの目的地となるだろう」と、マークル(Merkle)のAmazon部門シニアディレクターであるトッド・バウマン氏は言う。

Hilary Milnes(原文 / 訳:塚本 紺)