Amazonは米国時間の4月29日夜、2021年度第1四半期決算を発表した。報告書冒頭の決算概要には、多岐にわたる当期の業績が広範に網羅されている。全体的に見ると、当期の総売上高は前年同期比44%増の1085億ドル(約11.7兆円)だった。Amazonが小売以外への事業の多角化を加速させている。
Amazonが小売以外への事業の多角化を加速させている。
Amazonは米国時間の4月29日夜、2021年度第1四半期決算を発表した。報告書冒頭の決算概要には、多岐にわたる当期の業績が広範に網羅されている。全体的に見ると、当期の総売上高は前年同期比44%増の1085億ドル(約11.7兆円)だった。コロナ禍の勃発以来、前年同期比を分析できる最初の四半期であるため、非常に意味深い決算期となった(2020年第1四半期の期末は、パンデミックが米国を襲った時期にぴたりと重なっている)。
主力のネット通販事業の売上高は529億ドル(約5.7兆円)にのぼり、さらに、セラーサービス、サブスクリプション、AWS、広告販売を含む小売以外の事業部門も、前期に続いて大きな躍進を遂げた。eコマースの世界では、競合他社が着実に地歩を固める一方で、Amazonは新しい領域での事業を順調に進めている。しかも、その利益率の高さは注目に値する。当期の純利益は81億ドル(約8800億円)で、前年同期の25億ドル(約2720億円)から3倍以上の大幅増を記録した。
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Amazonの2021年第1四半期決算報告の概要と、競合他社との比較を以下にまとめる。
Amazonの広告部門は主要な収益源
Amazonは広告収入の詳細を明らかにしていない。だが、広告収入が大きな割合を占める「その他」の事業部門の売上高は、前年比73%増の69億500万ドル(約7500億円)にのぼった。
いまやAmazonは、GoogleとFacebookに次ぐ米国第3位のデジタル広告プラットフォームに成長した。広告事業の成長は、Amazonにとって特に重要だ。というのも、広告収入は利幅の薄い小売部門の収益を補い、また多くの場合、即日配送のコストを補う原資でもある。
「Amazonにとって、広告は極めて戦略的な事業だ。Amazonが広告事業から得る営業利益率や利益は、基本的にあぶく銭と言っていい」。そう指摘するのは、パーペチュア(Perpetua)の成長担当バイスプレジデントを務めるアダム・エプスタイン氏だ。Amazonの広告事業の利益率がこれほど高い理由のひとつは、「広告を掲載するのにコストがまったくかからない」点にあるという。現に、オンラインマーケットプレイス、IMDb TV、Amazon Fire TVを展開するAmazonは、広告を配信するためのスペースをすでに所有している。
エプスタイン氏によると、Amazonのマーケットプレイスに掲載される広告の量も飛躍的に増えているという。Amazonは、この1年で、「スポンサーブランド動画広告」や「スポンサーディスプレイ広告」など、複数の新しい広告商品を導入した。以前、Amazonの商品詳細ページに広告はなかったが、「いまでは、すべての商品詳細ページの非常に目立つ場所に3つの広告ユニットが設置されている」という。
Amazonはブランド認知を促すための、いわゆるトップファネルの広告商品を急ピッチで充実させている。特に、IMDb TVやFire TV、Amazon Prime Video(プライムビデオ)の「サーズデイ・ナイト・フットボール(Thursday Night Football)」に配信されるOTT動画広告は、広告出稿企業から特に大きな関心を集めている。OTT広告は、一般的なテレビ広告に準ずる大規模なリーチを提供するだけでなく、洗練されたデータに基づく精度の高いターゲティングを可能とする。「Amazonの広告部門にとって、OTTが最優先の広告商品であることは間違いない」とエプスタイン氏は述べている。
サードパーティセラーは依然としてAmazonの重要な収益源
Amazonは4月初め、小売事業の売上総額に占めるサードパーティセラー(Amazonのeコマースプラットフォームに出品する外部事業者)の比率が60%近くに達すると発表した。この比率はここ数年、比較的安定しているが、それにもかかわらず、Amazonのセラーサービスの売上高は急増している。
「セラーサービス」は、販売手数料やフルフィルメントサービス手数料をはじめ、外部の販売事業者がAmazonに支払う各種の手数料をまとめた広範なカテゴリーを指す。当期のセラーサービス収入は、前年同期比60%増の237億ドル(約2.5兆円)だった。
「サードパーティセラーは非常に重要だ」。Amazonセラー向けに販売支援ツールを提供するジャングルスカウト(Jungle Scout)で、カスタマーサクセス部門を統括するダニー・ヴィラレアル氏は、米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)が以前に行った取材でそう述べていた。「ウォルマート(Walmart)など、最大手のマーケットプレイスは、サードパーティセラーがAmazonの成功に果たしてきた貢献を理解しており、彼らのような外部事業者の受け入れを急ピッチで進めている」。
サードパーティセラーの獲得を狙うのはAmazonだけではない
190万社のサードパーティセラーを擁するAmazonが、その優位性をすぐにも失う危険はない。とはいえ、競争は激化している。
Facebookは4月の決算報告で、マーケットプレイスの月間訪問者数が10億人の大台を突破したと発表した。中小の企業がFacebook上で商品を直接販売できる「Facebookショップ(Shop)」も、参加する外部事業者が100万社を超えた。また、Facebookは昨年末にWhatsApp(ワッツアップ)にもショッピングカートを導入したが、同社の報告によると、こちらの注文件数もすでに500万件を超えているという。
一方、ショッピファイ(Shopify)は、同社が提供する買い物アプリ「ショップ(Shop)」の登録ユーザー数が1億700万人を突破したと発表した。顧客はShopifyの加盟店で行った注文を、このアプリで確認および追跡できる。総売上高は9億8860万ドル(約1074億円)で、前年比110%増となったが、それでもAmazonの稼ぎに比べれば、その足下にも及ばない。一方、当期の流通取引総額(GMV)は前年から倍増し、373億ドル(約4兆円)となった。調整後の売上総利益は5億6510万ドル(約614億円)だった。
ショッピファイもFacebookも、程度の差こそあれ、どちらもAmazonの競争相手になりつつある。それぞれの決算報告は、両社が近い将来、eコマースの強力なプレイヤーとなるであろうことを示唆している。それでも、エプスタイン氏は、彼らのあいだでただちに顧客の奪い合いが起こるとは考えていない。
「米国では、総売上高に占めるeコマースの比率は、中国のような成熟した市場に比べて、依然大きく見劣りする」とエプスタイン氏は述べている。したがって、最大の課題は、すでにオンラインで買い物をする人々を奪い合うことではなく、eコマースのパイ自体を大きくすることだ。「そこには数兆ドル規模のビジネスチャンスがあり、繁栄と成長の機会はどのプレイヤーにも開かれている」。
[原文:Amazon’s profits are big, but competition is heating up]
Michael Waters(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)