2020年の9月、Amazonはラグジュアリーストア(Luxury Stores)をローンチした。これは、ラグジュアリーブランドたちに対する、長く待たれたAmazonからの回答である。しかし、6カ月が経過し、その品揃えに依然として大手ブランドは含まれておらず、極度に排他的な手法は成長を阻害している。
2020年の9月、何カ月もの憶測と報道のあと、Amazonはラグジュアリーストア(Luxury Stores)をローンチした。これは、同社の通常プラットフォーム上で販売することを固く拒否しているラグジュアリーブランドたちに対する、長く待たれたAmazonからの回答である。ラグジュアリーストアは、大成功したTモール(天猫)のラグジュアリー・パビリオン(Luxury Pavilion)に似たデザインが与えられている。ブランドイメージを守りたいと考えるラグジュアリーブランドに、通常のAmazonプラットフォームから切り離されたセクションを与え、好みに合わせたカスタマイズ機能や、彼らと買い物客に対する高級感を提供している。
しかし、ローンチ時にはオスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar de la Renta)だけがブランドとして参加しており、多くの人から期待外れだと考えられていた。当時、アナリストらは、米DIGIDAYの姉妹サイトであるグロッシー(Glossy)に対し、Amazonが(買い物ができる顧客を限定する)排他性を高級ブランドに提供しようと過剰な修正を行った可能性があり、主要な高級ブランドからの関心がないことは良い兆候ではないと語った。
それから、6カ月が経過し、Amazonはラグジュアリーストアにおける新ブランドのローンチに関して一定の進展を見せているが、その品揃えに依然として大手ブランドは含まれておらず、極度に排他的な手法は成長を阻害している。Amazonは、ここ数年で動画ストリーミングサービスが軌道に乗ったように、新規のビジネスカテゴリーに勢いを持って参入するパターンを築いてきた。だが、ラグジュアリーストアは、まだほかの高級品に特化したeコマース企業に対する脅威にはなっていないことは明らかだ。
Advertisement
いまだ不在の超高級ブランド
この半年でAmazonはラグジュアリーストアにローランド・モレット(Roland Mouret)、ラ・パーラ(La Perla)、アルトゥザラ(Altuzarra)、クレ・ド・ポー(Clé de Peau)、カーシュー(Car Shoe)、リヴィーヴ(RéVive Skincare)、マーク・クロス(Mark Cross)、ザ・コンサーバトリー(The Conservatory)、エリーサーブ(Elie Saab)の9ブランドを追加した。このいくつかのローンチの際に専用のマーケティングキャンペーンでサポートした。同社はローランド・モレットとアルトゥザラの短編ファッション映画に資金を提供し、これらの作品はラグジュアリーストアで上映されたほか、マーク・クロスとザ・コンサバトリーにはクリスマス・ギフト・セクションを提供した。
Amazonは、ラグジュアリーストアの具体的な売上と視聴者数の伸びについては明らかにせず、幹部からのコメント提供も断った。しかし同社の広報担当者によると、すでに参加している高級ブランドから肯定的なフィードバックを受けており、そのほとんどが、参加以来、新しいコレクションや新しいカテゴリーを介して同プラットフォーム上での製品提供を拡大しているという。これまでにもっとも売れたブランドは、オスカー・デ・ラ・レンタ、リヴィーヴ、カーシュー、ラ・パーラだという。
ラグジュアリーストアの目玉ブランドのいくつかはよく知られているが、eコマース企業クォンティファイド(Kwontified)の共同創設者であり、Amazonの元従業員であるエレイン・クォン氏によると、Amazonはまだ知名度がはるかに高い超高級ブランドは手に入れていないという。
クォン氏は、「グッチ(Gucci)のようなブランドがあれば、このプラットフォームに非常に良い第一印象を与えただろうが、そのようなブランドがなければ、彼らのゴールが何かを言うのも難しい」と話した。「今のところ、ラグジュアリーストアを小規模なものとして想定しているのかもしれない。しかし、彼らがまだもっと大きなブランドを持っていないことに私は驚いている」。
Amazonがラグジュアリーストアを開発する際に明らかにモデルにしたとクォン氏が指摘するラグジュアリー・パビリオンの場合は、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)やヴァレンティノ(Valentino)などの有名ブランドとともにローンチした点は特筆に値する。ファーフェッチ(Farfetch)のCEOであるホゼ・ネヴェス氏は、2月のタイム(Time)とのインタビューで、Amazonを脅威とは考えていないと述べている。
アクセスの悪さが大きな課題
昨年12月、マーク・クロスのCEO、ウルリック・ガーデ・デュ氏はウィミンズ・ウェア・デイリー(Women’s Wear Daily)に対し、Amazonのプラットフォームに参加した動機のひとつは同社の2日配送を利用して「より多くのオーディエンスに届く」ことだったと語った。しかし、クォン氏によると、ラグジュアリーストアの非常に高い排他性が、同プラットフォームのリーチを阻んでいるという。(1億人以上存在する)Amazonプライム会員のうち、同社からの招待を受けたユーザーだけがラグジュアリーストアを利用できる。Amazonはローンチ以来出された招待状の数を明らかにせず、ガーデ・デュ氏はこの件についてコメントを避けた。さらに、ラグジュアリーストアはモバイルアプリを通じてのみ利用可能で、アプリのホームページの「プログラムと機能」セクションにある。
権氏は、次のように述べた。「ブランドがAmazonで苦戦しているもっとも困難な障害のひとつは、(顧客に)見つけてもらうことだ。ブランドたちは、広告などにお金を支払い、常に他社よりも良いオーガニック検索ランキングを獲得しようとしている何十億ものほかのプロダクトと競争している。でありながら、意図的に自らをそこから分離させようとする高級店専用のページがあるとすると、どう折り合いをつければ良いのか。顧客が見つけてアクセスできる、簡単で永続的な方法をホームページに導入する必要がある。この(ホームページとの)繋がりがなければ、ページは埋もれて隠れてしまう」。
[原文:6 months in, Amazon’s Luxury Stores remains stagnant]
DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)