Amazonはビデオ制作会社をリクルートし、コンテンツをAmazonのプラットフォーム上で配信するように働きかけている。制作会社たちは配信開始1日目からマネタイズできるという。新しいコンテンツをはじめて配信する場所として、Amazon プライム・ビデオを選ぶ会社も現れてきた。
Amazonはビデオ制作会社をリクルートし、コンテンツをAmazonのプラットフォーム上で配信するように働きかけている。制作会社たちは配信開始1日目からマネタイズできるという。新しいコンテンツをはじめて配信する場所として、Amazon プライム・ビデオを選ぶ会社も現れてきた。
先日、コメディビデオ制作のファニーオアダイ(Funny Or Die)は新作コメディシリーズ『ザ・リアル・スティーブン・ブラット(The Real Stephen Blatt)』をプライム・ビデオで配信開始。全8話からなるこの短編シリーズにとっては、プレミアプラットフォームとなった。今月頭には別のコメディスタジオ、ジャッシュ(Jash)がプライム・ビデオ上で新作コンテンツを発表している。『ノーム・マクドナルド・ライブ(Norm Macdonald Live)』という題のこのコンテンツは、有名コメディアンのノーム・マクドナルド司会によるトーク番組形式のビデオポッドキャストとなっている。
デジタルパブリッシャーのハウスタッフワークス(HowStuffWorks)が、今春プライム・ビデオに参加したのも記憶に新しい。『北アメリカ大ロード・ラリー(The Great North American Road Rally)』を含む、長編ドキュメンタリー8本をリリースしている。
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「最初の窓口」となりつつある
上に挙げたファニーオアダイとハウスタッフワークスはどちらも、新作コンテンツをプライム・ビデオ限定で配信している。ジャッシュの『ノーム・マクドナルド・ライブ』は、YouTubeやほかのプラットフォームで生放送されるのと同日に、プライム・ビデオで配信が開始される。つまり、ビデオ形式のコンテンツや短編映画などを制作するデジタルビデオのプロデューサーたちにとって、Amazonは効率的に収益を得るための「最初の窓口」となりつつあるのだ。そして、その数は増えつつある。
ジャッシュはサラ・シルバーマンやマイケル・セラ、レギー・ワッツといったアメリカの人気コメディアンたちによって支援されているコメディスタジオだ。そこの共同ファウンダーであるミッキー・メイヤー氏は言う。「最初の配信プラットフォームにAmazonを含めるのは、我々にとっては『ノーム・マクドナルド・ライブ』がはじめてになる。これまでAmazonのことは、既存コンテンツの保管場所のように認識していた、YouTubeで流すのと同時にAmazonにアップロードするのは、今回がはじめてだ」。
去年、Amazonはビデオ・ダイレクト・プログラムをローンチした。それによってビデオの所有者がコンテンツをAmazonのプラットフォームに自由にアップロードできるようになった。このサービスの利用者は、マネタイズのオプションを複数持つことになる。ほとんどの利用者が自分のコンテンツをプライムのストリーミング・プラットフォームで見られるようにし、人々の視聴時間に応じて収益を受け取る方法を選んでいる。アメリカにおいては1時間の視聴に対して15セント、海外では6セントをAmazonは払っており、コンテンツはAmazon限定でなくても良い。つまり同じコンテンツを使って、ほかの場所で収益を得る一方で、Amazonでも同時に収益を得ることができるわけだ。
YouTubeを上回る潜在能力
ジャッシュがAmazon ビデオ・ディレクトに参加したのは去年だが、それ以来400時間分ものコンテンツをプライム・ビデオにアップロードしている。収益額は教えてはくれなかったが、ジャッシュによると、ほかのプラットフォームと比べてもAmazonからの収益は大きいという。ほかにもハウスタッフワークスのようなパブリッシャーたちは、YouTubeのプレロール広告からの収益を上回る潜在能力をAmazonビデオ・ディレクトは備えていると言っている。
このような経緯から、『ノーム・マクドナルド・ライブ』の新シーズンをAmazonでプレミア配信することに決めたのは、ジャッシュにとっては自然な決断だった。メイヤー氏によると同番組にはサラ・シルバーマンやジェリー・サインフェルド、そしてデービッド・レターマンといった有名なコメディアンたちがゲストで登場する。AmazonとYouTubeの両方で配信することで、初日から、追加コストも必要なくひとつのコンテンツを2カ所でマネタイズすることができるのだ。
「多くのビデオ会社にとって、特に小さい会社にとってはビデオ・ダイレクトは賢い選択肢だ。広告サポート形式、購入形式、そしてサブスクリプションモデルといろいろな形式を試験的に試しながらも広範囲のリーチを獲得できるからだ」と、メディアコンサル企業クリエイティービーメディア(Creatv Media)のファウンダーであるピーター・ツァーシー氏は言う。
成果が挙げればボーナスも
『ザ・リアル・スティーブン・ブラット』はどうだろうか。これはファニーオアダイがAmazon上でプレミア配信する、はじめてのコンテンツとなる。人気俳優ジャスティン・ロングが出演する、このシリーズの主人公は16歳の男の子だ。彼は誕生日にiPhoneを受け取ったことがきっかけで、ソーシャルメディアに病みつきになってしまう、という内容だ。
Amazonによると視聴時間という点では、ファニーオアダイはビデオ・ダイレクトのもっともパフォーマンスの良いデジタルパートナーだという。そのようなこともあり、ジャッシュと同様、Amazonで新コンテンツをプレミアすることは簡単な判断であったようだ。
同様に、Amazonで人気のハウスタッフワークスのドキュメンタリーだが、その多くは10分から20分の再生時間に収まっている。Amazonはパフォーマンスが良いコンテンツを抱えるパートナーにはボーナスを支給している。こういったAmazonからの収益が加わったことで、ハウスタッフワークスやほかのビデオ会社たちは、いかにAmazonをビデオ配信のポートフォリオに組み入れていくかを真剣に検討するようになった。
Amazonであれば妥協は不要
以上のような理由に加えて、Amazonに並ぶハイクオリティの映画やテレビと並んでコンテンツが表示されるというメリットもある。ハウスタッフワークスの最高コンテンツ責任者であるジェイソン・ホック氏は、「素晴らしい映画やテレビ番組を人々が見るようなプラットフォームに並べるのはすごく良い。我々にとってはそれはすごく魅力的だ」という。
Amazonで新しいコンテンツを配信することでデジタルビデオ会社たちは、これまで映画やテレビだけが活用してきたビジネスモデルを試せるようになった。タイトルごとにプラットフォームに表示させてみて、それぞれ独立した複数の収益源を生み出すということだ。Amazonで独占配信して、後日YouTubeといった別プラットフォームで配信するということも可能だ。これによって同じビデオでふたつの収益ラインを生み出すことができるのだ。
「Amazonであれば、クリエイティブという点で何も妥協せずに配給のコントロールをすることができる。我々自身のリソース以外には拡大することを止める理由は無い」。
Sahil Patel(原文 / 訳:塚本 紺)