Amazon 、「販促予算」の獲得に 着実な成果

Amazonの検索ビジネスの成長によってダメージを受けているのは、Googleだけではない。

eコマース、そしてメディア・エージェンシーの情報源によると、広告主のなかには、それまではウォルマート(Walmart)やテスコ(Tesco)といったスーパーマーケットに費やしていた支出を、Amazonでの広告購入へと回すようになっているという。広告の半分はAmazonとなっているところもある。

モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)のアナリストたちは、アメリカにおける店舗内プロモーションやクーポンに費やされる支出が1780億ドル(約19.5兆円)だと推計している。こういった支出カテゴリーは、これまでAmazonにとっては、広告主がテレビやプリント、検索に費やす支出よりも獲得が難しいとされていた。しかし、現状起きている変化によって、Amazonがこの分野に費やされていた支出を奪っていっている。

従来のメディア予算、オンライン予算は広告主のマーケティング部門によって扱われる。しかし、購買客マーケティングはトレード部門で扱われる。特に消費財ビジネスにおいては、リテーラーと直接取り引きをするためにその傾向が強い。広告主におけるこの構造が一因となって、これまでは購買客マーケティング予算はAmazonとGoogleの手が届かないところで使われていた。しかしオンラインでのセールスが増えることで、この予算をどのように使うべきか、広告主たちは再検討し始めているのだ

「Amazonのマジック」

大手消費財・広告主の場合、Amazon広告の60%ほどを購買客マーケティング予算から出す傾向にあると、元Amazonエグゼクティブであり検索広告プラットフォーム、ダウンストリーム(Downstream)のファウンダーであるコナー・フォーリー氏は言う。より小規模な広告主の場合は、マーケターが購買客マーケティング予算と一般マーケティング予算の区別を必ずしもつけないため、この割合は25%ほどに下がる。広告主はますます、購買客マーケティング予算をオンラインで支出しつつあるのだ。そして、増えた分はほとんどが、Amazonの検索広告へと向かう投資だと、彼は加えた。しかし、クリテオ(Criteo)のようなアドテクベンダーやウォルマートやターゲット(Target)のようなリテーラーたちはますます、ここに入って行こうとしている。

リテールパフォーマンスエージェンシーであるCPCストラテジー(CPC Strategy)では、購買客マーケティングの案件はAmazonで広告主が費やす支出の65%が使われる場合もあれば、10%程度のこともあると、マーケットプレイス・チャンネル部門のシニアマネージャー、ナンシー・リー・マコーリン氏は言う。CPCストラテジーはいま、エリートSEM(Elite SEM)の一部となっている。

「メディア在庫を販売時点まで近づけたことに、Amazonのマジックがある。広告主たちは、Amazonを従来の意味でのマーケティング費用とは捉えていない。Amazonはむしろ利益を生むセンターとなっている。限界収穫逓減の範囲内で、彼らはAmazon上での支出を最大限に増やしたいと思っている」と、アイクロッシング(iCrossing)のマネージングディレクターであるアリステール・デント氏は言う。

予算管理で社内が混乱

グローバル消費財広告主のメディア部門責任者だったデント氏にとって、購買客マーケティング予算をAmazonで使い、成長につなげることは単純ではないようだ。

3年前であれば、Amazon上の広告の予算をビジネスなどの部門が出して管理するか、社内での混乱があったという。当時は、eコマース部門、カテゴリー部門、デジタル部門、そしてマーケティング部門すべてが、それぞれAmazonの異なる部門と直接取引をしていた。ときには、マーケターのメディアエージェンシーがAmazonと広告契約の交渉をするなかで、カテゴリー部門の同僚たちが取り付けた在庫コミットメントについて、まったく知らされていないという事態も起きた。メディアとセールスに関するこういったコミットメントが広告主によって統一して理解されていない場合、予算の無駄遣いにつながった。そのため、どのようにAmazon上での広告に予算を回すか決定するため、セールス、トレード、コンテンツ、サプライチェーン部門のエグゼクティブたちがチームを作りはじめたのだ。

「私が勤務していた消費財企業が年間にマーケティングと広告に費やす支出において、店舗内プロモーションは約70%を占めていた。結果、Amazon上に費やされる支出がより大きいものになった。Amazonで支出するため、デジタルの外から新しく予算を見つける必要があった。Amazonで展開したキャンペーンのうちいくつかは、予算の約3分の2が購買客マーケティング部門から来ていた」。

ほかの広告主たちの動き

ほかの広告主たちも同様の動きを見せている。

P&G、ユニリーバ(Unilever)、コカコーラ(Coca-Cola)、まず、そしてペプシ(Pepsi)といったグローバル消費財企業の多くは、確立されたeコマースの存在なしには、Amazon上のメディア支出は効率性が下がると理解できているリテール専門家たちを追い求めている。エージェンシーたちもまた、同様の投資を行いつつある。マインドシェア(Mindshare)は欧州、中東、アフリカにおいてクライアントの代わりにそれを行っており、過去6カ月で見られるWPPと電通イージス(Dentsu Aegis)からのeコマースに中心を据えたコンサルタンシー拡大などもその例だ。これまではバイイング側では、Amazon広告を購入するための支出がどこから来るべきか、必ずしもわかってはいなかった。とにかく、より多くの広告を購入しなければいけない、ということを知っていただけだと、過去に消費財広告主と仕事をしたことがある、スパロー・アドバイザーズ(Sparrow Advisers)のプリンシパルであるマージャ・ミリセビック氏は言った。

「広告業界は購買客マーケティングの実態に追いつきつつある。しかし、Amazonはすでに積極的に消費財広告主に売り込みをかけており、こういった支出をさらにオンラインへと動かすにはどうしたら良いかを示している」と、ミリセビック氏は語る。

Google検索との違い

検索広告の購入において、AmazonとGoogleの違いを理解しきれていない広告主は多い。大手の広告主は、ときには50%にも上る多額の予算をGoogleから減らしている。この予算はAmazonに注入されるわけだが、AmazonとGoogleのふたつのプラットフォームが一緒にどのような働きをするのかということを考慮せずに行われると、ブルー・ウィール・メディア(Blue Wheel Media)のAmazon担当のセールスマネージャーであるダニエル・テジャーダ氏は言う。いまでは、より先進的なクライアントたちは、現存する検索予算ではなく、購買客マーケティングといった予算源から、広告予算を取り込もうとしている。

「Amazon検索とGoogle検索は、ブランドたちにとっては、ふたつの異なるマーケティングプログラムとなっている」と、北米ワンダーマン・トンプソン・コマース(Wunderman Thompson Commerce)のプレジデントであるフランク・コチェナッシュ氏は言う。消費と直接やり取りができるD2Cウェブサイトがないブランドにとって、Google検索はリーチと頻度を達成するためのブランドマーケティング手法だと、コチェナッシュ氏は言う。しかし、同じブランドであっても、Amazonは売上を伸ばすためのパフォーマンスマーケティングのチャンネルとなっている。しかも、その投資対効果は、ほかの売上向上のためのアクティビティと比べても効率性が高い。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)