Amazon 、検索ページにおける「動画広告」のテストを開始

成長しつつあるAmazonの広告ビジネスに、広告主たちは支出を増やしつつある。そんななか、Amazonは新しい広告プロダクトをテストしているようだ。それは検索結果に表示される動画広告だ。

限定的なベータ版テストとして運用されているこの広告について、広告業界とAmazonの間で話し合いが行われていると、ふたりの別々の情報筋から聞くことができた。ミーティングは1カ月以上前に開始されたとのことだが、Amazonは8月まで公にはこのプロダクトを発表しなかった。8月第2週、この広告プロダクトへの期待を高めるようなブログ投稿が行われた。

投稿では、このフォーマットは「ビデオ・イン・サーチ(Video in Search)」と呼ばれている。動画は90秒以下で、音が含まれていないといけないようだ。広告は検索結果の下半分以降に表示され、ユーザーを商品ページへと移動させるものか、直接Amazonストア、カスタムのページへと移動させるものとなっている。iPhoneかiPad上でAmazon検索をしているユーザーにのみ表示される予定となっている。

広告主たちの思惑

プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)といった、Amazonが抱える最大の広告主のうちいくつかは、すでにこの新しいフォーマットを試しているようだ。Amazonによると、このフォーマットは3万5000ドル(約390万円)以上の予算からのスタートとなるという。ジレット(Gillette)は、アーク5(Arc 5)剃刀の動画広告を検索結果で流していることが、米DIGIDAYによって確認されている。自宅家具ブランドであるランプス・プラス(Lamps Plus)もこのフォーマットを試していることが米DIGIDAYによってレポートされた。

Amazonメディア・グループ(Amazon Media Group)経由で、この広告は販売される。メディア・グループは彼らが自社で持っているセールスチームだ。動画広告はIMDB.com、Twitch(ツイッチ)、ファイヤーTVプラットフォーム(Fire TV Platform)、Amazon.com、プライム・ビデオ(Prime Video)のスポーツ生配信、といった場所で販売されているものの、検索とディスプレイでこのフォーマットは試験運用されているようだ。

これによって、ブランド予算ではなく、すぐに個別のプロダクトの購買を促すダイレクトレスポンス予算のためのチャンネルであるとAmazonを捉える広告主たちが出てきている。しかし、レゴ(Lego)やペルノ・リカール(Pernod Ricard)といったブランド自体を広告する広告主たちにとっても、このAmazon上の動画広告在庫は増やしたいチャンネルとなっている。というのもAmazonはいまや、消費者たちにとってのデフォルトの検索エンジンとなっているからだ。

決定的な転換期

この記事のために取材に応じてくれたふたりのエージェンシーエグゼクティブたちは、インストリームの動画プレロール広告はブランド広告としてうまく機能する一方で、Amazonが所有するサイト上でのターゲット動画広告は直接購買を促すことができると語ってくれた。検索結果における動画広告はその中間に位置することになりそうだ。

「我々のキャンペーンの結果から考えると、Amazonの購買客にとってモバイルは非常に重要であることが分かる。トラフィックの大部分はモバイルだ」と語ったのは、eコマース・エージェンシー、プレシャス・メディア(Precious Media)のデジタル部門責任者であるジャック・シリート氏だ。「たとえば、ドイツでは多くの購買客は、日中にモバイルでプロダクトを調べて閲覧し、買い物カゴに追加する。そして、夜にデスクトップなど異なるデバイスで買い物を完了する、といった具合だ」。

利益の高い動画広告が消費者たちの検索行動の大部分に導入されることになれば、Amazonの広告事業にとって決定的な転換期となる可能性がある。AmazonはAMSパフォーマンス報告においてモバイルの詳細を報告しないが、元Amazonエグゼクティブであり、検索広告プラットフォーム、ダウンストリーム(Downstream)のファウンダーであるコナー・フォーリー氏によると、クエリひとつに付き表示される広告ユニットは少ないとのことだ。Amazonユーザーがモバイルへと引き続き移行するにつれて、広告在庫を減らすことになる。そのため、この在庫に対するプレミアム料金を課金することで、ユーザーごとの収益が増える。

パフォーマンス次第

しかし、問題はこのモバイル在庫をうまく活用できてこなかったことだ。今年の上半期を例にとると、米Amazonの広告収益のうち、モバイルのみのバイイングから来ているのは20%だけだ。この情報は、スタンダード・メディア・インデックス(Standard Media Index)のマーケティングアナリストたちからのデータによる。

「検索によりプレミアムな在庫を投入することで、ブランドからの収益が増えるだろう。ブランドマーケティングとトレードマーケティングのあいだに存在するマーケットに食い込むためには、それがキーとなる」と、フォーリー氏は言う。「YouTubeやFacebookとは違って、Amazonの検索結果ページはもっともトラフィックが多いページとなっている。そのためCPMベースで売るとなると、そこに一番ユーザーのビュー数が集まることになる。顧客体験をキープしながらも、ブランド向けには強力なプロダクトを提供する場所だ」。

動画広告は、さらに広告支出を招くことになるが、どれほど増えるかはパフォーマンスによるだろう。

3万5000ドルという価格

「3万5000ドルという分水嶺では、より小規模なブランドは苦戦をするだろう。またハイクオリティの動画を制作するための経費もかさむ。しかし、競争力のある予算を持つ大きなブランドにとって動画広告は、他と差をつけるためのユニークかつ強力な方法となるだろう」と、ザ・トンブラス・グループ(The Tombras Group)のAmazonサービス部門バイスプレジデントでありディレクターのケビン・パックラー氏は言う。

米DIGIDAYは、Amazonにコメントを求めたが、記事執筆段階では返答は得られていない。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)