プライム・ビデオ・ダイレクト、著作権使用料の引き下げへ: Amazon が考えていること

Amazonが、プライム・ビデオに動画を直接アップロードするコンテンツオーナーのロイヤリティプログラムの変更を進めている。

2016年5月にローンチされたAmazonのプライム・ビデオ・ダイレクト(Prime Video Direct)では、動画クリエイターやメディア企業がプライム・ビデオ内にコンテンツを置くことができる。アップロードした動画は、プライム・ビデオのアプリ内で、Amazonの制作やライセンスによる映画やテレビ番組の横に表示されることもある。『グランド・ツアー(The Grand Tour)』のようなリアリティテレビ番組の隣に、自動車のパブリッシャーや動画クリエイターによる動画が並ぶ可能性もあるとされている。

シリーズ物の動画番組も単発タイトルも、プライム・ビデオ・ダイレクトでアップロードすると、視聴時間の総計に基づいて設定された料金によりタイトルごとにロイヤリティが支払われる。米国では2018年、設定料金が1時間あたり6~15セントだった。レートカード(標準料金表)によると、英国、ドイツ、日本など、プライム・ビデオ・ダイレクトが提供されているほかの市場についても、同じようなスライド制が採られている。

ところが、米DIGIDAYが入手した、プライム・ビデオ・ダイレクトからアカウント所有者に送られたメールによると、Amazonが4月から米国のレートカードを変更し、料金がストリーミング1時間あたり4~10セントに下がるという。つまり、レートカードの上限と下限がどちらも33%下がるということになる。

本記事の公開までにAmazonからのコメントはなかった。

新しい指標も導入

この変更の一環として、米国では支払い額の決め方に新たなスライド制が導入される。視聴時間の総計に基づく均一料金ではない、「カスタマーエンゲージメントランキング(Customer Engagement Ranking:以下、CER)」という新たな指標の導入をAmazonは進めている。この指標では、タレント、IMDbの評価、さらには興行成績などによるタイトルの人気度のほか、ユニーク視聴者数、ストリーミング時間など複数の要因に基づきタイトルを評価する。

AmazonはCERについて、「タイトルがプライム会員からどれくらい人気を集めたかを、プライム・ビデオ・ダイレクトで公開される同じ地域のほかの『プライム会員特典(SVOD)』タイトルと比較し、パーセンタイル順位で示したものです。(中略)CERは、シリーズ物はシーズン単位で、単品タイトルは個々のタイトルで計算します」と、サイトで説明している。

4月以降、CERが平均よりよければ――測定するのはAmazon――、1時間あたり最大10セントが支払われることになる。これは現在のベース料金の1時間6セントより4セント高い。一方、成績が悪くなると、1時間あたり4セントにまで下がるおそれがある。

料金変動の推移

南極を探検した83分間ドキュメンタリー映画などをプライム・ビデオで公開している映画制作者で講演者のアーロン・リンズドウ氏によると、CERは厳密な計算方法に関する情報がほとんど提供されず「ブラックボックス」化しており、プライム・ビデオ・ダイレクトから収益の予測が制限されるという。「定量化可能な収益把握の方法がなくなった」と同氏はいう。

プライム・ビデオ・ダイレクトのレートカード変更は、2018年のロイヤリティ料金の引き下げに続くものだ。プライム・ビデオ・ダイレクトは当初、視聴時間に基づき、米国では1時間あたり15セント、英国では1時間あたり6セントを支払っていた。それが2018年に、Amazonがスライド制を導入。米国は1時間あたり6~15セントになった。

出典:Amazon.com

出典:Amazon.com

4月から実施されるAmazonの新条件では、ほかに日本に1時間あたり8円の均一料金が導入される。英国、ドイツ、オーストリアについてはこれまで通りの料金になる。

プライム・ビデオ・ダイレクトでこれまでに支払ったロイヤリティの総額をAmazonは公開していない。1年目については、「数十億分間」のストリーミングがあり「数千万ドル」を払ったと、2017年7月に語っていた

未参加者も注視

Amazonのプライム・ビデオ・ダイレクトは、一部のメディア企業にとっては機会の拡大であり、なによりも動画や番組の収益強化策になる。大手ほど、たくさんのコンテンツをアップロードすることで、今後、収益をより増やせるチャンスがある。有名デジタルパブリッシャーのある幹部は、このプログラムは月に1万~4万ドルを稼ぐことが可能であり、ロイヤリティ総額は引き続き増えると語った。

Amazonのプライム・ビデオ・ダイレクトに参加していながらあまり使ったことがない動画パブリッシャーにしても、ストリーミング動画へのAmazonの関心から、やはりこのプログラムと無関係ではいられない。

ソーシャル動画のトップパブリッシャーの動画担当幹部は、「我々の場合、直ちにとりわけ重要だとか、有効だとかいうわけではない。しかし、手は付けておきたいという認識はある」と、語った。

Amazonのエコシステム

しかし、独立系の動画制作者や映画制作者など、Amazonが重要な収益源で、その収益を再投入することで映画やシリーズをさらに制作できると考えていた、そこまで大きくない動画オーナーにとって、この変更は重大だ。

「NetflixやHuluに移ればいいというものではない」とリンズドウ氏。「ある程度、見込みがある数少ないプラットフォームのひとつなのだ」と同氏は語った。

Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)