[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Amazonは2018年8月、米国とカナダでAmazonアトリビューション(Amazon Attribution)ツールのベータテストを開始した。広告主は、Amazonのウォールド・ガーデンの外に広告を出し、そうした広告掲載がサイトに戻ったときの売り上げ増に貢献するかどうかを見極めることができる。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]プラットフォームは、広告主に無料ツールを提供しながら、自分たちのためにデータを収集していることで悪名高い。Amazonも例外ではない。
Amazonは2018年8月、米国とカナダでAmazonアトリビューション(Amazon Attribution)ツールのベータテストを開始した。広告主は、イーベイ(eBay)やYouTubeなど、Amazonのウォールド・ガーデンの外に広告を出し、それを介してオーディエンスがAmazonサイトに戻ったときに、売り上げ増へ貢献するかどうかを見極めることができる。
Amazonは効果的?
米DIGIDAYが見た範囲でのAmazonアトリビューションの売り文句は、広告についての「デバイスごとのオーディエンスの単一ビュー」を広告主に提供するとなっている。ツールは、広告主がキャンペーンの真の価値を見る方法として提供され、ページビューやクリック、ユニークリーチ、販売のような指標を利用して、Amazonにトラフィックを戻すうえで広告がいかに有効かを明確に示すものだ。そうした広告のパフォーマンスは、オーディエンスセグメントに分解され、広告あたりの緻密なビューも提供する。
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デバイスごとのオーディエンスの単一ビュー
Amazonのファーストパーティデータ
Amazonのファーストパーティデータを利用すると、デバイスごとの正確な計測が可能になる
クロスデバイスアトリビューション
Amazonは、さまざまなデバイスで起こった広告やコンバージョンイベントの属性を解析する
あるeコマース会社の幹部は匿名を条件にこう話した。「このツールを使って最初の数カ月で我々が気づいた主要点は、マーケットの他プレイヤーと比較して、Amazonが持つファーストパーティの買い物客データのパワーだ。見込みのある新規クライアントのためにディスプレイキャンペーンを実施したクライアントがいて、Googleディスプレイネットワーク(Google Display Network)上での同様のキャンペーンと比較して、どれくらいうまく機能したかを見ることできた。10回中9回は、Amazonのデータの方が効果的だった」。
新規顧客の意思決定過程
購入(Purchase)
Ask:製品購入につながった広告チャンネルや戦術はどれか?
Get:購入、購入率、販売
検討(Consideration)
Ask:製品検討につながった広告チャンネルや戦術はどれか?
Get:詳細なページビュー、ページビュー率、カートに追加、カート追加率
認知度(Awareness)
Ask:何人にリーチできたか?
Get:インプレッション、クリック/CTR、ユニークリーチ
顧客の理解(Understand your Customers)
緻密なレポーティングビューによりAmazonのオーディエンスセグメントごとのパフォーマンスを解析
ROIをもたらす
ベータテストの開始以来、広告主たちはAmazonアトリビューションで学んだことを活用して価値あるセグメントを特定し、ターゲットを絞るのはもちろんのこと、Amazonのリンクをクリックしそうな読者がいるパブリッシャーに対する支出に焦点を合わせることができる。
ベータテストから学んだこと
✓キャンペーンのゴールは、具体的で、明確に定義する必要がある。
✓設定が緻密なら緻密なインサイトが得られる。
✓テストと最適化
✓早くエンゲージしてフィードバックを得る!広告主は学んだことを使って
✓条件を満たすエンゲージメント(より高いリサーチ)をもたらすターゲティング戦略またはパブリッシャーに注力する
✓Amazonのターゲティング戦略に共鳴するAmazonのセグメントを特定する
✓コンテクスチュアルパブリッシャー向けの効果やリーチを測定する
✓より包括的な販売計画(例:直販+Amazon)に基づいて、入札やクリエイティブ戦略(例:ブランディッドvsノンブランディッド)を再評価する
アトリビューションに関して、Amazonはやり直す必要など何ひとつない。GoogleやFacebookと同様、Amazonは、広告主が予算を増やしてくれるように、一定量のメディア支出に対して投資対効果(ROI)をもたらすことを示したいと考えている。これは、Amazonアトリビューションの最後のスライドのひとつで、ロードマップとして示している概略だ。
ロードマップ
メディア報道の拡大
APIアクセス
世界的拡大
マルチタッチアトリビューション
湧き上がる懸念
上述のeコマース会社の幹部は次のように語る。「このツールは、私のクライアントが行き先戦略を定義するのに役立っている。選択肢が存在する場合、買い物客は、ブランドのドットコム・サイトよりAmazonで購入するほうを好むことが多い。こうしたインサイトは以前は得られなかったので、他のチャンネルからの振り替えにせよ、著しい増加にせよ、このプラットフォームでの支出を増やすべきだとクライアントを納得させるのに役立つ」。
このツールから得られるデータによって、Amazonは、たとえば、パフォーマンスのよい広告クリエイティブの種類や、今後他社を追い抜きたいと思っているカテゴリーのなかでよく売れている製品について、気づいてしまうのではないかと心配する広告主もいる。
あるエージェンシー幹部は、「私が広告を購入しているAmazonの大手広告主2社は、このツールがAmazonに大量のデータを与えすぎることを懸念している。私のクライアントは、自社のメディア戦略やターゲティングについての貴重なデータをAmazonに与えると、その競争力がさらに強まることになるのではないかと危惧している」と話した。この人物は、クライアントとのビジネス上の契約が危険にさらされることを恐れ、匿名を条件に話をしてくれた。
「FacebookやGoogleもアトリビューションデータを持っている。だが、FacebookやGoogleの2社とAmazonとの違いは、Amazonが方向転換をすると、小売業者と競争できるという事実だ。Amazonのプライベートレーベル・ビジネスの台頭を見ればわかる」と、アドテクプラットフォームであるナニガンズ(Nanigans)のマーケティング担当バイスプレジデント、ライアン・ケリー氏は話す。
新たなリスクも
万一データ漏洩が起きた場合、誰が責任を負うのかという新たなリスクも生まれる。
あるアドバイヤーは、「私が一緒に仕事をしているブランドは、現在の情勢においてこのツールはプライバシーの懸念を引き起こしうると不安を抱き、『データ漏洩があったら誰が責任を負うのか?』と自問し続けている」という。「Amazonの幹部たちは、こうしたデータプライバシーの懸念を解決するつもりはないと言っているが、彼らがその修正に乗り出したとしても私は驚かないだろう。Amazonは過去にも、それがよりよい広告製品の確立に役立つのであれば、ビューアビリティーに関してシステムへのよりよいセーフガードを進んで導入する姿勢を示してきた」。
さまざまな懸念は、Amazonがすでに広告主に対して説明してきたスタンスが試されているなかで生まれてきた。Amazonアトリビューションのインプット情報は、ブランドの自動キャンペーンを生成するためだけに使われる。自動キャンペーンは結果的に、テスト運用という条件で、ツールを動かしているビジネスに恩恵をもたらす。サービスの利用条件にはさらに、データはすべて匿名化され、Amazonのプライバシーポリシーに沿って収集・集約され共有されると説明がある。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)