Amazonスマイルコード 、媒体社のポップアップにすり寄る

2018年10月3日から同年末までモール・オブ・アメリカ(Mall of America)に出店する、グッド・ハウスキーピング(Good Housekeeping)初のポップアップショップには、工夫が見られる。顧客はすべての販売商品の購入に、モバイルアプリを使用するのだ。

その理由は、同社のストアが販売する製品40品目は、2800平方フィートの広さを持つ店舗に実際にはひとつとして保管されていないからだ。代わりに、商品を購入したいと考えている顧客はスマートフォンを使用して、商品に添付のスマイルコード(Smile Code)という名のバーコード風の画像をスキャンできる。スキャンすると、商品情報がAmazonのモバイルアプリに読み込まれる。顧客がその商品を購入すると、Amazonが販売を完了させ、グッド・ハウスキーピングがアフィリエイト手数料を得る仕組みだ。このプロセスをサポートするインフラは、増加中のポップアップショップエコシステムに参入するためにAmazonが開発したプログラム、Amazonローカルアソシエイトプログラムによって運用される。

グッド・ハウスキーピングにとっては、複雑さを解消し、サプライチェーンマネジメントのリスクを負わなくて済むため、これ以上に喜ばしいことはない。

「リテーラーになりたいわけではない」と、グッド・ハウスキーピングの編集長、ジェーン・フランシスコ氏は言う。「当社にとっては、場所に関係なく、オーディエンスの求めに応じられる機会を得られるものだ」。

半信半疑なパブリッシャー

しかし、体験の提供や商いから得られる収益を掘り起こすことに関心のあるパブリッシャーからすると、ローカルアソシエイトプログラムは不愉快な交換条件を提示するものだ。悩ましい問題を解消する代わりに、顧客との直接的な関係を築き、のちの販売につなげられるかもしれない可能性を失うのだ。

このプログラムを利用すると、アフィリエイト手数料を得られるが、マネタイゼーションにも制限がかかる。製品のカテゴリーによっても変化するが、Amazonのローカルアソシエイトプログラムが提供する手数料は最大で10%だ。

ほかにも、スマイルコードという技術がモデルにしているQRコードの過去の実績はお粗末だとして警戒している企業もある。

「Amazonはこのプログラムを強く勧めてくる」と、Amazonとローカルアソシエイトプログラムに関して交渉したある筋のパブリッシャーは言う。「ユーザーがショッピング中にスマートフォンを取り出すことに乗り気だとはあまり思えない」。

どんどん拡大するプログラム

ローカルアソシエイトプログラムは、多数のパブリッシャーのアフィリエイト電子商取引戦略の根幹をなすアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイトプログラムから生まれたものだ。Amazonアソシエイトプログラムは、利用するパブリッシャーにもよるが、パブリッシャーのアフィリエイト電子商取引で得る収益の最大で80%を生み出す。

このローカルアソシエイトプログラムは、デジタルマーケティングの要素も提供する。このプログラムの利用者は、Amazonショップと呼ばれるブランド向けのオンラインストアをAmazonのWebサイト上に持つことができる。グッド・ハウスキーピングから、NBCのニューヨーク市の系列会社であるWNBCで放映されているテレビプログラムの提供企業であるオープンハウスTV(Open House TV)に至るまで、さまざまなパブリッシャーがローカルアソシエイトプログラムに加入している。

しかし、このオンラインストアはアソシエイトプログラムとしては二次的に考えられたプログラムであって、Amazonが、ブランドリテーラーパブリッシャーにとって大きな成長領域であるポップアップストアにおいて役割を果たせるようにと意図されたものだ。昨年、ドミノ(Domino)やポップシュガー(PopSugar)をはじめとするパブリッシャーは、ブランド所有のポップアップショップにおける製品の販売が成功するところを見てきた。その大半が広告主の体験提供向けの予算からの投資を受けている。

「コンバージョンはうなぎのぼり」

「このプログラムは、IRL(※ネットスラングで「現実世界」、in real lifeの略)体験をマネタイズするうえで現在、Amazonにとって重要な取り組みだ」と、今夏にローカルアソシエイトプログラムに加入したクリーク・ブランズ(Clique Brands)でインフルエンサーを利用したマーケティングやコマースを担当するシニアバイスプレジデントであるコートニー・ワートマン氏は言う。

ワートマン氏によると、クリークの系列会社の1社であるバーディ(Byrdie)は、7月にバーディビューティラボ(Byrdie Beauty Lab)でスマイルコードを活用し、良い感触を得たということだ。「コンバージョンはうなぎのぼりとなった」と、ワートマン氏は言ったが、具体的な数字に触れることは控えた。

ワートマン氏は、バーディあるいは加入ブランドが自社に適した方法で、Amazonショップにおいて宣伝ができたことなど、いくつかの要素がこのプログラムを気に入ったほかの理由だと述べている。グッド・ハウスキーピングもこの特徴を活用している。実店舗で40品目を展開しているが、同社のデジタルショップは160以上の品目を扱っている。

顧客の信頼はどこにある?

この体験は、決まったルールに従っているというよりは、例外的なものに近いといえる。Amazonは2017年11月にスマイルコードの利用を開始して以来、パブリッシャーやブランドと協働し、雑誌や広告掲示板、イベントなどでこれをいたるところに広めようとしてきた。その結果は、いまのところ、その努力に見合うものではない。「誰もスキャンしていない」と、あるキャンペーンでスマイルコードを利用したある筋の企業は言った。

QRコードはひとつの技術として成長が見込めると見ている業界のアナリストもいる。2018年初頭に、ジュニパーリサーチ(Juniper Research)は、2017年は13億回利用されたQRコードが、2022年までには53億回利用されると予想する調査を発表した。

QRコードは、急速に変化するリテール・ランドスケープにおいて、まだ生まれたばかりの技術だが、多くの人に馴染みのある企業と提携するのが賢明だと見ている観測筋もある。「グッド・ハウスキーピングがスマイルコードを広めても、グッド・ハウスキーピングの利益にしかつながらない」と、リテールポップアップエージェンシー、ライオンズエスクグループ(Lion’s esque Group)の創業者であるメリッサ・ゴンサレス氏は言う。「大勢の人がAmazonのアプリを使用している。その人たちはAmazonを信用している」。

Max Willens(原文 / 訳:Conyac