ブランド指標の強化に務める、 Amazon の思惑:「ニュー・トゥ・ブランド」の意味

Amazonはただプロダクトを販売するだけでなく、マーケターたちが新規顧客を獲得する場でもあると証明しようとしている。

Amazonが1月18日に導入した新しいメトリックス(指標)では、新規顧客を獲得するという観点で、ブランドの広告がどれほど効果的かを測っている。「ニュー・トゥ・ブランド(new-to-brand)」メトリックスは、Amazonでそのブランドの商品を購入した人のなかに、過去12カ月以内にAmazonでそのブランドの商品を何も購入しなかった人がどれだけ含まれているのかを示す。また、新規顧客を獲得するコストも示すという。

新規顧客の獲得に、Amazonがどれほど効果的かを示すことで広告プラットフォームとしてのブランド認知を広めることができるだろう。特にいまは、ブランド構築ツールとして検索やソーシャル広告をP&Gのような大手ブランド広告主たちが求めている。当初は、14日間のアトリビューション期間に広告がどれだけ売上につながったかトラッキングができるという理由から広告主たちは、Amazonに参加していた。しかし、いまでは短期の広告支出に対する収益(ROAS)以上について学ぶことに興味を持っている。Amazonを使うことでeコマースビジネスをどこまで伸ばすことができるか見極めたいのだと、アイプロスペクト(iProspect)の有料プラットフォーム・マーチャンダイジング部門ナショナル・ディレクターであるデーヴィッド・ハッチンソン氏は言う。

「もしもAmazonが真にリテールにとっての検索エンジンであるならば、上位ファネルのメトリックスを知りたい。そしてこれはAmazonによる回答という点では素晴らしいスタート地点だ。『セールスは14日間を過ぎても発生する、そして我々はただのポイント・オブ・セールス(POS)ではなく、ブランドについてユーザーたちに情報を与える場であり、人々がブランドを認知する場である』という理解をAmazonが示しているのだ」と、ハッチンソン氏は続ける。

ブランド認知の原動力

ブランド認知を高める原動力として、Amazonの効果を証明できれば、大手ブランド広告主たちの信頼を集められるだけではない。Amazon上でのプロダクト販売を避けているDTC(Direct to Consumer:ネット直販)ブランドのあいだでも魅力を高めることができるだろう。DTCブランドはいま、顧客ベースを拡大するためにテレビのようなブランド広告チャンネルを探っている

Amazonにフォーカスを絞った広告コンサルタントのダニエル・テジャーダ氏によると、ペット用品ブランドのバークボックス(BarkBox)は、11月1日以降のAmazonにおける売上のうち86%は、過去1年バークボックス商品を購入していない新規顧客であることが、ニュー・トゥ・ブランドのメトリックスを通して分かったという。彼の顧客にはクウィバー(Quiverr)やバークボックスが含まれる。一方でバークボックスの広報担当は、テジャーダ氏が語る数字に関して「我々はこの数字に疑問を持っている。これほど新しいデータに関して何か結論を出すのは時期尚早だ」と、コメントした。バークボックスがAmazonでプロダクトを販売しはじめてからまだ1年も経っていないため、この統計も偏っている可能性はあると、テジャーダ氏も付け加える。「彼らは大きなDTCブランドだが、Amazonでローンチしたのは最近だ。そのためグロースは非常に重要な要素となっている。新規顧客の割合といったメトリックスは、彼らにとって非常に重要だ」と、彼は言う。

今回のニュー・トゥ・ブランドのメトリックスの結果を見て、テジャーダ氏はバークボックスの担当者に1月21日にメールを送っている。Amazonのスポンサード・ブランド広告での支出を増やすほうが良いのでは、というアドバイスがその内容だった。広告主とエージェンシー向けのプレゼンテーションにおいて、Amazonはこの広告をブランド認知度を高めるためのプロダクトであると宣伝していた、と彼は言う。

「非常に大きなこと」

広告主たちは長い間、Amazonが広告主に与えるデータについて不満をあげていたが、この新しいメトリックスはそれに応える形にもなっている。ニュー・トゥ・ブランドは多くのブランドにとって、便利なメトリックスとなるだろう。

ワンダーマン・コマース(Wunderman Commerce)のマーケットプレイス・イグニション(Marketplace Ignition)CEOであるエリック・ヘラー氏も「非常に大きなことだと思う」と述べる。以前であれば、Amazon広告が新規顧客獲得においてどれほど効果的か、広告主が知るためには、セールスの配送住所を参照し、それがブランドのデータベース上に存在していなければ新規顧客と見なす、といった回り道を通る必要があった、と彼は言う。

しかし、ハッチンソン氏が「素晴らしいスタート地点」と述べていることからも分かるように、Amazonによる今回のニュー・トゥ・ブランドメトリックスには制限がある。方向としては正しいものの、まだまだ「小さな一歩」でしかないと、彼は言う。

まだまだ制限は多い

Amazon上での購入しかトラッキングできないという明らかな制限に加えて、このメトリックスはAmazon検索結果の上と下に表示されるスポンサード・ブランド広告、そしてAmazon DSP経由で購入されたプログラマティック動画広告に関してのみ利用可能となっている。Amazonの検索結果のなかに表示される、特定のプロダクトをプロモーションするスポンサードプロダクト広告に関しては、このメトリックスは利用できない。だが、それこそがもっとも人気の広告プロダクトであると、専門家たちは考えている。

スポンサード・ブランド広告は、スポンサード・プロダクト広告よりも高い傾向にあるため、比較するとブランドも購入を控える傾向にある。Amazon上で「プロテイン・バー」を検索しているユーザーたちにリーチしようとしている広告主であれば、スポンサード・プロダクト広告はクリックごとに4ドルや5ドルがコストとなるかもしれないが、スポンサード・ブランド広告の場合は、それが11ドルほどになる、といった具合だと、テジャーダ氏は言う。しかし今回、スポンサード・ブランドキャンペーンにかかるコストを新規顧客獲得の効率を考慮して検討できるようになったおかげで、広告主にとって広告獲得ツールとしての投資だと説得しやすくなったと言える。過去1年、ブランドから購入をしていなかった顧客がAmazon上でどれくらい獲得できるかを確認しながら、広告主はスポンサード・ブランドキャンペーンへの投資を調整することができる。

もうひとつの制限は、新規顧客の定義が「過去12カ月にこのブランドから購入しなかった顧客」となっている点だ。これは価格帯が低く、注文サイクルが短いブランドにとっては問題はないだろう。しかしホームグッズや電化製品といった分野においては、問題をかかえている。高い価格帯のプロダクトは、それほど頻繁に購入する必要がないからだ。

さらに、獲得した新規顧客をリターゲットしたり、類似の性質を見せるオーディエンスをターゲティングするツールを発表してもいない。こういった機能があれば、平均的なユーザーよりも顧客になる可能性が高いユーザーを狙うことができるだろう。

競合ブランド対策に

もちろん、だからと言って、この新しいメトリックスを活用して広告運用の判断に活かせない、というわけではない。ライバルブランドが抱える顧客を狙う取り組みに役立てることができるだろうと、Amazon広告に特化するエージェンシーのブルー・ウィール・メディア(Blue Wheel Media)でCEOを務めるトレヴァー・ジョージ氏は言う。

たとえば、オムツメーカーはライバルのブランドに関連したキーワードをターゲットとして設定することで、ライバルブランドが表示される検索結果のトップに広告を表示させることができる。そのうえで新規顧客の獲得具合をチェックすれば、ライバルから顧客を奪えているかが確認できるだろう。顧客を他ブランドから獲得することが可能であるとAmazonが証明できれば、広告主が投下する予算も大きくなるはずだ。

「ブランドにおけるeコマースチームたちの理解を深めることができ、またAmazonの効果で何が起きているか、ということをより説得力を持って語ることができるようになる」と、ヘラー氏は言う。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)